上野には以前「平兵衛(へいべえ)」というとんかつ店があり、「地球環境保護と飢餓救済」をうたう小冊子を作ったり、汚い店としてテレビに出たり、公式ホームページで客や他のとんかつ屋を思うさま罵倒するなどして一部で有名でしたが、数年前に店主が後継者を決めぬまま亡くなり閉店したといわれています。
この店の提唱していた科学的とんかつを結局一度も食べるチャンスに恵まれないままでずっと気になっていたのですが、真空調理器(低温調理器)Anova Precision Cookerを入手したので似たようなものを作ろうという記事です。
なお科学の話は特にありません。
予備知識
Googleでブログやニュースサイトを検索すると以下のような話がなんとなく出てきます。
- 揚げているあいだ泡は出ないらしい
- 30分くらい揚げているらしい
- 油に手を突っ込める程度の温度らしい
- 衣が白いらしい
- 肉が水分を失わず柔らかいらしい
推測とレシピ決定
レシピとは要するに温度と加熱時間のことです。
- 温度
- 衣が白い、手を突っ込んでも火傷しない
- →60℃くらい? それって衣は固まるのか? 油吸ってフニャフニャにならないか?
- →こわいから最初だけ普通に揚げよう
- 衣が白い、手を突っ込んでも火傷しない
- 時間
- 肉の分水作用の発生しない温度(推測)を長時間維持して芯まで火を通すのは理に適っている
- →1時間もやれば芯まで加熱されるだろう
- 肉の分水作用の発生しない温度(推測)を長時間維持して芯まで火を通すのは理に適っている
上記のような推測があり、170℃でちょっと揚げて、60℃でダラダラ1時間やることにしました。
実践
肉を買いました。余った肉は後日チャーシューになります
170℃で片面30秒くらいずつ揚げます。芯温は記録し忘れたけど高くなかったはず
引き上げ、冷ました油と一緒に袋詰めします。袋ごと水に沈めるのは空気を抜くため
(このあたりで「これコンフィなのでは‥‥?」という疑問が浮上し始める)
Anova Precision Cookerは水の温度を維持する機械です。60℃設定で1時間湯煎しており、缶は袋の固定をねらっています
1時間経ちました
割と普通にとんかつの味がします
写真では赤く見えるかもしれませんが、肉眼では芯までごく薄いピンク色でした。
所感
「肉の水分が失われず柔らかい」という初期の目標は達成したような気分になりました。始めに1回揚げたおかげか、思っていたよりは衣もサクサクしています。
ただ油切れが本当に最低で時々サラダ油の塊を食っている錯覚を得るという欠点があり、もし次回とんかつをやる場合は以下の施策を考えています。
- 油切れを改善するには?
- 本家の写真の通りパン粉を細かくする
- 最後に一瞬焼くか揚げるかして表面の水分を飛ばす(平兵衛メソッドから遠ざかる)
- そもそも衣を付ける前に低温調理を行い、最後に短時間揚げる(平兵衛メソッドではなくなる)
本家はむしろ加熱の中盤に温度を上げてまた下げるらしいのですが、これはちょっとよくわからないですね‥‥。