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マンガ図書館Zですぐ読める漫画5作品の紹介

マンガ図書館Zという無料漫画サイトがありまして。紙での重版予定のない作品の権利を調整して基本無料で電子版を公開してくれているので、それに便乗しておすすめの漫画の紹介や感想を書きます。

貼ってあるリンクはマンガ図書館ZアフィリエイトID込みのKindleストアです。マンガ図書館Zでは前述のようにブラウザで無料(PDFは1巻あたり300円)で読めるほか、月額300円の会員になることで広告がなくなったり、1ヶ月に1冊PDF版がサービスされたりなど特典がつきます。

人間噂八百(足立淳) 全1巻

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マンガ図書館Z | 人間噂八百

山手線沿線の駅前を中心に無料配布という謎のビジネスモデルで運用され流星のごとく消えていったコミックガンボ連載作品。全ページにおいて芸能人の重箱の隅をつつくような逸話と噂話と感想が連射されるのですが、デーモン小暮閣下とアイドルに関する知見と思い入れはわずかに他を上回るような。

HAIKARA事件帖(黒沢哲哉里見桂) 全5巻

マンガ図書館Z | HAIKARA事件帖無くなりましたね。Kindle版が集英社から出てるのに配信されてるからおかしいとは思っていたけど。

マリー・アントワネットの料理人』にドハマリして同じ作者の漫画を求めていたときに検索に引っ掛かった作品。明治末期を舞台に青年・一条寺開が科学捜査を駆使して事件を解決します。

「未来に発明されるはずのものについて先見の明のある主人公が先取りしてそれを製作し大活躍」というコンセプトはまさにマリー・アントワネットの料理人なのでは‥‥? と思っていたら、原作者(『マリー』とは無関係)の後書きで「原案を提示したのは里見先生(『マリー』の作画)のほう」と言われていて衝撃を受けました。本当にプロトタイプ国が狭うござるだった。

クレジットだけでは分からない関係といいますか、作画の側からはっきりと話が提示されることもあるんですね。

轟世剣ダイ・ソード(長谷川裕一) 全4巻

マンガ図書館Z | 轟世剣ダイ・ソード

長谷川先生の漫画といえば、戦いに巻き込まれた少年が悩みながらもロボットに乗って成長し「い・ま・だーーっ」などの絶叫をして女の子を助ける少年マンガ的な話が割と多く、本作もそのくちなんですが、ダイ・ソードは単行本全7巻(※キャプテンコミックス刊行時)の中に、契約によって7度召喚されるという意志を持つ巨大ロボット「ダイソード」と主人公「百地王太」との相棒モノの要素が強く織り込まれていて、ボーイミーツガールというよりボーイミーツロボット感があります(長谷川作品だと初期の『鋼鉄の狩人』に近い)。

中学生とおっさんくさい巨大知性体は友情を育みます。サイバーフォーミュラで言うと風見ハヤトとアスラーダ。ニンジャスレイヤーで言えばフジキド氏とナラク(ちょっと違うか)。最初はつっけんどんだったダイソードさんが王太の不屈のたたかいを見て力を貸してくれるのを見たとき「あれっ、この漫画ダイソードさんが一番かわいいのでは‥‥?」と気付いてしまうのでした。

BREAK-AGE馬頭ちーめい) 全10巻

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マンガ図書館Z | BREAK-AGE

PCソフトによってビス1本からでも自作できるほど精緻なカスタマイズ性を備えたアーケード向け対戦型ロボットゲーム「デンジャープラネット」。そのスペシャルAランクプレイヤーで高専生の二村桐生が、自分を上回る凄腕の女子高生・高原彩理との出会いをきっかけにゲームの根幹に関わる事件に巻き込まれるが、巻き込まれてない時やオフの日はラブコメとかしてる。

90年代からみた「実現しそうな00年代」を描いたという意味ではゲーム漫画であると同時にSFであるかもしれません。こうなるだろう、こうあってほしいという未来予測や希望あるいは「ひねくれ」から繰り出される作中描写とひるがえって現実との差分を見ると不思議な気持ちになってきます。具体的には店舗間リンクがISDNと明言されてたり、キャプテンシステムが出てきたり、不在中のメールを読み上げてくれる小型ロボットが居たりなど。

本作に登場するデンジャープラネットは最早「モデリングソフト別売りの物理シム」といってよいゲームなのでカスタムを突き詰めるには敷居が辛そうですが、こうしたある種のサンドボックスゲーム(恣意的に定義を拡げる)があったときに作中のような「初見の難しさを既製機体キットの販売によって緩和し、大会上位のプレイヤーはメーカーがスカウト。トッププレイヤーの作った出来の良い機体はメーカーが権利を買ってキット化する」というエコシステムが成立しうるのか、ちょっと興味があります。この商売に近いのは戦場の絆ボーダーブレイクのような現代アーケードゲームよりも、プラモやフィギュアであるとかPCゲームのMODのような業界かもしれません。

交通事故鑑定人 環輪一郎(梶研吾樹崎聖)全18巻

マンガ図書館Z | 交通事故鑑定人 環倫一郎

交通事故を検証し真実を明らかにすることを生業とする男が、時にもののわからぬ警察と戦い、時には犯罪者とも直接対決する話。

短編の間に長編が何度か挟み込まれ、その度に環氏の心と状況に大きなうねりを作ってゆくところが長期連載らしくていいと思います。うねった結果初期のままでいられなくなった環氏は、一見タイトルと全く違うことを始めてしまいますが、どの章も最後にはやはり交通事故鑑定人にかえってくるのです。

THE STAR(島崎譲、原案協力藤本ひとみ)全24巻

Kindle版がないのでマーケットプレイスを。

マンガ図書館Z | THE STAR

(以下はネタバレを多く含むような気がします)

才能を持て余し何事にも熱中できずにいた高校生の長瀬優也は、幼なじみが勝手に応募した映画の主演オーディションに自分の道を見つけ、ライバルとの壮絶な戦いのなか役者デビューを飾る。歌手の中原秋奈との出会いと交際を経験しながら長瀬は「宮本武蔵」「バイオレンス刑事(コップ)」など様々な作品で主演を務めあげ「世界の長瀬優也」へと成長してゆく‥‥というあらすじの話です。

一部で現代に伝わる「真田広之が鎖鎌をにぎった!!」の元ネタは4巻174頁にあります。マンガ図書館ZPermalinkだって自由自在だ。

個人的には本作のことを「格闘演劇漫画」と呼んでいて、これはしばしば「戦いに勝てば後からでも主役になれる」というほとんど香港映画のような方式によって撮影開始後どころか生ドラマの本番中にまで主役の奪い合いが発生し、それらがしばしば暴力で決着することによります。THE STARは格闘演劇漫画、これは全部本当のことなのです。

この「勝てば主役」方式はかなり早期に提示され、少年誌的要請とも思えるアクション路線と複合しながら「宮本武蔵」編から「飛竜の拳」編(3巻終盤から9巻まで)までに心眼や波動拳など数々の必殺技を編み出すに至り、本作はバトル漫画として完成をみます。およそ同時期、先行して「役者のアクションは喧嘩の技ではない」とジャッキーが教えてくれる(3巻)のですが、THE STARの物語はそれを無視するかのように、本物の中国一の拳法家と本当に戦って勝つドラマを求める世界のクロサワ監督の強い要請(7巻)によって長瀬を拳法家より強いアクションスターの座に押し上げてしまうのでした。

長瀬が本物の拳法家を倒しハリウッド級アクションスターとなって間もなく、新ライバルのトム・クリスによる「ここにはスタントマンしかいないじゃない」との指摘で(9巻)ちゃぶ台をひっくり返されて以降は本作にも演技力勝負のルールがときおり復活し、以後の長瀬は卓越した暴力もしくは演技力、あるいは高潔かつ柔和な人柄、その他およそ全方向にほとばしる才能を使い分けつつスターダムを駆け上がります(いや、暴力についてはライバル役者がそういう方向に走るから長瀬が全力で迎撃するのがパターンですが‥‥)。

本作で描かれる長瀬のたたかいにおいて演技力と暴力は話によって絡んでは離れを繰り返し、「長瀬が主役争いに暴力で勝つ回」「演じる作品の展開上どうしても過剰な暴力が必要な回」「役と関係なく暴力を振るったかと思いきや迫真の演技だった回」「暴力を振るうとスキャンダル等のリスクはあるが人助けのためならチンピラなど躊躇せず殴ってしまう回」などさまざまな関係を見せたのち、終盤にさしかかる頃の「暁」編(20巻~21巻)でついには合一し新たなかたちを生み出します。

格闘演劇漫画が少年マガジンでの20巻をかけて作り上げた境地は、ただの暴力でもただの演技でもありませんでした。数々の障害を乗り越えてきた長瀬ほどの男をもってしても命を賭けねばならぬギリギリの大道芸(パフォーマンス)に、我われはひととき夢を見、酔いしれることになるのです。

以上です

余談ですが、目次やカバー折り返しなど編集者に比重のある仕事が収録されたりされなかったりするのは過渡期の電子版らしさの趣がありますね。便利か不便かで言えばまあ不便なんですが‥‥。