料理の世界には真空調理法(フランス語: Sous-Vide)または低温調理法と呼ばれる調理があり、「鉄鍋のジャン!」にも高価な真空調理器が「科学の目」「科学の火」として登場し秋山醤にボロ負けしています。
低温調理法はたんぱく質の凝固温度63℃未満または分水作用の起こらない68℃未満を維持することで柔らかい肉を作れる調理法ですが、長時間のシビアな加熱を要求される面倒くささがあります。ターゲット温度を上回ると肉が固くなり、下回ると衛生的に危険になるわけです。
時間的にも空間的にも勾配をつけず均一に加熱できるのが望ましく、しかしそれを両立できる調理器具は意外とそんなにありません‥‥ということで、とんかつとチャーシューの時にちょっと出てきたAnova Precision Cookerの話を今回します。今は日本への送料込み2万円~4万円くらいで買えます。
Anovaを買うまで
個人で簡単にできる真空低温調理とは要するに「ジップロックに入れて湯せん」になるわけですが、これをやっていくために下のような戦いがありました。
方法 | 容量 | 温度管理機能 | 備考 |
---|---|---|---|
炊飯器 | まあまあ | ダメ | 低温維持モードでも高温すぎる(機種によると思う)。あと調理中に米を炊けない |
ヨーグルティア | ダメ | よい | 肉塊を沈めるには小さすぎる。容積と熱源の小ささから、危険な温度帯(20~50度)に長時間入るおそれがある |
鍋とコンロ | よい | ダメ | ほっとくと冷めるし底だけ熱くなる温度勾配がある。あと徹夜で温度管理してたらキッチンの床で気絶してたことがある |
このほかスロークッカーやIH調理器、真空鍋などを考えたこともありますが、容量が小さいか、同じ温度を維持できないか、容器内に熱の勾配が生まれるか、温度設定が大雑把か、いずれかに引っかかる予感があり調達していません。
Anovaとは
ようするに水をスクリューでかき混ぜつつ温度を調節してくれるしろものです。
棒
対応容量は公称19リットル(5ガロン)、設定温度と各所の温度差は0.5度以内に収まるという好条件です。
使ってみてどうか
容器:
19リットルの鍋というのはちょっとしたものになってしまうので、ニトリで米びつを買いました(1200円)。べつに米びつでなくても100度程度までの液体を入れられれば衣装ケースでもなんでもいいと思います。
密閉袋はジップロックフリーザーバッグ一択にしています。ハナマサやIKEAには安い密閉袋もあるにはあるのですが、破れたり裂けたりして内容物が漏れ出してろくなことにならない‥‥。
電源:
コンピュータによくある北米仕様120Vの三叉プラグで、変換コネクタがあれば日本の100Vでも動きます。
電圧の差が気になる人は800Wに耐える昇圧トランスを調達することもあるようです。
温度調節:
温度計は0.1℃単位で補正値を調整できるので、初回使用時は温度計を桶に突っ込んで校正します。
水の予熱にはなるべく給湯器を使うといいです。10リットル程度の水を摂氏25度から60度に上げるのでも45分くらい掛かって不経済なので。
ワットチェッカーによると全力運転で550W、設定温度付近になると150W~350Wを行き来するくらいの消費電力になります。まあこの辺は気温や設定温度など条件によって変わっていくでしょう*1。
その他雑感
- 楽。ガスとか使わないので仕掛けたまま寝てもいいんじゃないかという感じです*2。チャーシューの時は60度設定で24時間放置とかしてました。
- 小型のモーターが回るので小型のモーターなりの音がします(雑)。一方タイムアウトやエラーの時に鳴るブザーはうるさい。
- 袋が破れさえしなければ、ほぼ真水を温めるだけの機械なので特殊調理器具にありがちな洗い物の面倒くささはあまりないです。
- 長時間やってると水が蒸発してゆき、水位が下がると自動的に止まるので、長時間行うときは容器にラップでフタをするのも有りです。
おわり
遠隔監視と操作ができるという方向になぜか2社が舵を切った結果今世代のAnovaとNomikuは両方ともWi-Fiを積んでいるというわけのわかんなさなので、買った人にはレビューしてほしいです。