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電ファミニコゲーマー、不審サイトの記事を掲載する(4ヶ月ぶり2回目)

先月に「今年のクソ業者の話は打ち止め」と書いた手前ちょっと迷ったのですが、備忘録も兼ねて前回よりはコンパクトにやります(こんな線路の置き石みたいな記事、多すぎても大きすぎても困る……)。

eps-r.hatenablog.com

この回の続きです。

目次:

電ファミ、またやった

先週12月8日、電ファミニコゲーマーに以下のような記事が載り、数時間で削除されました。下のリンクはInternet Archiveのキャッシュです。

web.archive.org

ゲーム関連商品の輸入販売などをおこなっているゲームガジェットは12月8日、英・Blaze Entertainment社が製造をしている携帯型レトロゲーム機「Evercade EXP」について、国内での予約を開始した。

価格は、お得価格が2万3800円(税込)、特急価格が2万9800円(税込)となっている。

削除の背景には上のように、twitter上での引用リツイートを含む幾つかの指摘があったとみられます。

Evercade EXP自体はBlaze社がカプコン等の許諾を得て正式に販売するハードですが、輸入業者とされる「ゲームガジェット」に問題があった格好になります。

君は「ゲームガジェット」を知っているか

この辺は特に前回の繰り返しになるので、ざっくり読み飛ばして構いません。

当blogではこのサイト「ゲームガジェット」について、全額前金で承った注文をバックレたり数年後に別機種を送り付けたりする異常な輸入業を20年ほど営む「松川政裕」、通称でVAIO松川(バイオ松川)の運営するサイトであると指摘してきました。

eps-r.hatenablog.com

当blogの上記記事では彼の20年来の過去の行動についてまとめています(カテゴリ: レッドスター(ヴェルテ)にも幾つか記事があります)。

上図の通り、現在でも「株式会社レッドスター」「株式会社シティ」「株式会社ゲッコー・アンド・カンパニー」「ヴェルテ(現在はェルテに改名)」「舶来ガジェット」「インディゴーゴージェーピー」など、評判のかく乱を狙うかのように、多くの社名や屋号が並行しているのが分かっています。

付け加えると、振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結の記録を持つ、警察と銀行の認めるところの詐欺であった(もしくは現在進行形で詐欺である)商法、あるいはそれに近いことが未だ行われている可能性のある現場でもあります。

取り上げることに躊躇は無いのか?

かようなリスクの潜んでいるゲームガジェットその他(以下「バイオ松川系業者」)ですが、メディアへ向けての送付文であるプレスリリースだけでも、かなり本質的な指摘はできるはずです。

  • 「非公式の並行輸入サイト=事実上の転売屋」を取り上げてしまうことの問題。技適も確認が必要(今回の場合はWi-Fi搭載機器の日本国内向け認証。たぶん通っていない)
  • 転売の中でもとりわけ、無在庫転売であることが容易に伺える商法を紹介してしまう消費者保護上の問題。前払いの銀行振込であり、納期や入手性についてきわめて独特の価値観を持つ業者への先払いは危険(詳しくは利用規約を参照)
  • 今年8月に載せてしまって後から修正したのと全く同じ商法に引っ掛かっている

私の見解としては、「性能も信頼性も無いしトラブルの際に金も返さないクソ業者です」とあらかじめ開示することで、詐欺と呼ばれるのをむしろ避ける自爆戦法を取っているのが現在のバイオ松川系業者であり、それは普通に読み取れるはずだ、と考えています*1

であれば、エンドユーザーならまだしもメディアに関しては、リライト対象のプレスリリースの内容をちゃんと読んでさえいれば、常識と良識によって不採用や追加問い合わせなどに傾くものではないでしょうか。しかも同じような体裁の文章を採用するのが約四半期ぶり2回目というのは何といいますか、うまくないと思います(今回もクレームが無かったら載ったままだったんだろうか?)。

ネタ選びよりもライティングの低質さが気になる

とはいえトピックの選定に関しては人間がやる以上致し方ない感もあります。私にとってはプレスリリース本文だけで法やモラルに抵触するものでも、人によってはそうでないと判断し、チェックの漏れることはあるでしょう。

むしろ今回はそれをリライトした記事本文の誤りが気になりました。本文さえマトモだったらわざわざ記事を起こさなかったかもしれません。

メーカー公式サイト(英語)によれば、本製品には『R-TYPE』などのアイレム作品を複数収録したカートリッジが1本付属するほか、以下のカプコンのタイトル全18本が内蔵されている。

『ストII ハイパーファイティング』『ロックマン』『ブレス オブ ファイア』などカプコンの名作18本を収録したレトロゲーム機「Evercade EXP」が予約開始

「メーカー公式サイト(英語)によれば」? 書くはずがないだろうそんなリストをメーカーの公式サイトが。

公式サイトの表記は正しく英語です。電ファミに載っている和訳タイトルリストは私の見る限り18本中13本が間違いという結構めちゃくちゃなもので、『コマンドー』は『戦場の狼』、『グールンゴースト』は『魔界村』、『1944: ループの達人』は『1944 THE LOOP MASTER』でしょう。カタカナと直訳によって謎めいたリストになっています。

記事タイトルに堂々挙がっていた『ストリートファイターII ハイパーファイティング』にしても、海外版なら『Street Fighter II’: Hyper Fighting(ストリートファイターIIダッシュ ハイパーファイティング)』、日本版なら『ストリートファイターII' TURBO(ダッシュターボ) - HYPER FIGHTING -』です。細かい違いですが、これが読みやすさを優先したわけではなく単に読んでも調べてもいなかったようにしか見えないのは、ゲームメディアとして情けなくはないでしょうか。

直してみましょう。

※8bit, 16bitは海外コンシューマ機(NES, SNES)と思われる

普通に公式サイトからコピペして補足を入れていけば、おおむね誰がやってもこのくらいの表記になりそうです。まだ間違いはあるかも知れませんが「普通」の基準には乗っていると思います。

この強烈なリストを元々誰が書いたのかといえば、元記事を下までスクロールしていただければ分かるようにプレスリリースからのコピペです*3。「メーカー公式サイト(英語)によれば」などというウソをつかずに「ゲームガジェットによれば」と言っていればほんのわずかマシだったかも知れません。

バイオ松川系業者のプレスリリースの間違いに関しては、直前の当blog記事でも扱ったように誤訳や誇大広告といったできごとには事欠かないので(盗用もよくある)、単に元タイトルに興味も敬意も無いと言って差し支えありません。たとえば今回のプレスリリースのタイトル「カプコン公式携帯レトロゲーム機『Evercade EXP』の予約受付開始」これ一つ取っても、「カプコン公式」の文言を強調することで並行輸入業者・転売屋である事実を覆い隠す詐術の一環でしょう。

まとめ雑記

「バイオ松川系業者はもはや名前の予備知識の問題ではない、内容を読めば常識で留保をつけられるはず」と特にここ1年くらいは思っていますが、まあメディア関係者に私のblogやTwitterが読まれるとは思っていませんし、私自身電ファミの問い合わせ窓口に直接ものを言ったことはないので、何かが変わったりするようなものでもありません。電ファミのリテラシーに関しては前回のindiegogo.jpの件での雑な記事修正を見て文句を付けるほどの価値を感じなくなるまでに失望しており(失敗よりもその立ち上がり方が最悪)、「今後の反省や対策をしっかりやる」という類のミスと思っていなさそうだな、と想像はしてしまいます。

今回は比較的「負の知名度」の高いサイトだったお陰かすぐに指摘が回り削除が為されましたが、それは周りの予備知識という外的要因が大きかったように思います。また記事のサイレントな削除以外のあらゆる表立ったアクションが無かったことは、indiegogo.jpの時に転載含め2万近くのリツイートが回ってから穴だらけのパッチを当てて良しとしていたのと併せて相当に心証は悪く、もしも「問題業者への言及部分さえ消せばいい」「でなきゃ記事ごと消せばいい」という気分での行いならば(重ねて穿った見方かも知れませんが)ただ残念です。

性能の低さを詐欺じみた商法に転嫁する最悪業者がゲームタイトルを間違えたところでそれ自体には今更疑問も怒りもありはしません。しかしその粗雑さが一大ゲームメディアの記事作成工程に伝染し、校閲を経てさえ世に出てしまうことには、うまく形容できませんが電ファミニコゲーマーというウェブサイトにまつわる「何か」の弱さや衰えを感じます。たとえプレスリリース転載のような埋め草記事でも、あるいはだからこそ感じるものがあります。

その衰えが例えば人手の不足なのか(件の記事は無記名ではあった。それが編集部員なのか外部委託なのかは不明だが)、記事選定の志向なのか、チェック機構の思想や性能なのか、あるいはメーカーへの敬意のようなアティテュードなのか、何に関係しているのかは外からは窺い知れませんし、衰えなどではなく本当に偶々起きた出来事なのかも知れません。

しかし窺い知れなさは、今後の不信や不安となって残ります。少なくとも今回の記事については、掲載に至った判断と取り下げに至った判断の両方を載せて着陸してほしかった(更に欲を言えば、引っ掛かった被害者として問題業者の掘り下げをしてほしかった)と思っています。

媒体資料(PDF)のように、アンテナと調査力を誇れるサイトであるといいですね。日々のニュースが、時折ある特集記事やロングインタビューから見え隠れする底力に正しく裏打ちされたものであってほしいです。

今年の当blogはどうも似たような暗い詐欺の話をしすぎました。来年はせめて超小型プロジェクターPIQOとか超薄型ノートCraob XみたいなVaporwareくらいにはひそやかに前向きな話をしていきましょう(前向きか?)。

*1:今年6月のメガドライブミニ2の際に似たような話をしました。

*2:英語表記はEvercade EXP公式サイトの原文ママ。『1943: The Battle of Midway』ではない

*3:更に元を辿ると無関係のガジェットレビューblogからのどうやら盗用であるらしいことが分かってきて頭が痛くなってくる。元blogが間違えるのはまだしも、労を惜しんでパクるゲームガジェットと電ファミはなんなの。パクられるのを予期して敢えての誤訳だとしたらダブルキルだ。