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不思議の謎を解かねばならぬ

UPQとEngadget日本版のこと

日々のニュースは読み流すかtwitterに感想を書いてしまうので140字を超える文として何を書くかというと文句が多く、そんなの連続で書くとblogの雰囲気が澱んでいくのでやるべからざるものですが、ここ数年は年の瀬が近づいた頃にblogを書く習慣をつけようとしているので少しポエムをやります。


ひそむ不利益を事前に察知できない人に不利益を押し付けるビジネスというのは割と横行していて、つまり詐欺か、詐欺に接近した商売ですね。そして、この不利益を隠してメッキで飾り立てて喧伝するようなメディアがあれば、詐欺の片棒を担いだと後ろ指をさされることもあり得ます。

UPQが故意にそれをやったという証拠はないし、Engadget日本版がそうだとも言いませんが、その方向を向きつつあったのが今年までのUPQとEngadget日本版の関係かも知れないとは思っています。


あらすじとしては、UPQは先の4月に自社販売の120Hz駆動4Kディスプレイが実は60Hz駆動だったことを公表、そのうえ購入者への補償をAmazonギフト券2000円で済まそうとしており、その逃げ切りは早くから成功していたような雰囲気です*1。卸売り先のDMMでは返品・返金対応をまともにこなしていて対応に差が出ているのが火に油を注ぎました。

ここに成り立ちからUPQと関係の深いEngadget日本版のシニアエディター氏による渾身の「今回は失敗したけどさ!この悔しさをバネにして、次のゲーム絶対にリベンジしてやろうぜ!」みたいな記事が投下され、私が購入者だったら本気で怒っていたと思いますが、Engadget日本版というよりそこのシニアエディター氏個人が何に注目し、誰に寄り添った内容なのかは分かりやすかったですね。あとはてなブックマークでめっちゃ叩かれて編集長のはてブ嫌いが加速しました*2

その後はUPQが半年前に燃やしたA01Xのバッテリーを回収し始めたかどで、くだんのシニアエディター氏の記事がまた同様の姿勢だったので炎上を繰り返したりしましたが、そっくり同じ話を2回書いても仕方ないのでそこは今回重点に置きません。


要するに今回書くのはそのシニアエディター氏の悪口ですが、氏が何に注目し、何に寄り添って発信してきたか過去記事全部掘り返して示すとかはめんどくさいのでしません。UPQがらみは全部読んだつもりですけれど、Engadget電子工作部出身者の起こそうとしているイノベーションを本気で応援する気概は感じました。

www.youtube.com

その中からひとつだけ。A01の技適が問題とされた時の動画はジャンプカットが多くリスニングが難しいわりに冗長なせいか全ての事件においてそれほど注目されなかったように思いますが、これを社長に言わせて通したところに一貫した態度が見て取れるのではないでしょうか。一見の価値があります。

上記動画のコメント返しも良い。

中澤さんメーカー携帯屋さんなので実績ありますよ。突破力のある優秀なプロマネだと思ってます。他のメディアは知りませんが、エンガジェットはそもそも中澤さんをモノづくりの現場に再び引き込んでしまった張本人なので、 いろいろ出てもらってます。

何ごとも最初は失敗するものですから、まぁ登場する製品で判断していくしかないっすなぁ

すでに総務省からも許可が出た上で販売を再開しており、UPQは行政指導も受けないようです。これが全てを物語っていると私は思います。

大きな会社も小さな会社もどんどんチャレンジしていける世の中だと素敵だなぁと思いました。

ここからスタンスを変えることなく1年半続くと良くも悪くもああなるわけで、チャレンジできる世の中はいいが物事には限度があると思う。


Engadget日本版がUPQの成り立ちから関係の深いメディアであり、それはシニアエディター氏も記事でたびたび表明されてきたことですから、一定の関係と事情のある相手を悪し様に書くことができない立場、したくない心情というものがメディアには存在する、それは仕方のないことだと理解はします。

仕方ないにしても、です、消費者だって時と場合によって「賢い消費者」「賢くない消費者」どちらにも成り得るわけですが、そのさい指針となってほしいメディアが関係と事情によって使い物にならなくなるのを見るのは大変つらいですね。多くの客は企業とメディアの腹芸に興味がありません。おつきあいから紡ぎ出されるレトリックを見破る能力なんてものを伸ばさなければ「賢い消費者」になれないのだとしたら、くだらない。はした金で優良誤認に泣き寝入りするのが「賢い消費者」の理想的な姿だとしたら、くだらない*3

確かに例の記事は事件の疑問点を説明しました。タイトルや文体はともかく内容として情報量はあります。返品されても置き場がない、怒られるほどたくさん売っていない、消費者庁に確認したけど問題は無い、という認識を早期にまとめたことは機関誌の仕事としては有益だと思います(UPQによってUPQのサイトで発表されるべきでは? とも思うが)。しかし過去UPQが引き起こした件や企業の体質にはほぼ言及せず、補償まわりも「結局、購入者がどう感じるか? かなぁ」「釈然としないユーザーもいるんじゃないか」とユーザーの感情だけに矮小化する内容と感じました*4

「記名記事で関係が深いことを明言しているだけマシだろう」や「媒体やライターとはそのようなものだ」という見方はあるでしょうが、それは諦観ではないかと思います。

私を含め、ときおり「賢くない消費者」になってしまいうる多く人のためにこそ消費者向けメディアはあってほしいのです。「分かっている人は上手に避けるし、分かっていない人は分からないまま気付かず満足するか、後で分かって泣き寝入りする」というラインの記事を許してしまう媒体は、分かっていない人に向けて「商品にひそむ不利益」を押し付けてゆける餌場です。分かりやすいフリをして忖度忖度で肝心なことをまるで書いていないような記事に[PR]すら付けられないような真似が、もしも万が一あるのだとしたらそれは悪質ではないでしょうか*5

「応援する」というのが「情弱の集まる餌場を作ってやる」の意味でないことを祈るばかりです。


というようなことを半年くらい前にぼんやり考えていました。えらそうで一方的な物言いですが、大衆向けメディアが大衆のためにあるという建前は信じさせてほしくあります。

*1:一部のユーザーは販売店経由での交渉によって全額返金を勝ち取った例もあるようです。未確認。

*2:UPQの件が尾を引いたのか数ヶ月後に「記事からはてなブックマークボタン外すぞ」と突然シャドーボクシングを始めた編集長が実際にはてブシェアボタンを外した件については、品のない記事に品のないコメントが付くのは当たり前では? 紙面の責任者が客の品格を罵倒し始めるのは本当に品が無いし馬鹿げていると思う。

*3:「賢い消費者」像の理想としては情報の取捨選択はきちんとするものだとは思いますし、メディアがみんな暮らしの手帖みたいになっても困るので、私自身はレトリックを見破るくらいのことは目指していきたいですが、一方で騙す側と騙される側があったら騙す側が悪いという建前は言っていきたいので相互に気を付けようよ、となる。

*4:記事を読むたび思うことのひとつに、「120Hz駆動ではないことを指摘したユーザーは居なかった」「よって、ほとんどのユーザーは60Hz駆動でも実害はない」「つまり120Hz駆動はロマンであり、実害を被ったのではなく『夢を破壊された』だけだ」という三段論法が使われてはいないか、優良誤認の程度を軽く見せようとしていないか? というものがあります。矮小化の向きを感じる理由の一端ですね。

*5:同じEngadget日本版によるUPQの記事でもバッテリー問題の際に書かれた石野純也氏の記事はメディアの役目まで言及していて真摯でした。