「巨大化した超小型プロジェクター」PIQOの謎

当blogは物を送らない代理店というものに対しての攻撃を繰り返しているので、クラウドファンディングで金を集めているような輸入代理店などをとりわけ憎んでいるように思われるかもしれませんが(実際偏見はある)、今回はMakuakeに出品なんかしてる代理店にも仕事をする者は居たという話をしていきます。

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この「おやこマシン」はそうした仕事の結晶なのです。

出荷を遅らせ続ける超小型プロジェクターPIQO

まず前提から切り出すと、2019年初頭にindiegogoでクラウドファンディングの行われていたプロジェクター「PIQO」という物体があります。

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www.indiegogo.com

thepiqoprojector.com

現在は下側のリンクのように一般販売のフェイズに移っていますが、クラウドファンディング分の全量出荷には至っておらず、一般分の利ざやで出資分の注文をゆっくり送るという自転車操業じみたことになっているようです(これ自体は実はそれほど珍しくもなくて、クラウドファンディングにありがちなリスク要素と言えます。困っちゃうね)。

これだけでも年単位待たされている人が居たり空箱を送りつけられた報告があったりと只事ではないのですが、今回注視する問題はそこではありません。

スペックの疑義

何よりスペックシートが事実を語っていません。

PIQOは世界最小クラスのサイズでネイティブ1080pの高解像度を実現した、という能書きで売れたAndroid端末ですが、Android側からプロジェクターユニットへの入力解像度は720p(HDMI入力は1080p)、ユニット自体の出力解像度は480pで、縦横サイズにして854x480のFWVGAに留まる機種をOEMで売っているというのです。

私の見た限りでは主にRedditや一部海外レビューサイトで疑いが提出されており、Hotack D019OEMであろうと見当が付けられていました。

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少なくとも外形はそっくり同じで、HDMI入力が1080p、出力解像度が480pなところと合わせて確度はかなり高いと思われます*1

そして能書きの4分の1未満の解像しかできないことがエンドユーザーに露見しても、この業者は詐称を認めることは一切ありませんでした。直販サイトには今も1080pの文言が輝いています。

「日本独自エディション」の誕生

こうなると掴まされたのは、クラウドファンディングプラットフォームMakuakeで日本人に売るぞと息巻いていた輸入代理店です。

www.makuake.com

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2千万円以上の金が動いてしまっている。

prtimes.jp

輸入する予定で金を集めてしまった株式会社Earth ShipはPIQOのスペック詐称に後から気付いたため、PR TIMES等にプレスリリースを打ち、

  • PIQO本家はFullHDと言い張っているが、我われはPIQOの実効解像度が854x480しかないことを分解して突き止めた
  • 深くお詫びし、以下の選択肢を出資者に提供する
    1. 返金
    2. FWVGAモデルの受け取り
    3. これから設計・生産させるFullHDモデルの受け取り

という内容を周知しました。

これはちょっとすごい事だと思っていて、コンフィグレーションの変更どころでなくまったくの別物を調達すると言っているのですよね。いくら事前に出荷数が決まっているとはいえ後付けの条件で物を調達するのは、"低リスクの輸入販売" であるMakuakeファンディングの原則からは相当外れています。

他にもアメリカで取得させる予定だった技適を結局日本側で取ることになったなどの処理が重なり、2019年9月末だったFWVGAモデル(=詐欺の産物)の発送予定は2ヶ月ほど遅れました

そしてPIQOジャパニーズエディションであるところのFullHD版にも波乱が待ち受けていました。

以下に関連する進捗報告を抜粋しますが、もともと完成している体の只の輸入品だったものがここまでの大荒れになることはあまり無いと思います。少なくとも巨大化はせんだろ。

コメントでずっと怒られているのですが、怒るのも致し方ないというか、なにせ初手の検討試作がこれですよ(上のリストで★つけたところの画像)。

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金が集まったら後は2~3ヶ月かけて右を送ってればよかっただけの仕事が、なぜか一年かけて誰も望んでない左の代物を輸入商の側でこさえることになったというつらさは察するに余りあります。

業者も客もよく頑張った

クラウドファンディングは本来、需要調査的な割引価格での予約販売ではありません。*2

「HAL 9000」レプリカAIスピーカーのクラウドファンディングが破綻。出資金返還も望み薄 - Engadget 日本版

MakuakeやGREEN FUNDING等で横行しているのが「需要調査的な割引価格での予約販売」であることはよく知られるようになってきたと思いますし、MakuakeにPIQOプロジェクターを持ち込んだ時、Earth Ship社の中では失礼ながらそのような見込みがあったことは想像に難くないでしょう。

しかし実際に訪れた試練と、その試練に立ち向かうさまは、まるで "本来の" クラウドファンディングのようでした。そう、このプロジェクトは、「応援購入」の名のもとに需要調査的な割引販売をあっせんし続けるMakuakeを超えて、嘘をついて偽物を売り続けるPIQO本家を超えて、遂に本物のクラウドファンディングになりおおせたとは言えないでしょうか。

たとえ出来上がったものがそれはそれで中国工場のOEMかコピー品っぽい代物でも、結果的に品質としてはゴミだったとしても、なにより1年も遅くなったとしても、成し遂げたことに私は拍手を送りたいと思うのです。それは多分Makuakeの売りたい物ではないし、Makuakeを利用する人の買いたい物でもないし、登場人物の誰も二度とこんなことはしたくないでしょうけども……。

*1:D019だとすると、200ルーメンも嘘だし(50ルーメン)、240インチも嘘なので(120インチ)なにひとつ本当のことがない……。

*2:これをGREEN FUNDINGと提携しているEngadgetで言い切ってしまえるのは凄いですね。よく言えば風通しが良い。