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ヴェルテ(ウェルテ)のような悪質な通販業者には全額返金を要求できる(舶来ガジェット、ゲームガジェットも)

物をいつまでも送ってこない業者に対するクレームの入れかたの話をします。

注意事項

注意: 通販でトラブルに遭っている場合、まずはお近くの消費生活センター、警察署、法律事務所などに相談することを強く推奨します。本記事で紹介する法律は執筆時点で実在のものですが、その内容・解釈・運用に関して筆者は一切の素人であり、記事の正確性・有効性は保証できません。あくまで想定しうる一例であり、記事の内容を実行したことで万一何らかの損害が発生したとしても当方では責任を負うことはできません。

まえがき

当blogでは毎年のように折に触れて松川政裕という人の経営する悪質な通販サイトの話をしており、このかたは全額前金で受けた注文をバックレたり数年後に別機種を送り付けたりするという、控えめに言って異常に性能の低い輸入業のウェブサイトをしかも複数運営することで知られています。

eps-r.hatenablog.com

eps-r.hatenablog.com

「ヴェルテ(追記:2022年にウェルテに改名)」「舶来ガジェット」「ゲームガジェット」などの名で知られるその辺りの業者のことは何かあるたびにblogの記事を増やしてきましたが、商品が来ない時に実際どうすればいいかについては当事者でない引け目もあってなるべく避けてきました。

しかしtwitter過去記事のコメント欄などで納品や全額返金に成功している方々からの情報提供をいただき、注意喚起だけでなく対処法を置いておくのもいいかと思ったので、

「催促には警察と消費生活センターを頼るべし」という裏マニュアルのある通販サイトをそれと知って使いたがる人は居ないし、同一人物の建てたサイトも然りです。

危険な自称輸入代行業者「ゲームガジェット」と、幾つかの変名のこと - eps_r

この裏マニュアルを実際に書いてみよう、というのが今回の話です。当局は出てこないが……。

考えかた

筆者は当事者でも法律家でもないので、全額返金を要求できる根拠、つまり約款が法律に優先しない根拠については軽く調べていきます。

消費者契約法: 不当な約款、異常な広告は排除される

ヴェルテ、舶来ガジェット、ゲームガジェット等の松川氏の手になるウェブサイト(以下ヴェルテ)では、特定商取引法表記によって「キャンセルには40%の手数料を取る」「履行遅滞を無限に許容させる」など執拗に業者側有利な内容での契約を強いてきますが、これらの約款は消費者契約法における無効条項になりそうです。

具体的に見ていきましょう。消費者庁サイトで解説されている消費者契約法は、以下の事柄について無効となる旨を規定しています。

まずは不当な契約条項。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/pdf/public_relations_170329_0001.pdf

  • 事業者の損害賠償責任を免除する条項(8条)
    • 「当店はリスクのある商品を、リスクを事前に明示して合意の基、取り扱って収益を上げており、リスクは注文者であるお客様が負い、当店はリスクを一切負いません。お客様はリスクがあることを予めご承知の上、ご予約注文下さい。」
    • 「ご注文後に技適マークがないことを理由にしたキャンセルはキャンセル料として商品代金の40%を申し受けます。」
  • 消費者の解除権を放棄させる条項(8条の2)
    • 「当店の商品はいずれも特殊な商品につき、返品には応じかねますのでご了承ください。仕様が異なる、品質が不十分であった場合でも返品には応じかねます。 」
  • 消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項(9条)
    • 「注文後のキャンセルはキャンセル料として商品代金の40%を申し受けます。」
  • 消費者の利益を一方的に害する条項(10条)
    • 「当店は初期不良が多い可能性のある初回ロットへの注文を避けたり、独自の判断で注文、代行、購入、バックなどの各種行為を留保する場合があります。」
    • 「無断で返品した場合は違約金として、返品送料の100%をご負担いただきます。」

……ほぼ役満では? これらの約款が無かったことになるのならば、全額あるいはもっとマシな割合の返金は狙っていけそうです。

さらにもう一つ、不当な勧誘について。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/pdf/public_relations_170329_0001.pdf

勧誘方法に問題があれば、そこを論点として契約を取り消すことができます。プレスリリースやWebサイトを勧誘に含めるかどうかは議論があるので断言はできませんが、可能性はあるのではないかと。

ヴェルテの行いにすると、そうですね。

  • 不実告知
    • 虚偽の住所・偽名の可能性の高いものを特定商取引法表記に掲示していること(これは特定商取引法的には違反ではないかという説もある)
    • 日本版でも日本語版でも日本向けでもない製品を、あたかもそうであるかのように宣伝すること
  • 不利益事実の不告知
    • 国内で通常使用に必要とされている技適マークの有無について、商品ページ内での言及を避けていること
    • 商品注文フローの中で、異常な内容の約款を見せる導線になっていないこと

これらは取消の理由にできそうに見えます。

民法: 遅延、債務不履行に対しては契約を解除できる

もうひとつ、通販サイト絡みのトラブルで持ち出されることが多い(らしい)のは民法541条でしょうか。

(催告による解除)

第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#2297

民法541条は、「適当な期限を区切って催告(催促)を行い、それでも履行されなかったら契約を解除できる」というものです。ここで契約が解除されるに伴い、債権者は債務者に対して原状回復のための返金を求めることになります(民法545条)。また履行が不可能であることが明確な場合、あるいは履行を拒否された場合には催告なしでの契約解除が可能となります(民法542条)。

ただしこちらは疑問もあって、法的根拠として十全ではないかもしれません。ヴェルテの債務履行期限は民法412条における2項・不確定の期限であると理解していますが、ここでいう不確定の期限とはガジェットの正規の発売日のことか、それともヴェルテが勝手に定めた発送予定のことか? 後者であればヴェルテが発送予定日を繰り下げ続けていれば「不確定の期限が確定していないだけ」と逃げられる可能性はあるのかもしれない。まあ被害を受けている人はページに書かれた発送予定日すら超過しているはずなので問題ないと思われますが(念のため魚拓は取っておくのがいいでしょう)。

色々ある

詐欺による意思表示は取り消すことができるとする民法96条など、ほかにも幾つかの法に規定があるようです。まあ詐欺と認定されるためには立件というハードルがあると思いますが……。

書きかた

これらの根拠から、どのようなお手紙を書くとよいでしょうか。文案は検索するとけっこう出てきます。

www.bizocean.jp

syouhisya.net

いちおう私が書いたものも置いておきます(上記サイトに倣い、まずは解除・取消をどちらかに限定はしない、としました。キャンセル料については一応「無効じゃボケ」と書いている)が、ふつうに上記サイトや他のちゃんとした文案を使った方がいいかもですね。もし使う場合はどれがいいかをしっかりと読んでから決めてください。

商品の催促(催告)をする場合の文案

14日の期限を設けての催告です。内容はよく読み、適宜書き換える必要があります。

催告に関する通知

《日付署名など》


○○様


○○年○○月○○日に注文し、代金・送料・消費税計○○円を支払った《商品名》につきまして、未だ商品を納品いただいておりません。

本書の到着より14日以内に商品を送付するか、貴業者の確実に実現可能な納期を御提示ください。

万一、以下のような対応によって社会通念上許容されうる商慣習に逸脱する状態が続く場合は、契約の解除(取消)として全額の返金を申し入れます。

  1. 本書に対する有効な返答が14日以上ない場合
  2. 本書への返信で提示される納期に正当な理由がない場合、又は納期を連絡なく超過した場合

以上

催告の後、契約解除(取消)を申し入れる

契約の解除または取消どちらになるのか。これは法的根拠によって異なるので、実際に争う際に何を持ち出すかは後で決めるとして、通知では併記しています。

契約解除(取消)に関する通知

《日付署名など》


○○様


○○年○○月○○日に注文し、代金・送料・消費税計○○円を支払った《商品名》について、現在に至るまで商品を納品いただいておりません。

つきましては先日○○年○○月○○日に送付しました催告書の通り、本契約の解除(取消)を申し入れます。

私の支払いました下記金額を至急返金くださいますよう、お願い致します。


《商品名》 ○○円

《口座情報》


なお貴ウェブサイトが「特定商取引法に基づく表記」として記載している損害額、40%ないし100%のキャンセル料は消費者契約法における無効条項にあたるため、全額を返金くださいますよう重ねて申し入れます。


以上

初手から契約解除を申し入れる

こちらは、商品の催促とかいいから一撃で返金要求するパターンの文案。

契約解除(取消)に関する通知

《日付署名など》


○○様


○○年○○月○○日に注文し、代金・送料・消費税計○○円を支払った《商品名》について、現在に至るまで商品を納品いただいておりません。

つきましては本契約の解除(取消)を申し入れます。

私の支払いました下記金額を至急返金くださいますよう、お願い致します。


《商品名》 ○○円

《口座情報》


なお貴ウェブサイトが「特定商取引法に基づく表記」として記載している損害額、40%ないし100%のキャンセル料は消費者契約法における無効条項にあたるため、全額を返金くださいますよう重ねて申し入れます。


以上

送りかた

ゲームガジェットをEメールと電話でねじ伏せた方からお話を伺ったことがあるのでメールでも無理ではないと思われますが、特に効力を求めて紙の郵便を使う場合は、特定記録郵便簡易書留あたりが手軽で良かろうと存じます(書けるならば内容証明もよいですが、いくつか制限があって少々ハードルが高いですね)。

問題はどこに送るかです。今まで見てきた感じどうもバーチャルオフィス経由の転送はナメられる、もしくはそもそも転送に対応していないふしがあるので(やっぱり特定商取引法違反なのでは)、株式会社シティの本店登記住所に送るのが有効と考えられます。

舶来ガジェットとゲームガジェットにはそもそも法人登記がないのですが、あの2つからの返信はヴェルテのメールアドレスから来ることを観測しているので、同じことです。

そこで持ち出すのが国税庁法人番号公表サイト、これは法人の名前や法人番号から所在地情報を調べることのできる超便利なウェブサイトです(法人の登記情報は個人情報ではありませんが、目的外利用の結果次第ではそれなりの法的リスクが発生すると思われます。くれぐれもこのサイトやここで得た情報は正当な調査、必要な分の連絡以外には使わないようにしましょう)。登記情報提供サービスではより詳しい登記簿謄本の写しを400円くらいで請求できますが、今回必要なのは住所だけですから、国税庁のサイトで事足りるかと。

とはいえ同名の企業が強烈に多いので……ここでは直接リンクはしませんが、神奈川県にあり、法人番号が7290801019294のものが、ヴェルテを運営する株式会社シティ(旧社名ドゥモア)です。

前方一致だと見つけやすい。

もしEメールや電話が全く通じず、催告あるいは契約解除(取消)の意思を物理郵便で示したいのであれば……あるいはバーチャルオフィスに送っても無視された場合は、以上のように登記情報から実在性の高い住所を調べる方法があるわけです。

登記そのものをバーチャルオフィス経由で行っている場合もあるので絶対確実な方法とは言えませんが、登記簿を意外と簡単にチェックできるという知識自体は覚えておくと便利だと思います。たとえば会社を自称しつつ登記情報の無い業者*1や、バーチャルオフィスで登記している業者だったら警戒する……という考え方は、よこしまな商売を見分けるヒントになるかもしれません。

まとめ

  • ヴェルテや、ヴェルテ並にメチャメチャな約款・宣伝の通販サイトの場合、民法ではそのような約款や契約を無効にできる筋がある。全額の返金請求は正当である可能性が高い
  • Eメールでも戦えると思われるが、もし物理の郵便を送る場合は特商法表記にあるバーチャルオフィスではなく(or だけでなく)、法人の本店住所を調べて送る手がある

という主張でした。

私は強要脅迫を扇りたいわけではないので歯切れの悪いところもありますが、今回は以上です。他のオプションとしては振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結の相談支払督促そして少額訴訟などがあり、また機会があれば紹介したいと思います(私も詳しくはないので……)。

ここに書いたことをやるかどうかはさて置き、やはりなるべく消費生活センターと警察には行ったほうがいいと思います。彼らは悪徳業者のデータベースを持っているらしく、相談するとそれが更新される(多いと注意喚起とか捜査とかになる)と言われているので。

*1:会社法7条・978条違反