こないだの3月後半あたりから4月にかけて公開されていた映画の話です。
仮面ライダー1号、よい/よくないで言うとかなりよくないと思うけど、困ったことにとても面白かった
— 稲葉 (@eps_r) 2016年4月4日
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当時のTVシリーズの主人公である天空寺タケル=仮面ライダーゴーストを「現代の軟弱な若者」サイドに置いて頑固な老人と対面させるという枠組みは、ともすれば老害を不当に持ち上げる不快な映像にも成り得ますし、今回の映画がそうでないとは言い切れません。しかし、なにぶんここで言う老人とは仮面ライダー1号こと本郷猛なので、弘の言うことなら仕方がないという納得が優先してしまうのも事実です*1。
本郷猛が主役となっているこの映画で、我われ(1名)は序盤から「この黒く険しい顔の老人は一瞬のちに何か突拍子もないことを言ってしまうのではないか」という謎の緊張感に支配されます。そして、学生相手に本当に突拍子もなく生命の無情さとそれ故の大切さを説いては笑われる本郷猛のあたりから猛と弘の境界は曖昧になり、猛お手製のコーヒーが登場するに至って猛=弘であるという確信に至ります。本郷猛は長い戦いの中で藤岡弘、のように成長し、自然と生命とコーヒーを愛するよくわからんカッコよさを身につけたわけです。
「仮面ライダー」からの四十年余の空白を、せがた三四郎以降の和製チャック・ノリスみたいになった「藤岡弘、」のパブリックイメージで埋めた、とも言えます。
物語としてはその藤岡弘のような人生を送ってきたことになった本郷猛が老境に至り、何のために生きて何を残すのかが描かれるわけですが、「春のライダー映画」のご多分に漏れず話の筋はちょっと強引です。これを成立させられるかどうかは本郷猛のキャラクター如何にかかっており、やはり、弘に牽引される感覚に乗れるか乗れないかで評価が分かれるのかなと思っています。
わたしの中にも「すごく面白かったけど、これで良かったのかなあ、他にやりようは無かったのかなあ」と困惑する気持ちがある一方で、「ひろしが画面に映っているだけで面白いと思って映画を見に行ったら、本当にひろしが画面に映ってるだけで面白い映画が出てきたんだ。何も問題ないじゃないか」という面もあります。いずれにせよ例年のライダー共演映画とは趣の異なる、記念作品らしいものではないでしょうか。
*1:「弘」は誤字ではありません。