ゲームガジェットとヴェルテ、想像上のメガドライブミニ2海外版を売り出す

メガドライブミニ2の発表、良かったですね。今日はそのメガドラミニ2に関して、妄想で予約を募っている自称輸入業者の近況を注意喚起的にお話しします。

あまりこういうのをやりすぎるとかえって問題業者の宣伝にもなりそうなので、悩みどころではあるのですが……。

あらすじ

当blogでは昔、全額前金で承った注文をバックレたり、数年後に別機種を送り付けたりする異常な輸入販売サイトを複数運営する「松川政裕」、通称でVAIO松川(バイオ松川)と呼ばれる危険な輸入商というか転売屋のような人を特集しました(カテゴリ: レッドスター(ヴェルテ)にも何本か記事があります)。

eps-r.hatenablog.com

松川氏が作った会社や通販サイトを簡単にまとめた図がこれで(太字は通販サイトとして現存)、株式会社レッドスターと株式会社ゲッコー・アンド・カンパニーをベースに、ヴェルテ、ゲームガジェット、ガイガーJP、キックスターターラブ、インディーゴーゴージェーピー、デロリアン・モーター・カンパニーなど商標の盗用を含む多くのウェブサイトがあります。

特に「ヴェルテ」「ゲームガジェット」の2つは最近ではTwitterのタイムライン広告に熱を上げており、Steam Deckの並行輸入を行う旨の広告をきっかけに国内ブログメディア・すまほん!!では注意喚起が行われました(当blogの紹介ありがとうございます)。

 これまでは多くのライターの皆さんに周知されていたため、ほとんどのサイトで肯定的に取り上げられることはありませんでしたが、Twitter広告という手法によって多くの露出機会を得ており、危険な状況だと言えます。

 言うまでもないと思いますが、これでこの業者を知ったライター、ブロガー、YouTuberといった情報発信者のみなさんは、くれぐれも被害者を増やさないよう、こうした業者を批判こそすれ利用推奨はしないよう心がけて下さい。

買わないで!危険な転売業者「ゲームガジェット」がTwitter広告に跋扈。 - すまほん!!

ということで今日の主旨の半分は終わってしまったのですが、久々なので書き損ねていたトピックや直近のやばさ情報を書き出させてください。

最近のトピックなど

振り込め詐欺救済法」に基づき口座が凍結されている

いきなり結構過去の話です。今まで書いていなかったので……。

Yahoo! 知恵袋5chなどで示されている松川氏の会社、株式会社シティ(旧ドゥモア)名義の口座について被害者による当局への報告があったらしく、なんと凍結しています。

furikomesagi.dic.go.jp

うーん。凍結時の残高が5万円足らずなのが「逃げられた」感ありますが、ハッキリと「インターネット・オークション詐欺」と書かれているのは迫力ありますね。なんでまだ商売できてるんだ?(口座を乗り換えたのは確かとして、乗り換えたからって商売を続けられるのか?)謎が深まります。

Twitterアカウントが発生

先にすまほん!! の記事を紹介したことで説明がだいたい終わっていますが、去年11月頃から今年4月頃にかけて、幾つかのサイトのTwitterアカウントが作られたのを確認しています。

以下、これらを引っ張りつつ問題行動を見ていきましょう。

現時点で存在しないメガドライブミニ2の海外版を勝手に受注

前置きが長くてすみません。

ゲームガジェット・ヴェルテ両者が北米版・EU版・アジア版の予約を受け付けて金を取っていますが、これらは非公式の並行輸入どころか想像上の商品です。

――でも、メガドライブミニは日本よりもさらに海外でヒットしていましたよね?

奥成 そうですね。メガドライブミニは、北米や欧州では正直、日本の何倍も売れています。

 けれど、今回はあえてお客さんの顔が見えている日本の配分を多めにしたのです。もちろん海外展開も準備していますが販売台数は日本を軸にしています。それでも前回ほど数はお出しできないんですが……。

メガドライブミニ2は収録タイトル50本超のうち20本がメガCD。半導体不足で開発中止も危ぶまれたなか生まれる“新ハード”誕生秘話を奥成洋輔氏に直撃 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

今のセガは「海外展開も準備しています」以上の情報を発表していません。リージョンで収録内容が変わるのか、変わるとしてリージョンが幾つになるのかは不明です。仮に今後の発表を言い当てていたとしても、それは予測でしかありません。

2013年 Google公式スマートフォン「Nexus4」「Nexus5」を国内販売し、個人から大量受注
メーカーに先駆けて独自に発売時期、価格を予想して並行輸入販売する無茶な手法を確立

株式会社レッドスター 会社案内

覚えておきたいのは、この松川政裕という人が、勘で商売することを成功体験として語るような人物であるということです。

彼が3画面スマートフォン「HubblePhone」ゲーミングUMPC「PGS」麻薬王の親族による「ESCOBAR FOLD 2」といったVaporware(出す出す詐欺)の商品ページをいち早く用意して金を取っていたのも、事実のひとつです(商品がリリースされなくても特段返金はしない、問い合わせがあれば6割のみ返金)。

無関係の人間が勝手にバリエーションを決めて、勝手に金を取っているわけです。「北米版とEU版とアジア版は出るのだな」と早合点する人を出しかねない広告手法はもはや業務妨害めいています。

シーランド公国爵位取得を非公式に代行

ガジェットばかりか爵位まで売り出しました。イギリスの沖にある自称国家・シーランド公国は確かに爵位をまるで記念グッズかのように販売していますが、公式サイトは日本語にも対応しているのでGoogle PayやPaypal・クレジットカードなどが使えれば普通に安く買えます。

特段の事情が無ければ、高い金を払って、納期の遅い所で、手続きミスのリスク要因となる仲介者をわざわざ使わないほうがいいのは言うまでもありません。

まあ、自称国家の自称爵位の発行を自称輸入代理店が代行するのは虚業のありかたとしてちょっとだけ面白いかも知れません。むしろ架空のガジェットでキャンセル料を狙うコスい商売なんか辞めて、これ一本にしてたらみんな迷惑しないんじゃないか。

自動車ディーラー「デロリアン・モーター・カンパニー」としての不審な活動

前にも2回くらい書いてた気がしますが、米DMCの復活に合わせていよいよ不穏になってきたので。

デロリアン・モーター・カンパニーとイタルデザインのパートナーシップは1974年11月以来、40年以上続いています。

VISION BEYOND TIMEプロジェクトでは、デロリアンの次世代EV「Alpha 5」を共同開発し、2022年8月18日にペブルビーチ・コンクール・デレガンスで発表、8月21日に展示予定です。

(中略)

仕様、価格、納車開始時期については、2022年8月18日にペブルビーチ・コンクール・デレガンスで正式発表予定です。現在、仮予約受付中です。

株式会社デロリアン・モーター・カンパニー デロリアン販売ページ

これらは米国DeLorean Motor Companyとの関係の不確かな松川氏が株式会社デロリアン・モーター・カンパニーという日本の会社の登記を行い、あたかも米DMCの日本語サイトであるかのように振る舞っている様子です。

blog.goo.ne.jp

デロリアンデロリアン・モーター・カンパニー)の日本法人」とは言っていますが、それが公認されているかどうか、あるいは「DeLorean Motor Companyの日本法人であるかどうか」を疑問に思うのは穿ちすぎですかね。

なにせ松川氏はその後、Unihertz Jelly Proの正規代理店契約が完了しないうちから発表をかました挙句、当のメーカーからハシゴを外されています。

www.zaikei.co.jp

また株式会社デロリアン・モーター・カンパニー(日本の松川氏のほう)の挙動には奇妙な点が多く、FIAT500、ナイト2000、DMC-12のEV版など多くの車種の受注をしている(特にDMC-12については15台が瞬時に完売したとされる)割には納車されたという噂を聞いたことがありません。あったら教えてください、自動車には詳しくないので……。

その後もFiskerのコンセプトモデルの予約を勝手に始めるGMOペパボのカラーミーショップに他人のDMC-12をどう見ても勝手に突っ込むなどわけのわからない行動が目立ちます。

DMCと提携している愛知県豊橋市のDMC-Japanが(サイトの更新は止まっているものの)自前の写真を使い、「DMC-12のEV版は個人輸入扱いとなる予定だが、まだ受注はしていない」「他の業者とは一切関係ない」と落ち着かせる方向に、重々に念を押していたのを見れば、信用の度合いは比べるまでもありません。

改めて、発信者が留保なく取り扱ってはいけない危険サイトです

ここしばらくの松川氏の動向をランダムに取り上げてきました。後半はプレスリリース単体を取り上げ、ライターやブロガーがこれらサイトを避けるべき理由を改めて詳しく見ていきましょう。

Steam Deckの発表のおそらく原文が無料プレスリリースサイトに拾われていたので、これを見本として。

けっこうお堅い商用メディアでも何故か取り上げてしまう例があるのですが、しかしプレスリリースだけでも一読して分かるほどの違和感があり、ウェブサイトの商品ページと特定商取引法表示を読めば明らかな異常性を振りまいている業者です。「検索すれば分かる」ではなく「読めば分かる」、固有の知識ではなく商法と明記事項の問題なのだからしっかりしてほしい……という話をします。

並行輸入品(転売品)を扱うことの論点

商品の性格:海外輸入品、並行輸入ベンチャー商品

ゲームガジェット /携帯ゲーミングPC「Steam Deck」、欧米から輸入販売の予約受付 - 無料プレスリリース「PR-FREE」

現在の松川氏は明確なウソをついているわけではないので、並行輸入だと明記しているのです。

並行輸入とは正規ルートを通さぬ輸入であり、乱暴に言ってしまえば転売屋と同様です。一般的には以下のような問題があるかと思います。

  • 通常、売値が定価より高くなる
  • 正規の販売店や代理店からの購入でないため、公式のサポートを受けられないか、サポートに追加のコストが掛かる場合がある
  • 電波やACアダプタ・バッテリーを使う機器などの場合、国内向けの法的認証を取得せず違法となるおそれがある(日本に売らなくても日本向けの法的認証を通す機器もあります)

転売屋がファミ通だのインプレスだのといった商業メディアに「日本向けの輸入を開始します!」とプレスリリースを発射する厚顔無恥さは問題ですが、はったりに押されて普段のお上品なメディアなら見向きもしないような並行輸入品を紹介してしまうガバナンスにも疑問が出てきますね。

松川氏特有の商法への論点

プレスリリースをもう少し見ていきましょう。

価格:
64GB赤字価格:39,800円(税送料込)10台限定
64GBお得価格:49,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格59,800円(税送料込)
64GB特急便:59,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格71,800円(税送料込)
256GB赤字価格:52,800円(税送料込)10台限定
256GBお得価格:64,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格74,800円(税送料込)
256GB特急便:74,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格89,800円(税送料込)
512GB赤字価格:64,800円(税送料込)10台限定
512GBお得価格:78,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格89,800円(税送料込)
512GB特急便:89,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格104,800円(税送料込)
赤字価格は限定台数のみ赤字出血大サービス。
お得価格は安値優先。数をまとめて手配します。
特急便は納期優先。赤字価格の赤字を補填する為、割高ですが可能な限り早く最優先してお届けします。
出荷の順番は特急便→お得価格→赤字価格です。

ゲームガジェット /携帯ゲーミングPC「Steam Deck」、欧米から輸入販売の予約受付 - 無料プレスリリース「PR-FREE」

すみませんが、これをうっかり載せてしまうメディア各位はどうして記事に起こそうと思うのでしょうか? 調達順でTierと価格帯を分けるショップなんてどの分野にも滅多に居ませんし、仮に居たら「おかしなことやってる」という判断が働くはずです。

特にアスキーBCNなど(黙って消したアスキーと違ってBCNは訂正記事が出せてえらいですね)フォーマルなメディアの場合、アンオフィシャルな転売屋ふぜいが「ちゃんとした」メディアに堂々とプレスリリースを送り付けるという行動に意識の虚を突かれてしまうのでしょうか。ここまであからさまな異常性がライター本人ばかりかデスクや校閲など多くの人にスルーされてしまうのは流石に理解に苦しみます(無料プレスリリースサイトとそれ以外で異なる文面でも発射しているのか?)。

販売方法:完全事前予約制
予約注文サイトURL:https://www.gamegadget.jp/
支払い方法:予約注文時の銀行振込

ゲームガジェット /携帯ゲーミングPC「Steam Deck」、欧米から輸入販売の予約受付 - 無料プレスリリース「PR-FREE」

しかも先払いのみ、銀行振込のみです。

消費者庁だって「前払いの銀行振込しか用意しないサイトはクソ」くらいのことは言いますよ。


プレスリリース単体でも大概であると分かってきましたね。このうえ一度でもウェブサイトと商品ページを確認すれば、商業メディアであれば100回中100回、確実にハネてほしい事案になります。

ゲームガジェットのSteam Deckのページを見てみましょう。

世界的大人気商品に関する重要事項説明:本商品は世界的大人気商品につき、入手困難になり、想定より大幅に納期が遅れる可能性があります。原則的にキャンセルできません。もしキャンセルされる場合は違約金として商品代金の40%を申し受けます。大幅に納期が遅れたことを理由にしたキャンセルであっても、違約金として商品代金の40%を申し受けます。

海外輸入品に関する重要事項説明:日本企業と比べ、海外企業は納期や品質を守る意識に乏しく、遅延したり、仕様が異なったり、品質が不十分だったりする可能性・危険・リスクがあり、何らかのトラブルが発生しても、保証・補償されません。原則的にキャンセルできません。もしキャンセルされる場合は違約金として商品代金の40%を申し受けます。万一、メーカーが倒産した場合は補償・返金できません。

ベンチャー商品に関する重要事項説明ベンチャー商品とは、企業体力の乏しいベンチャー企業による商品です。遅延したり、品質が不十分だったり、倒産したりする可能性・危険・リスクがあり、保証・補償されません。原則的にキャンセルできません。もしキャンセルされる場合は違約金として商品代金の40%を申し受けます。万一、メーカーが倒産した場合は補償・返金できません。

あらゆることを「人気のせい」「海外メーカー特有の事情のせい」「ベンチャー企業特有の事情のせい」にして、納期の遅延やキャンセル料そして逃亡を正当化する文言が並びます。消費者契約法違反ではないでしょうか。

ついでに現時点の特定商取引法表示も確認します。

まず所在地、電話番号、メールアドレス、販売責任者が検索避けのためか画像になっている時点でパンチが利いていますね(しかも以前は「大河内伝次郎」という昭和の俳優の名前になっており「偽名でやってるサイトなんか扱うな」とシンプルに言えました)。

所在地は本人が主張している通りバーチャルオフィス、つまり住所貸し屋のレゾナンス浜松町です。専ら自宅作業するという意味では殆ど個人事業主であり、実態としての事務所が無いのも場合によっては信用を割り引いてよいポイントでしょう。

そしてこの頭の痛くなるセクション。特に危ないところを抜き書きします。

  • 発生しうる危険/リスクは全てお客様が負い、当店は一切危険/リスクを負担しません。
  • 追加料金を請求する場合や、代替品をお届けする場合があります。
  • 危険/リスクの発生はイレギュラーではなく、レギュラーなことです。危険/リスクは注文者であるお客様が負い、当店はリスクを一切負いません。
  • 当店は初期不良が多い可能性のある初回ロットへの注文を避けたり、独自の判断で注文、代行、購入、バックなどの各種行為を留保する場合があります。お客様は当店にそれらの判断を一任いたします。

利用規約というのは得てして業者に都合のいいことがこっそり書いてあって、運用せずとも万一のために備えてあるものですが、さすがにこれは消費者庁か警察待ったなしの案件に見えます。

規約が行使されうるかとか、それ以前の問題です。正気のコンプライアンスを備えたメディアならこんな規約を備えている通販サイトを紹介すること自体がNGでしょう(そして代替品をお届けした可能性までなら実在します)。

最低限の仕分けはしてほしい

私は今の松川氏運営の業者を「脱法業者が捕まらないために、ウソだけはつかずにいる状態」と理解しています。性能の低さも客の守らなさもちゃんと書いてある……年単位で遅れても、金が戻ってこなくても、引っ掛かった客の自己責任……そういう言い訳をしている。

書籍やウェブメディア・ブログ・動画などといった媒体が、注意喚起や批判としてならまだしも、特に留保なく「海外のガジェットが予約開始されましたよ~」とプレスリリースの転記をしてしまえば、無用なトラブルを拡散し、詐欺の片棒を担ぐ行為になりかねません。

性能が低くて客を守らない業者だと自称してくれているのですから、そこは酌み取ってやろうじゃないですか。倫理にもとる内容は常識で排除できてほしいと思います。

Engadget日本版の終了は今さら残念でもない

去年書き損ねてましたが『Hades』良かったですね、SteamとXbox個別に100時間以上やったり熱度32を取ったりするくらい良かった。ローグライクには自機の持ち越せる成長・持ち越せない成長・そしてプレイヤー自身の成長、3要素の総和で高いハードルを跳び越させるデザインが多く(『Into the Breach』や『Dead Cells』もそう)、Hadesもそのクチですが、本作の長大なリプレイ性は、神族の悠久の時間感覚とミクロな人間関係の反復(神だが)とを結びつける物語上の「かすがい」のようでもあります。

今日はこんなタイトルのわりに先週に少し関連した話です。

eps-r.hatenablog.com

  • 日本のガジェット系クラウドファンディングは、開発・OEM・ODM・輸入の区別を曖昧にしがち
  • プロジェクトオーナーには輸入商が多く、とりわけアジア系の怪しい業者や個人事業主に近い小規模業者が居る(しかも最近は情報保護を名目に住所や事業者名がプラットフォーム側で隠されていて見分けづらい)
  • 事と次第によってはAliExpressの方が安くて早くて手厚いまである

前回はこのような話を特にMakuakeの事例を挙げて説明してきたわけですが、そこへ行くと面白くないどころか有害ですらあったのは先日終了したEngadget Japaneseですかね。

日本のIT系メディア史の中でも一定以上の存在感を持つ、歴史の長いサイトがEndagdet日本版ですが、長い運営のなか体制と共にライティングの質と方向性も度々変化を続けていました。私も長年愛読していましたが「Engadgetがずいぶんつまらない事をしてるね」という話は編集長交代前も含めて何回かしており、「セキュリティ月間中にセキュリティをゆるめる記事を載せるな」とか「UPQのアクロバティックな擁護をするのが『消費者向けメディア』のやることか」とか「『どんなときもWiFi』の無制限プランが終わるのは月にTB単位で通信する客のせいじゃないよ」などと、やいのいやいのと迷惑なことをわざわざblogに書いていました。

製品の瑕疵やメーカーの動向を四六時中叩き続けるのも、逆にメーカーに気を使いすぎて機関誌や広告塔になるのにも、価値はあるのでしょうが(そして私自身は大概前者寄りですが)、Engadgetにはそれら偏りすぎた位置には居て欲しくなかった、というのが終わってみての正直なところです。

前から残念だったEngadget日本版

ツタヤことCCC系列の会社によるGREEN FUNDINGというクラウドファンディングのプラットフォームがありまして、2019年にはEngadget日本版との提携を打ち出していました。

store.tsite.jp

これは当時のGREEN FUNDINGのプロジェクトオーナー向け紹介ページスクリーンショットで……ガジェット系クラウドファンディング全て掲載とありますね。Engadget側にもPR表記が「コラボ」名目で一応為されていてステマではなかったにしてもまあまあ険しい話で、末期のEngadget日本版では3年近く、毎日のように微妙に怪しい日本語のランディングページがせっせと転載されていきました。

建前としてはさまざまなガジェットの間口を拡げるというものでしょうが……つまりはこういうこと、「大手メディアに紹介されているのだから安心できるに違いない」という読者の心理に乗っかった名前のロンダリングであって、私にはあまり良くない意味での "価値創造" に見えます。

日本のクラウドファンディングの御多分に漏れず怪しい業者・怪しい言葉遣い・怪しい商品だらけのGREEN FUNDINGプロジェクトの品質をEngadgetは担保しませんしGREEN FUNDING側がまともに担保している様子もありません。上海問屋やグリーンハウスあたりから出ていたら見向きもされないような「紫外線照射キーホルダー」や「次亜塩素酸水生成機(実際は次亜塩素酸ナトリウム水溶液生成機)」などの胡散臭い商品までが漏らさず掲載され紙面を賑やかすさまは登場人物全員による信用のロンダリングどころか叩き売りに他ならず、品位や治安のある行いとは思えませんでした。

生き残り戦略というよりは意志のことだったと思う

www.itmedia.co.jp

媒体終了に際しての編集長の談話が3回にわたってITmediaで公開されていました。

矢崎 だから、何かもっと、身近な人を含めて、小さなコンピュータ、身近なコンピュータとかね、インターネットが人生をもっとリラックスした、心地よくアシストしてくれる存在になるような仕事をしたいんですよ、僕。

 それは文教なのか、あるいはものづくりなのか、分からないですけど。より良い世の中になるため、みたいな、そういう工夫がしたい。

 ただ、自分の中のモチベーションとしては、キャリアの後半にけっこうものづくりに携わってきて、そこがやっぱりいちばんテンションが上がるし、わくわくする。

 ものづくりも表現だと思うんだよね。

 表現の一環としては、ものづくりの企画をサポートするとか、助言するみたいな形で、最前線で小さいコンピュータの発展を見続けてきた私だからできること、提案できることもあるのかな、と思いながら。

Engadget日本版はなぜ終わったのか、最後の編集長・矢崎飛鳥氏に聞く(第3回) 編集スタッフの「次のフェーズ」はどうなるのか(2/4 ページ) - ITmedia NEWS

「ものづくり」とその応援をしてきたと強調する編集長の、そのポリシーから発射されてきたのがUPQ事件であり、見境のないクラウドファンディングの記事広告だったということでしょうか。これら広報活動と、ものづくりへのモチベーションの交わる点が編集長入魂のプロデュース『Lifebook UH Keyboard』ならば、「バッタ屋の広告を作り続けてきたおかげで自分たちの『ものづくり』ができました」と誇っているようにすら見える構図です(いや、そんなバーターではないんだろうけど……)。それは製品のプロデューサーやサポーターとしてはともかく情報誌として誇れる仕事だったとは、失礼ですが私はあまり思いません。


Ittousai氏の個人blogの延長から媒体として大きくスケールして一本立ちするため、他のメディアにない独自路線を作るため、無差別の記事広告でもやらなければいけなかったのかもいけませんが(その甲斐あってか収益自体は特段不採算ではなかったとされている)、とはいえ少なくとも全く望まぬことをやっていたわけではないだろうし、あるいは編集部の文化として良かれと思ってやっていたようには、やはり見えていました。

それはどういうことかというと、ものづくりに貢献したい意志があればこそEngadget電子工作部出身のUPQへの過剰な思い入れを通せたし、新しい価値を作り出したい意志があればこそジャンク業者のジャンク商品をクラウドファンディング紹介と言って押し通せたのだろうということです。彼らからしてみればそれらの行為は価値創造というメディアの役割を果たすものであって、肝心の情報がウソ・大げさ・紛らわしいものかどうか、消費者の体験が不合理・不利益かどうかは、後で消費者自身が決めればいい……という、よく言えばある意味高い意識、悪く言えば責任放棄から発せられたのではないかと外野からは見えます。

バッタ屋の広告媒体になりおおせていた理由が、仮に上のような「ものづくりと価値創造」への誇りからだったとしても、あるいはだからこそ、私個人からの評価としては「情弱向けの餌場をこさえるのはやめろ」になるので、Engadget日本版は終わってくれて良かった、編集長が御本人の志向をより活かせるであろうものづくりの現場に行けて良かったと本心から思うのでした。

後継とされるTechnoEdgeがどうなるのか、広告コンサル企業イードの出資を受ける中で「紙ヤスリ同梱の有無に注目が集まる アップル iPad mini の実機写真ギャラリーをお届けします」などという10年前のような陰険なユーモアがどこまで許されるのかに注目が集まります(私はこの書き出しが大好物ですが、そういうことをやってほしいわけではない……)。

お返事(2022-06-07)

UPQ時代は編集長が違うので批判先が雑

otsune 2022/06/06 00:24

https://b.hatena.ne.jp/entry/4720582916385216962/comment/otsune

矢崎編集長の就任は2017年1月1日付UPQディスプレイの擁護記事は2017年4月25日付です。UPQの成立でなくインシデントの取り上げ方を問題視しているのだから、事実関係は前後していません。

もう少し補足すると「矢崎編集長になってからEngadgetの雰囲気が変わった」といった犯人捜しのようには書いていません(むしろ雰囲気が変わったから矢崎氏を招いたんじゃないですかね)。編集長に象徴されるメディアの振る舞いを批判することと、編集長個人を批判すること、どちらかでいえば前者の話のつもりでした。

不確かな「販売」と「出資」のあいだ、Makuakeの自主規制強化のこと

Sifu -師父-』良かったですね。『ダイナマイト刑事』のようなアーケードライクのアクションゲームをよりにもよって『SEKIRO』と掛け合わせ、更に「50くらいあるけど超早く減る残機」「ステージクリア時の残機の成績をセーブできる」と難にも易にも両極端の要素をぶち込んだ開発者の狙いは、幾つもの崖が建つピーキーな難易度曲線です。有限のリトライで斃れる主人公を無限のリトライで支えるプレイヤーが崖を行きつ戻りつ少しずつ超えるさまはゲームとの対話であり、それがつまり功夫(カンフー)なのでしょう。

今回はガジェットのクラウドファンディングまわりの近況です。

Makuakeがトラブル対策を強化したとのニュース

今年の1月、クラウドファンディングサイトMakuakeの売上高が上がったり利益が下がったりというニュースが流れていました。

www.itmedia.co.jp

利益面では、コンバージョンレート(CVR/来訪者のうち、商品購入などアクションしたユーザーの割合)が低下。商品と来訪者とのマッチングに課題があったとみている。

対策として、プロジェクトの設計をサポートするキュレーターや審査の人員採用を強化したことで人件費が増加。ユーザー体験の改善を図るべく、アプリを中心とした新機能開発も進めてきたという。

品質問題に揺れるマクアケ1Q決算、営業益74%減 「審査人員を強化」 - ITmedia NEWS

利益を下げそうな要因に対する素早いアクションとして、プロジェクトの品質やユーザーサポートを高めようと意気込みを発しているかのような記事になっていて、その姿勢は褒められるかもしれませんが……先にやるべきだったのでは? とは、どうしても思ってしまいますね。数字に表れ始めてようやくサポートを厚くする気になったのか。

実際この1月から3月あたりにかけて、Makuakeは新しい品質基準とプロジェクトの新しい選別方針を打ち出し「しっかりと説明をすること」「法令や倫理に抵触しないこと」「プロジェクトに新規性があること」といった姿勢を明らかにしていきます。そのままの言い方をすれば、「しっかりと説明をしない」「法令や倫理に抵触しかねない」「新規性の低い」プロジェクトがあったということでしょう。

つまりはMakuakeというサイトは、信頼と品質を軽視してきたのではないか。そのうえで2019年末の上場以来の2年以上「クラウドファンディング」という言葉を避けて「応援購入」に呼び替えてきたのは、不誠実だったのではないか……というのが今回の話です。

起こっていたこと幾つか

この手のトラブルは数年前から問題になり続けていて、たとえば商品が言っていた時期に届かない、謳っていた性能が出ていない、事前事後のトラブル対処能力がきわめて低い、あるいは輸入対象の商品の選び方にそもそも問題がある、といった話の枚挙に暇がありません。

界隈をまじめに追っていない私でも知っているようなインパクトある事例を幾つか抜粋して挙げておきます。

「10年間の集大成」の食洗機、実際に関与したのは1年くらい(2021年冬)

www.itmedia.co.jp

新たな「基本方針」の策定につながった直接の理由をITmediaは指摘しています。というか上の記事は今回のblogの主旨をだいたい先に言い終わっておられるのですが。

プロジェクトとしてはOEM(ODMじゃないか?)の超音波食洗機というものですが、以下のような問題がありました。

  • 商品紹介の画像で同じ製造元の他製品のものを使い回したため、「AliExpressやtaobaoでもっと安いのを見た」などのツッコミが多数
  • 製造元の開発期間(10年)と販売元の関与期間(1年くらい)を故意に混同し、長いほうの期間を宣伝に使った

Makuakeに限らず日本のクラウドファンディングでは自社開発 / OEM(製造受託) / ODM(設計受託) / 輸入の区別がよく曖昧にされており、「AliExpress(中国通販)で同じものを見た」などの突っ込みは行われがちです。

とはいえAliExpressなどより高い価格に関してはそれなりに擁護や同情の余地はあり、今回は電源・電波など日本向けの認証コストを販売者が支払っているとの説明で決着しています。実際これらクラウドファンディングには、本当に「海外のものを持ってきているだけ」でないところはあり、認証まわりのコストや販売側による品質チェックなどによって価格が上がるのは当然といえば当然です。

かれら販売者にしてみれば「認証を取るのは当然であって、そんなわざわざ表記しなくてもよいことを『本当に認証を取っているのか』などと指摘するのは揚げ足取りだ」などの言い分もあるでしょうが、ウソ・大げさ・まぎらわしいクラウドファンディングの惨状に客がいい加減うんざりしていることの表れでしょう。本件も開発期間に関してはウソと言われて仕方ありません。

「シルク生地」マスクを謳っていた商品が、実は化繊だった(2020年夏)

食洗機よりも更に詐欺寄りの話で、全国紙にも載った件なので結構知られているかもしれません。

mainichi.jp

www.sankei.com

2020年、疫病によってマスクが求められる中、Makuakeに限らず多くのクラウドファンディング仲介業者では、「絹生地」「シルク生地」「アイスシルク(絹)生地」を謳うマスクの輸入・販売をおこなうプロジェクトが多く立ち上がっていました。

全国紙の記事ではこれらプロジェクトの出資者を取材し、謳っていたものとは全く違うものが届いたというトラブルとして取り上げています。仲介業者を特定できるようには書かれていませんが、twitterなどでは規模や文言の一致から【抗菌】ひんやり素材の、1日中つけたくなる新感覚マスクを緊急生産!だろうと推測されていました。

毎日新聞アーカイブは有料化されましたが、その有料部分ではMakuakeかもしれない仲介業者からコメントを得て、

一方、仲介サイトの運営会社は取材に、「トラブルは企画者(業者)と利用者の間で解決してもらうのが原則。通販サイトとは異なり、企画が成立しないリスクもあることを理解して使ってほしい」と話す。

「絹マスク生産、提供」でCF、届いたのは化繊製輸入品 業者「だました認識ない」 | 毎日新聞

「あくまで場所を提供しているだけ」というスタンスを説明しています。Makuakeに限らずクラウドファンディングのプラットフォームは基本的にこの手の責任を取ることに対し消極的です。

女性は企画の内容を勘違いしたのかと思い、サイトを改めて確認すると、紹介文に記載されていた「絹」という表記はいつの間にか消えていた。サイトには他の支援者からの苦情が多数寄せられており、女性もメールで返金を要求。当初は返信はなかったが、「消費者支援機構に相談する」と粘り強く連絡を続け、出資金は幸いにも返金された。女性は「マスクは中国製の輸入品で、プロジェクトの紹介文も内容が変えられていた。CFへの信用はなくなった」と憤った。

500億円市場 急拡大する「クラファン」の光と影(2/2ページ) - 産経ニュース

産経の記事で興味深いのは、「プロジェクトの紹介文も内容が変えられていた」のあたりでしょうか。

note.com

こちらはちょうどアイスシルクのマスクを調査対象に、プロジェクトの紹介文を後から書き換えている実例の紹介。少なくともMakuakeとCampfireに関しては追記・変更は可能であり、後から「絹ではない」と追記されたプロジェクトが実際に複数あったのが分かります。

会社が破綻して進行中のプロジェクトが全部チャラ(2019年春)

www.itmedia.co.jp

副業アフィリエイターが脱サラして始めた物販事業「合同会社アスタイル」は、いくつかの輸入クラウドファンディングを同時に破綻させてしまったようでした。

被害者の会掲示板には破産説明会のレポートが上がっています。

[104] 最低な説明会

投稿者: 花鳥 投稿日:2019年 5月27日(月)11時50分45秒 sp49-98-133-252.msd.spmode.ne.jp 通報 返信・引用

質問されてたかた、お疲れ様でした。
もうなんともいえない。

参加は6名ほど

資金繰り悪化が1月から
1月中旬から資金繰り悪化

従業員は3人(正社員1人・パート1人)
内年末には代表以外退職

イビキトリーナは200台届いていたが発送せず
分割仕入れの為、300台ほど予定していたが
すべて届いておらず。

すでに届いていたものに関しても
弁護士に相談したら送るなと言われたとのこと

スマークは1月中旬に仕入れ予定のため
まだなにもしていなかったそう。

資金繰りの悪化と経営の能力のなさを
いいわけにしてたが・・・
クラウドファンディング
今後も開き直られたら終わりの案件増えそうだな

とりあえず大まかに・・・

今思うと経営者からの謝罪なかったな

[105] Re: 最低な説明会

投稿者: Sanza 投稿日:2019年 5月28日(火)09時49分20秒 om126133008026.21.openmobile.ne.jp 通報 返信・引用 編集済 > No.104[元記事へ]

参加された皆様、おつかれさまでした。

申し訳ないと思ってる顔は微塵もありませんでしたねぇ。
流石にニコニコはしてないけど、ヘラヘラしてる感じでした。

Bluetoothなど都合が悪い(?)件などは、「分かりません」や「担当外」で済ませてました。
あとは「自転車操業」で押し通してましたね。

イビキトリーナの200台は、分割で支払ったため支援者の全台分が中国から
入ってきてなかったそうです。
MAKUAKEから一括で金を受け取っておきながら、なんで分割支払いやねん!
で、200台は資産として売却されましたとさ。
スマークに至っては購入すらしておらず、会社の運用資金に回したと・・・
詐欺ですよねぇコレ。
あ、スマークは受付締め切り前に、既に経営は悪化していたのに
当時は行けるかと思って支援募集を締め切らなかった様な事を言ってました。

目的外で支援金を使用することが横領と何が違うのか、理解できません。

北崎くんはアスタイル以外に個人でも自己破産申請したそうです。
金額レベルでの債権者集会では珍しいのか、後ろに上記の個人請求の債権者集会が
控えてたので裁判官がしきりに時間を気にしてましたねw

これで、放免なんだからスゴいよなぁ。。

レポートがけっこう生々しいので付け加えることがあまりありません。記事や掲示板を読んでいくと、このような事態に対しても当初Makuakeは「出資者とプロジェクトオーナーは直接やり取りをしてトラブルを解決するべき」とのスタンスで、状況確認や返金などの介入には当初消極的だったのがわかります。

サイズ違いの返品をユーザー同士で行わせる業者(2021年春)

www.makuake.com

NASA宇宙服などにも使われている断熱素材」といった昭和じみた文言で宣伝されていた防寒具が、届かなかったり、シーズンをまたいで届いたり、サイズ違いが送り付けられたりと色々なトラブルを起こしていたそうですが、最も大きな問題はそのアフターケアにあります。

note.com

3.勝手に個人情報を第三者(別の購入者)へ漏洩している

これが一番問題だと考えます。
サイズ交換希望の場合、返送先として個人の自宅の住所が送られてくるそうですが
それは返送するサイズを希望する別の購入者の個人情報だそうです。
(複数名から証言あり)
明らかな個人情報漏洩です。第三者に同意なく個人情報を渡すことを認めた覚えはありません。

言っていることの意味が初めは分からなかったのですが、つまり「サイズを取り違えたユーザーAに、別のサイズを取り違えたユーザーBの住所氏名を教えた」ということです。サイズ違いの交換をさせるために!

個人情報流出とのお声について

サイズ交換の簡便化のため、一部のご支援者様の個人情報(名前・住所・電話番号)を他のご支援者様へ告知したことにより、53名のご支援者様の個人情報が漏えいいたしました。

現在は、このようなサイズ交換は停止しております。
このような不適切な個人情報の取り扱いをいたしましたことを、重ねてお詫び申し上げます。

【重要】返品先、返金等について 2021.05.13

やらかしはプロジェクト進捗ページでも公言されています。

もはや不適切というより非常識ですね。一瞬「ここまでのバカは予想外かもね」とMakuake側の担当者に同情してしまいますが、こんな輩に場所を平気で貸したプラットフォームがやはり「トラブルは出資者とプロジェクトオーナーの間で解決するのが原則」として責任を持ちたがらないのもどうかしています(多くのユーザーからクレームがついた結果、すったもんだの末に最終的にはMakuakeが金を出したようではある)。

そもそも輸入元の商品が詐欺だった(2019年夏~2020年秋)

eps-r.hatenablog.com

過去に当blogで取り上げた、「フルHDモバイルプロジェクターと謳っている商品(写真右)を輸入してみたら840x480解像度しかない詐欺の品物だったので、輸入商の尽力によって額面通りの性能の品を全く別のルートで調達することになった(写真左)」という事件もありました。

どちらかといえば日本ではなく本国の製造(製造ではない)業者が悪質だった例で、たまたま輸入商にトラブルを解決する能力があったのでどうにかなりましたが、それでも当初の納期から1年以上の遅延を要しエンドユーザーにとっておよそ悪い買い物体験だったであろうことは否めません。

転売屋気分のアマチュア業者が居るのではないか

総合すると問題はおおむね、以下のような業者ということになります。先に挙げた業者すべてがこれに当てはまるわけではないのですが……。

  • 中国のECサイト(AliExpressとか)で見るのと同じようなものを
  • ほとんどサポートを放棄して
  • サポートの薄さの割には高いマージンを乗せて売っている(あるいはマージンが低すぎて破綻する)

こうした性能の低い業者はどうして生まれるのか?

以前GREEN FUNDINGというサイトを中心にガジェット輸入系クラウドファンディングを調べたところでは、プロジェクト実行者の住所として固定の事務所ではなく、バーチャルオフィスや個人宅・集合住宅などで登記する業者、あるいは登記すらない業者がしばしば混じっていました(余談ですが、Makuakeを含む各社においては、品質第一を目指すならば、むしろ住所等は隠さない方が信用を得られるような気もしますね)。

特にトラブルを起こすプロジェクトに関しては、「個人の仕事か、個人並みに小さい法人の副業が多いんじゃないの?」と疑っています。先述の脱サラアフィリエイター上がりの合同会社アスタイルのように。

prtimes.jp

気づいた時にはすでに複数の情報商材屋や、はっきりと副業向けと言うオンライン講座があるくらいです。副業・在宅ワーク気分で中華ODMや輸入に手を出す人たちも、けっこうな割合で有り得るのではないでしょうか。

「応援購入」という新語と実態

「トラブルがあったにしても、クラウドファンディングってそういうものでしょ? 購入じゃなく出資でしょ?」

などの言い分は、この手の事例にはつきもので、「何があっても自己責任」「転んでも泣くな」……ひどい話にも訳知り顔のコメントが付くことがよくあります。

確かにMakuakeの業態はクラウドファンディング以外の何物でもありません。トラブルの責任の一端を出資者が負わねばならないのもその通りです(私もKickstarter、Indiegogoなどで出資者として仕様変更や中止に見舞われたことはありますし、納得しています)が、しかし特に上場あたりから前述のように「出資」を「購入」に置き換えようとしているのであれば、話が少し変わってきます。

彼らの動向についての記事がちょうどImpressにあったので紹介しておくと、

www.watch.impress.co.jp

2013年にサービスを開始したMakuakeは、その後2019年12月に上場。このタイミングでクラウドファンディングの「支援」という言葉を「応援購入」という言葉に切り替えた。

(中略)

ここ数年はMakuakeの期待通り、ECサイトに近い使われ方が主流になり始めたが、その結果として「一般的なクラウドファンディングのイメージとMakuakeの実態が異なりつつあある」(坊垣氏)。Makuakeの本質を伝えるための言葉が必要だと考えから、「クラウドファンディング」に変わる新たな用語を半年かけて検討。日本のクラウドファンディングに強かったという「寄付」の要素を「応援」という言葉に置き換えることで、「応援購入」という言葉が生まれた。

2019年12月の上場タイミングで応援購入という言葉を使用して以降、Makuakeでは「クラウドファンディング」という言葉自体は使わず、「Makuakeで買える」という直接的な表現が用いられている。「仕組みとしてはクラウドファンディングだが、我々としては『応援購入サイト』。メルカリをフリマアプリと言わないように、Makuakeもクラウドファンディングではなく、Makuakeという言葉がワーディングになればいいと期待している」(坊垣氏)。

「ECサイト化」するクラウドファンディング。変化する“支援”のかたち - Impress Watch

この通り、クラウドファンディングではなく「応援購入」というECサイトに近い概念で駆動するサイトであると言ってきたのがここ数年の彼らです。

上の記事ではECサイト化の流れを肯定的に分析し、

  • (開発でなく輸入であれば)プロジェクト開始から納品までのスケジュールは必然的に短くなる
  • 個人輸入の海外物流はトラブルの対応が大変。国内物流ならば問い合わせも手軽
  • 個人輸入は送料が高い。輸入業のクラウドファンディングならばまとめて輸入されるので送料が安い
  • 国内向け認証を取得したり、本国より遅れるぶん品質の高いロットを入手できる可能性がある

などと輸入商のメリットを列挙していますが……トラブル対応が、手軽ね……。

「在庫リスクを負わずに手軽に副業!」という気分で集まってきたAmazonマーケットプレイスの転売屋に毛の生えたような方々(※あくまで推測ですよ)が、まともにトラブルへの対処をしたり、国内向けの認証を取得したり、本当に出来ていたのでしょうか。時期と業者によってはACアダプタやWi-Fi/Bluetooth機器などの法的認証を通していたかすら疑われかねません。いやさすがにその手の事項くらいはチェックがあったと信じたいですが……。

個人的にも幾つか海外のクラウドファンディングに出資して物品を手に入れていますが、遅れつつもガジェットの量産を成し遂げられるくらいのプロジェクトであれば、物流の扱いを誤ることはあまりありません。むしろ先述の例のような素性も知れぬ零細輸入商たちが、紹介文でウソをついたり、商品の調達に失敗したり、送る品を取り違えたり、取り違えた品をユーザー同士で融通させるような常識知らずの真似をしてはいないでしょうか。

2020年5月頃から2021年の年末近くまでの1年以上ものあいだ、Makuakeの問い合わせページでは「サポート体制に余裕がありません」と明言されていました(2022年の初めには剝がされているが、「年末年始休業のお知らせ」を同じ枠で出していたので、下ろしたついでに諸共に消えただけなのでは? という気もする)。特に上場からの「応援購入」体制以後のトラブルの急増を裏付けているように思えます。

結論: 都合でセールとファンドを使い分けるな

結局Makuakeにせよ何処にせよ、場を提供してマージンを抜くのが仕事であって、プロジェクトの新規性や確実性・法令順守そして事前事後の諸々のトラブルの予防と対処などに出来れば関わりたくない(関わりたくなかった)ように見えてしまいます*1。こうした不干渉主義はKickstarterやIndiegogoなど海外のサイトにしても多かれ少なかれ同様ですが、ことMakuakeの「応援購入」という建前めいた言葉は、特に悪質ではないか。

ある一方では「アタラシイを『買える』応援購入サイトですよ」と危なくなさそうな響きに置き換えて宣伝し、ある一方では「遅延も破綻もありますよ、クラウドファンディングなんだからトラブルは当事者で解決してよ」と責任を放棄するのなら、それは出資と販売を都合のいいように使い分ける行為であり、クラウドファンディングという枠組み全体の信用を傷つけるだろうと思います。

今回の「品質基準」と「基本方針」によって、今までの不誠実さが是正されるならば、それ自体は悪いことではありません。意地悪な言い方としては「真っ当でない商売の利益によって上場して、2年以上経ってから上場企業らしい振る舞いを身に着けるのかよ」なんて気分があるのは上に散々書いた通りですが、気軽な応援購入ECサイトとして、今度こそ「フォーマルなチャレンジ」という相反する要素を立派にまとめ上げてほしいですね。

See also

lastline.hatenablog.com

出資・観察からの体感と国内外いくつかの例のピックアップ。「日本のクラファンは Aliexpress で検索しろ」は至言。

*1:「商品開発ではなく輸入なら固いだろう」と思っていたら輸入すら満足に出来ない有象無象が集まってきたという意味ではプラットフォームも被害者かも知れないが、有象無象を集まるに任せていた責任が無くなるわけでもない。