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頓挫したウルトラモバイルPC「PGS - Portable Gaming System」とPGS Labだいたい全記録

今年も宜しくお願い致します。

DDLC+こと『ドキドキ文芸部プラス!』良かったですね。コンシューマに移植するならこうせねばならんだろうという変更点と、そこから伸ばした思わぬストーリーライン(これ自体は自分のなかでも賛否あるが)、更に書き下ろしの外伝によって満足感が担保されていました。原作既読なので私からはどうしてもファンアイテムへの目線になってしまうものの、未読の人はここから始めてもよかろうと思います。

そして出てさえいればDDLCやDDLC+を遊べるハードだったかもしれないウルトラモバイルPC、5年以上前に発表され未だリリースに至っていないPortable Gaming SystemことPGSについての備忘録を残していきます。

目次:

PGS(Portable Gaming System)とは

PGSは、アメリカの企業Portable Solutions社(ただし拠点はロシア)が開発するとしてクラウドファンディングサイトKickstarterで一度集金したのをキャンセルし、自前の公式サイトで予約を受け付けていた "ポータブルゲーミング" PCです。

youtu.be

Nintendo DS + PSP go感のある、なかなかハッタリのきいた見た目。詳しいスペックは後述します。

PGSのWebサイトの立ち上げは公式サイトによれば2016年4月。初めて純粋なゲームコンソールとして設計されたWindowsマシン、と銘打ったプロジェクトはその後の7月にKickstarerに殴り込みをかけます(ただしWindows搭載の携帯ゲーム機としてはGPD WINの出資受付が2016年2月で、PGSの公表より早い)。

youtu.be

Kickstarterに貼られていた動画はアカウントから削除されてしまったのでミラーにします。なぜだかやたらとスリリングな雰囲気がしますね。


結論から言ってしまえばこのプロジェクトは記事タイトルの通り、どの出資者(購入者)に対しても何かが届くことはありませんでした。

彼らPGS Labの奇妙な4年間は以下のようになっており、

  • 2016年: Kickstarterに参入し、1ヶ月で撤退する
  • 2017年: ふざけたblogを連発したのち、夏頃に開発会社を変えて以来それまでよりは真剣な進捗報告を出すようになる
  • 2018年: 基板や外形プロトタイプの写真をアップロードするが、それらを最後にプロジェクトの更新が途絶える
    • ついでに代表者がブロックチェーン屋に鞍替えする
  • 2019年: Facebookのリプライ以外の活動が無くなる

その軌跡を追っていた人々のあいだでは「おおよそ詐欺だったのだろう」という評価に落ち着いているようです。

詳しく何が起こりどう奇妙だったのかを説明するには、私の筆力ではたいそう長くなってしまいました。お時間のある方の暇つぶしや「あれどういうことだったんだっけ」と思い出したい方のお役に立てればと思います。

宣言されたスペック

PGSには廉価版のPGS Liteと上位版のPGS Hardcoreという、ふたつのエディションがあります。

ここでは上位版として優先的に開発されていたPGS Hardcoreと、参考としてスペックや発表時期の近かったGPD WINを並べておきましょう。GPD WINに無い性能は太字にしています。

PGS Hardcore GPD WIN
価格 $320(Kickstarter版通常価格) $330(Indiegogo版通常価格)
ディスプレイ IPS液晶 5.7インチ 2560x1440 IPS液晶 5.5インチ 1280x720
CPU Intel Atom x7-Z8750(Cherry Trail) Intel Atom Z8750(Cherry Trail)
GPU Intel HD Graphics 600MHz 16cores Intel HD Graphics 600MHz 16cores
メモリ 8GB LPDDR3-1600 4GB LPDDR3-1600
OS Windows 10 / Android 6.0 Marshmallow Windows 10
ストレージ - 128GB SSD(接続形式不明)
- TFスロットの有無は不明
- 64GB SSD(eMMC)
- TF card slot(up to 128GB)
無線接続 802.11ac / Bluetooth 4.0 / LTE 802.11ac / Bluetooth 4.1
バッテリー Li-Po 6120mAh Li-Po 6900mAh
外形寸法 164.1 x 84 x 18mm 155 x 96 x 23.5mm
本体重量 320g 350g
その他要素 - USB 3.0(Type-C)
- microHDMI
- 5.0chスピーカー
- インカメラ・背面カメラ
- 4.5インチセカンダリディスプレイ
- ゲームパッド・アナログスティック
- 3.5mmヘッドセットジャック
- 交換可能なバッテリー
- USB 3.0(Type-A, Type-C)
- mini HDMI
- ゲームパッド・アナログスティック
- QWERTYキーボード
- 3.5mmヘッドセットジャック
ストレッチゴール - キーバックライト搭載
- 本体カラーバリエーション追加
- GPUオーバークロック
- ゲーム最適化ツールの開発
- セカンダリディスプレイのカラーE-Ink化
- 電話機能をWindows 10側に統合
- 防水機構の搭載
- ワイヤレス充電機能

歴史的補足として、当時のIntelの戦略によって安価にバラまかれていたタブレット向け5ワット級SoCのAtomは世代を重ねるごとに目立つ強化を重ねており、特に第3世代Bay TrailでのCPU・GPU性能のジャンプアップと、第4世代Cherry TrailのGPU性能の向上は、中国メーカーの商売心にもフィットし、$100台~$400あたりのいわゆる「中華Windowsタブレット」を大量に生み出すことになります。

当時「Androidタブレットにコントローラを付けたようなゲーム機」を作っていた中国のGamePad Digital(後のGPD)社も、Atomプロセッサを格安に調達できる流れに乗って「Windowsタブレットにコントローラを付けたようなゲーム機」であるGPD WINの開発を始めており、PGSも同じような流れと言えるでしょう(作る気があったにせよなかったにせよ)。

PGSとGPD WINとの大きな違いは、PGSがキーボードの代わりに「下画面」……セカンダリディスプレイを備えることと、クラムシェルではなくスライドとチルトを組み合わせたWillcom D4のような可動機構であるらしいこと、また折り畳み時に全画面になるのを活かしたAndroidとのデュアルブートあたりが象徴的です。

ストレッチゴール:

  • キーバックライト搭載
  • 本体カラーバリエーション追加
  • GPUオーバークロック
  • ゲーム最適化ツールの開発
  • セカンダリディスプレイのカラーE-Ink化
  • 電話機能をWindows 10側に統合
  • 防水機構の搭載
  • ワイヤレス充電機能

そして何よりワイヤレス充電やE-Inkディスプレイや防水など数々の「超機能」も見逃せません。One more thingどころの騒ぎではない。

ポケットサイズに思いつくばかりの要素を詰め込んだWindowsマシンが、なんとたったの$320で手に入るとは、まさに夢のような機械だと思いませんか。GPD WINとほぼ横並び、PS Vitaの3Gモデル($299)とも1割程度しか違わないのです。

PGS苦難の道のり

夢のようなマシンも出荷されなければ夢のままであり、Vaporware(ベーパーウェア、出す出す詐欺)に過ぎません……とは、昔Dragonfly Futurefonの経過の時にも書きました(思えば、あれも不当に安い可動デュアルスクリーン・デュアルOSのVaporwareだった)。

2016年7月2日: Kickstarterで出資受付を開始、多くのストレッチゴールを達成する

上記のようなスペックで発進し、初日で目標額の10万ドルを突破(とはいえ目標額が低すぎる)。キーバックライト・カラバリ・GPUオーバークロック・ゲーム最適化ツール・カラーE-Inkディスプレイと、この時点で華々しいストレッチゴールを得ます。

数日で30万ドルあまりを集めたPGSでしたが、この時点で多くの課題や開発項目が残っていたのが分かっています。

  • 下画面に仮想キーボードやタッチパッドを表示するアプリケーションの開発(Update#13
  • Windows 10用のモダンな通話機能の提供(Update#2
  • GPUをオーバークロック状態で出荷する(Update#6。「既にIntelの協力を得ている」とするUpdate#5も参考)
  • 1回以上のプロトタイプ製作(FAQ
    • ストレッチゴール次第で大幅に変化する基板(PCB)設計~プロトタイプ製作~量産試作検討
    • 書かれていない(意図的に軽視されている?)が外装を含むアセンブリとして、ゲームパッドやスライダー機構・電源・冷却・無線など、PCB以外に試作検討せねばならないハードウェア要素は無数にある

(Portable Console for PC games - PGS (Canceled) by PGS LAB — Kickstarter)

ロードマップでも、プリプロダクション(試作)は集金が完了してからとされていますね。

しかしこの図の過去部分に記載されている「EARLY PROTOTYPE」の実体はMicrosoft Surface 3の基板を引っぺがして張りぼてに載せたもの、その後提示された実動プロトタイプも小型ファンレスデスクトップVoyo V3の基板を引っぺがして張りぼてに載せたものと言われています(実際Update#14でもこの2機種のメインボードで冷却をテストしたと言われている)。いくらプロトタイプにしても、これではハードウェア設計の知見がどこまであるのか嫌でも心配になってきます。


技術的な見積もりの怪しさは他にも見て取れ、たとえばKickstarter用宣伝動画に上がっている「ゲームをしながら動画鑑賞ができる」のくだりは……当時のAtomで可能なのか?

いくらコンセプトムービーとはいえ『Need For Speed: Most Wanted(2012版)』を30fps以上で動かしながらSD画質の動画を再生できるかどうかは甚だ疑問です。経験上Atom(Cherry Trail)はXbox360世代の3Dゲームを扱うには全体的にパワー不足で、GPD WINで試した限りでは地球防衛軍4.1が常時20fps弱、片道勇者+Portalすら60fpsに達しない始末でした。快適さのレンジがシングルタスクでも狭いハードです、マルチタスクの快適さは更に狭まるでしょう。


英語圏では幾つかの界隈で盛り上がっていたようで、

  • 本当にIntelに渡りをつけてGPUオーバークロッキングの協力を得られるのか? 排熱の厳しいハンドヘルド機で、オーバークロックの効果は高いのか?
  • そもそもGPU冷却検証の動画(のちに削除)はフェイクじゃないか?
  • CEOの経歴は(なぜか経営者でも技術者でもなく)3DCGデザイナーだから、お奇麗な3DCGモックや動画は作れるだろうし、というか宣伝に現れている代表者や中核スタッフはどうやら俳優じゃないのか?

などの指摘が相次いでいました。この時点の記事だとDubious PGS handheld gaming PC concept raises over $300 thousand on Kickstarter - Liliputingがよくまとまっています。

youtu.be

もっと直接的に「詐欺だろ」と指摘するyoutube動画も出ていた(なんか「マフィアの娘が雇われてる」とか言ってるな……)。


Kickstarterプロジェクトページのコメント欄も早いうちから荒れ模様に陥るなか、同人携帯ゲーム機OpenPandoraを苦難の末に完成・出荷させた偉人のひとりEvilDragon(Michael Mrozek)は以下のような、ハードウェアベンチャーとしての実感のこもったコメントを残しています(以下抄訳)。

私はこのプロジェクトを詐欺とは呼びたくありませんが、しかし「見積もりの甘さで頓挫しそうなプロジェクト」かどうか警戒するのは、悪いことではありません。

私の見立てでは、PCBの動作プロトタイプの完了までには少なくとも30万ドルと1年は要するでしょう。そしてケースの金型作成には5万~8万ドル、多層PCBの1回の成型に6週間、それらのテストは複数回……そして生産には1回あたり2万ドルずつかかる。

それにしては投資額も目標額も安すぎる(数十億個の供給を前提にしたiPhoneより安い)ので……信じたくはないが詐欺か、見積もりが甘すぎるか、パトロンが居てKickstarterをそもそも必要としていないか、ではないでしょうか。

Michael Mrozek(OpenPandora GmbH) 2016年7月8日 07:46 UTC +09:00

Michaelのコメントに代表されるように、やはりこれだけ多くの課題を抱えながら1台あたりわずか300ドル前後、しかも実質的な開発開始から半年で量産まで持っていけるわけがない、というのがおおよその見方でした。


コメント欄に対応するように、プロジェクトページのFAQが更新されます。

Q - GPD WINチームはIndiegogoのキャンペーン終了直後に、動くプロトタイプを公表してきました。PGSは初日に動くデバイスを公表すべきだったのでは?

A - この手のナンセンスな質問はよく届きます。まず、あくまでGPD社はキャンペーンが「終わった後」にプロトタイプを公表しました。そして私たちはGPD社とは関係ありません。私たちの製品には私たちなりのやり方があります。

Q - PGSを買おうと思わせるなら、PGSチームは可能な限り最終版に近いプロトタイプか最終版そのものを見せる必要があるのでは?

A - Kickstarterは世界的なクラウドファンディングプラットフォームの雄ですが、ショップではないことを思い出してほしい。我々はここでPGSを販売しているのではなく、開発のサポートへの出資を募っています。最終版は報酬として出資者に送られます。

追加された2つの架空のやり取りは、プロジェクトの実現可能性に対する論点そらし、スットボケであり、白昼夢的な仕様を誰がまとめてダンピングじみた市場価格で作れるのかという疑問への答えには、あまりなっていません(一応FAQには「生産ラインと初回出荷に責任を持つ投資家(investors)が居る」とも書いてあるが……)。

ただでさえ目標仕様に対する集金額の少なさを言われている中で、Kickstarter外の公式blogで「インディーゲーム開発者に15,000ドルを贈呈します! あなたのゲームをPGSにプリインストールしましょう。ご連絡はこちら」のような謎の募集をかけていたのも奇行でした。こういうことをするから怪しさが増します。

余談ですが、日本での盛り上がりとしてはあまり観測しておらず、2ch(当時)b00t's noteb00k!: PGSが成功しないと思う理由など懐疑的なネットユーザーがいたり、CNET JapanRBB TodayGizmodo Japanのような一部メディアに紹介されていたり、山師ヴェルテが出来てもいないうちから輸入を発表していたくらいでしょうか。

2016年7月16日: 「我々は攻撃を受けている」宣言

集金開始から2週間後。Kickstarterで発表されたアップデートは人々を驚かせました。この文章は本当にすごいので是非原文を読んでください。ここには私がざっくりと訳し強調したものを引用します。

Update#18 - 親愛なる支援者、気をつけて。我々は攻撃を受けています!

我々のプロジェクトとWebページはこの数日間、スパマーの熾烈な攻撃を受けています。

彼らの狙いは以下のものであり、

  • 私たちの評判を落とす
  • 支援者を混乱させる
  • 支援者を我々のプロジェクトから離脱させ、彼らの開発する製品に誘導する

その最大の目標が、我々のキャンペーンの妨害であるのは明らかです。

彼らはスパムを延々と送りつけようとしています。このメッセージにもきっと口汚いコメントが付くことでしょう。

皆さんを我々から引き離すための重要な「論点」として言われているのは「プロトタイプの非存在」ですが、しかし、我々は開始当初からプロトタイプへのリンクをキャンペーンページに載せています。キャンペーンの終了までには新たなプロトタイプも登場する予定です。

我々のキャンペーンを必死に中傷しようとする人たち(=競合他社)に言いたいのは、お前達の労力や手段は妨害工作ではなくまともな製品、我々に対抗できるような製品のために使え! ということです。お前らのプロジェクトが哀れなのは確定的に明らか。真実を見なさい。

次回のアップデートでは製作と投資のパートナーについてお伝えします。

お付き合いいただきありがとうございました。あなたを失望させることは決してありません! ;)

Update#18 - Dear backer, be careful, we are under attack!

この文面でアイキャッチが人民解放軍なことも含めて、「競合他社」にしたい対象は深圳のGPD社ですよね。あかんやろこれ。Kickstarterでこんな暴れた人を私は他に知りません(なお次のアップデートは出資者向けのボタンレイアウトのアンケート、その次はPGSは遠隔ゲーミングにも最適という能書きで、パートナーの話は特になかった気がします)。

プロトタイプの有無に固執していたのが追及者でなくPGS側だったのは明白です。実際の論点は先述の通り実現性の見通しであって、無茶苦茶言うからにはせめて「しっかりとした」プロトタイプの一つか、それに代わる「まともな」ロードマップか何かがあるのか?と問われていただけです。

www.youtube.com

在ると主張しているプロトタイプは他のUMPCの基板を流用した「アーリープロトタイプ」であり、特に開発力・技術力を裏付けるものではないのだから何も解決していないと見なされ、PGSプロジェクトは更に追い込まれることになります。

一方その頃、競合他社と目されていたGPD WINは動作検討プロトタイプ(ワーキングプロトタイプ)の検証を終わらせており、量産向けプロトタイプとされる工程に居ました。調達するCPUがZ8500, Z8550, Z8700, Z8750のいずれになるか、冷却は金属筐体にするか外付けファンにするか内蔵ファンにするか……と詰めの仕様を二転三転させている最中でしたが、すでに最終製品と遜色ない見た目の外装と、そこでゲームの実動する動画がアップロードされていたはずです。

2016年7月24日: さらばKickstarter、PGS堂々退場す

「攻撃」宣言から約1週間後。出資受付期間の満了である7月31日を待たずに、PGSはKickstarter上でのプロジェクトをキャンセルするに至ります。

しかし「我々は去る。だがさよならは言わない」と言っている通り、彼らはKickstarterこそ撤退し引き落としをキャンセルするものの、自社Webサイトでの直接受注によって戦い続ける道を選びました。

  • 我々はKickstarterで多くの人に知られることができ、改めてPGSが素晴らしいものであるという確信を得た。多くの人々によるコミュニティも得がたいものだ。
  • しかし進歩を妨げる悪意のある人々によって、多くの人は「PGSは偽物で、詐欺なのではないか?」という不安にさらされ、一部のメディアまでがそれを信じようとしている。
  • 我々はこのまま金を受け取って詐欺の誹りを受けるよりも、あえてKickstarterをキャンセルすることで潔白を証明する。
  • 投資家とも相談し、PGSの開発は続けることが決まった。
  • ストレッチゴールの心配はない。予定されたストレッチゴールは防水以外すべて実装される。
    • なんならHardcore版には振動、NFC、IrDA、FMラジオも付ける。
  • 完成後はショップに卸す。市場価格は$360程度の予定だが、自社Webサイトでの直販予約を$299で受け付ける。
  • 共に未来を創ろう。

Update#21 - We are leaving but we don't say Goodbye

当時PGSの動向をチェックしておられた記事では先にも軽く触れたb00t's noteb00k!: PGSは(悪い意味で)終わってないがあり、ここでも指摘されている通り、本当に詐欺でないならば遠慮せずに金を受け取って開発をさっさと完了させればいいし、潔白を証明するためにKickstarterを降りたならば自社サイトでの怪しい集金なんて論外でしょう。

ここで別サイトIndiegogoの話になりますが、1億円超えのIndiegogoプロジェクトが頓挫。全額返金は不可能 | Robot Dragonfly | Kickstarter fan!といった記事によれば、この手のクラウドファンディングプラットフォームでも、ゴール後即座に集金額のすべてが付与されるわけではなく、進捗に応じて必要と判断されただけの額が渡ることがあるようです。この情報を踏まえたとき、PGSの直接受注への切り替えという行動には、厳しい進捗管理や仲介手数料などの面倒な壁が無くなり、即座に100%の集金が可能になるというメリットが想像できます。

この時点でのKickstarterからの撤退は、「詐欺らしさ」の色合いを濃くする行動と評価せざるを得ません。

2016年7月~12月: 仕様をこねて遊んでいた年

PGSのKickstarter撤退から2016年の末までの5ヶ月間。「まともな製品を作れ」「お前らの製品は哀れ」と罵倒されたGPD WINは11月頃に無事出荷が開始されました*1

叱ったほうのPGSはというと、公式サイトでほとんど遊んでいたのではないかと思うほど能天気なblog更新を繰り返します。

またラフに要約していきましょう。

  • 8月22日:
    • 今後は月一くらいのペースで進捗報告をしていきます。生産までの費用を持ってくれる投資家との話は既についている。製造メーカーやIntelとの交渉も進めてる。割引クーポンもよろしくね。
  • 8月25日:
    • カラバリの黒が人気になってきたので画像をアップします。インスタも見てね。
  • 9月3日:
    • PGS Liteはセカンドスクリーンをやめて物理キーボードでもいいでしょうか? 投票を参考にします。
  • 9月10日:
    • L3・R3ボタンを側面に置くか背面に置くか? 投票してください。
  • 9月22日:
    • トラックパッドが16方向に押下できてタッチセンサも付いてたらSteam Controllerを超えられるんじゃないか? 更にマグネットでノーマルボタンやメガドラボタンとも交換できたらいいと思う。普通の十字キーやボタンとどっちがいいか投票してください。
  • 9月30日:
    • 来月から本格的な設計にかかるので、ハードウェアの仕様は固めないといけない。L3R3はHardcoreでは背面にレイアウトし、Liteではスティック押し込みに割り当てる(※なんで?)。Liteのセカンダリディスプレイは廃止し物理キーボードにする。
  • 10月9日:
    • 「ゲームがどれくらい動くのか知りたい」という皆さんの要望に応え、Z8750/4GBデュアルチャネルRAM/UFS/アクティブ冷却のテスト機を用意した。リクエストをくれればGoogleスプレッドシートに追記していきます(スプレッドシートはリンク切れ)。
  • 10月24日:
    • PS2・GC・PSPなどのエミュレーションをしている動画を紹介します(動画削除済)。
  • 11月1日:
    • 最近は毎年同じようなCoDかカジュアルゲーばっかでつまらんわ。皆PS4で出るクラシックな名作のリメイクをやりましょう*2。PGSはPS4・Xbox One・PCのストリーミングでゲームを遊べます。
  • 11月24日:
    • ブラックフライデーなので割引クーポン再配布するよ。$50引き、ほぼ原価です。
  • 12月30日日本語版): 長大な今年のまとめ。
    • Kickstarterを脱退後、我々のサイトで80万ドルを集めることに成功した。我々を信じてくれてありがとう。
    • 大幅な仕様変更。
      • ボディサイズは小さく、メインディスプレイは5.9インチに拡げた(ユーザー要望を受け解像度はWQHD→FHDに縮小)。セカンダリディスプレイは3.2インチに縮小。
      • 「チルト・スライダー」をやめ、シザーが立ち上がって画面を支える形(VAIO Duoに近い)にした。
      • スライド時に画面が浮き上がることでスティックを伸縮格納式にせずともよくなった。
      • スピーカー穴はエアダクトを兼ねる。
      • microSIMカードスロットはmicrosdスロットを兼ねる。
      • 3.5mmオーディオジャックは廃止、USB-Cアダプタを同梱する。
      • アクティブクーラーは15Wまでを問題なく冷却可能。
    • 最大の変更。Windows/Androidのデュアルブートは大衆受けしないので止める。
      • Win/Androidは同時に動かしたり片方止めたりできる。トグルボタン一発で切り替える。
      • このためHardcore版には10コアARM CPUが追加される。
      • 両OSは一部コンポーネントを排他でなく共有する。Windowsの動作中にAndroidが着信音を鳴らすこともできるだろう。
    • これらの変更によりPGSのマーケッティング的位置付けが変更される。
      • PGSはスマートフォン、ポータブルゲーム機、ポータブルPC、メディアセンターらの特徴を兼ね備える汎用PCとして打ち出していく。これは旧来のPCタワーを置き換えられる、いわばスマートフォンの機能的かつ汎用的な進化の形であり、より多くの潜在的ユーザーのメインガジェットとして希求するものである。
    • リリースは2017第1四半期から2017第2四半期へと延期します。
      • 理由は上記の大幅な仕様変更と、ある法的問題で投資財団が降りることになったせい。
      • 自社の株は取り戻し、他の出資者と交渉している。プレオーダーの金には手を付けない予定。
    • プレオーダー価格を$299から$319へ変更する。リリース時の予価は$360から$379となる。

ここまでが2016年。年末にいきなり多くの仕様変更が押し寄せてきます。やっぱり投票サイトが楽しくなっちゃって遊んでたんじゃないのか。

Kickstarterに掲載した本来のロードマップなら出資期間終了直後の8月時点で試作(Pre-production)に移り、12月にはとっくにテスト工程に入っているはずでしたが、実際には9月になっても「トラックパッドが16方向に押下できてタッチセンサも付いてたらSteam Controllerを超えるんじゃないか? 普通のパッドとどっちがいい?」と投票をやっていたわけです。来年前半には量産するつもりのUMPCの入力装置、しかもかなり高度な開発の必要そうな部分をなぜ9月に投票で決めようとしているのか?

その年末にしても、美麗なCGが更新され、輪をかけて夢のような仕様が提示されたこと以外の具体的なものは特に上がってきません。

いや、スティックの物理的干渉を上図のシザー式変形とでも言うような仕組みで解決するのは後年F(x)tec Pro1でも見られたソリューションなので、外形だけは説得力が増したと思ったのですが、しかし本当に作る気があるなら絶対にやっているであろう3Dプリントによる検討などといったものが全くアップロードされないあたり、ユーザーの求めるものを分かっているやら、いないやら。

そして本当に悪い夢みたいな話がWindows/Android同時起動で、当初Kickstarterで「Androidとの同時起動はしません。デュアルブートです」と断言した時には欠片ほどの正気と説得力を感じていたのですが(Update#2)、自社受注になって怖いものが無くなったのかこれが行われてしまい、更に異常な方向へと突き進み始めました。

WindowsとモバイルOSが異なるCPUによって同じマシンの上で共存し、同じハードウェアを使いまわす、そんな馬鹿なことを考えて本当にリリースする意地を通したのはほとんど富士通の携帯電話F-07Cだけです。べつに台湾や中国の開発・製造者にだってやってやれないことはないと思いますが、しかしその影響が最終価格への$20の上乗せと四半期の延期だけですと言われたら単純にウソでしょ。

結論、年末にあたって「やっています」というポーズと延期の言い訳をしてみせたようには、どうしても見えてしまいます。

2017年1月~7月: 開発拠点との別れ

2017年の春夏といえば、前年末頃に出荷された初代GPD WINが日本の販路でもそこそこ出回ってきた頃です。PGSは何をしていたでしょうか。

  • 1月31日日本語版):
    • あけましておめでとうございます。ある台湾の製造パートナー、そして新たな出資者と契約した。公式Webサイトも最新の仕様に合わせたし、今年は新たな出発の年になるでしょう。
  • 3月7日日本語版):
    • 皆さんは我々がどこでどうやって働いてるか気にしているらしい。
    • 我々は都会の喧騒を離れロシアで最先端の仕事を進めています。
    • そして開発製造の拠点は中国の深圳です。F-07Cより2年も前の2009年に、真のFull WindowsスマートフォンXpPhoneに関わっていた開発者がPGSには携わっています*3
  • 3月20日日本語版):
    • 先行情報を公開するパスワード制サイトPGS Valutを開設*4し、また公式Webとblogに日本語バージョンを用意した*5
  • 4月9日日本語版):
    • 新エディションPGS Titaniumを用意します。PGS Hardcoreの外装をチタニウム合金に変更したプレミアム仕様。
  • 4月23日日本語版):
    • 公式Webサイトに "Games" セクションを追加し*6、ここでPGS向けのパッチや設定を、開発者の協力が得られしだい共有していく。PGSはスマートフォンとミニPCの要素を併せ持つ斬新な端末だが、あくまでゲーム機であることを我々は忘れていない。
  • 7月11日日本語版): 長大な半期まとめ。成功よりも失敗の多い半年間であった。
    • 開発会社との別れ、新たなパートナー探し
      • XpPhoneおよびXpPhone 2の開発者に対し我々は裁判を起こすことにした。彼らにはプロ意識が無かった。得た金でこちらの仕事をせずに自分のプロダクトに注力する詐欺師だ。
      • 次の開発パートナーを探すため日本に使者を送ったが、Intelチップに精通したメーカーは(富士通など僅かな例外を除き)存在しなかった。
      • 台湾のメーカーからはことごとく「期間内に実現させるにはリスクが高すぎる」として断られた。
      • 中国に戻ってパートナーを探した。香港の展示会(Intel HK Fair*7)ではIntelのパートナーとしては唯一のスピーカーとして壇上にも立った。バッテリー、液晶パネルなどサプライヤーとの予備契約を結んだ。しかし中国のメーカーからは「完成した品を持ってくればコピーしてやる」とすげない回答であった。
      • それでも最終的には中国でも最大クラスのモバイルODM企業と契約できた。6月中旬から本格的な開発に戻っている。
    • 心機一転
      • XpPhoneを開発していた詐欺師どもの成果物はほぼ無く、開発はゼロからの再スタートである。
      • 我々は諦めるつもりはないし、PGSをただのゲーミングネットブックにおとしめることもしない。我々は2つのOSで駆動するゲーミングデバイスのフォームファクタに関して広範かつ数多くの特許を持つ唯一の企業だ。業界の未来が我らの製品にあることを証明してみせる。*8
      • 年内にはジャーナリストに向けてテスト用ユニットを送付したい。製品化は2018の第1四半期を予定している。これが初めての延期報告ではないことを含め、私たちは本当に申し訳ないと思っています(※これ申し訳ないときに貼るような画像か?)。
    • 仕様変更。
      • 発売から1年半の経ったAtom Z8750に代わってPentium N4200を検討したがサイズが不適合なため、やっぱりそのままにした。このため仕様変更は軽微に収まる。
      • ディスプレイサイズはメイン6.0インチ、セカンダリ3.3インチに変更される。下画面の解像度は800x480に精細化される。また、残念ながらAndroidでは下画面は機能しない。
      • Android側のSoCをMediatek Helio X20からMediatek MT8785に変更する。性能的には些細な変化だ。また、各国のLTE仕様に対応するため仕様を欧米(Western)・欧州・アジアの3パターンに分ける。
      • 再度寸法が若干変化する(170mm x 89.5mm x 18.5mm)。
      • WindowsとAndroidのために1つずつ独立したスピーカーを用意する。ボリュームボタンとUSB I/Fも別々に生やし、Android用USBはゴムキャップに隠す。電源とOS切り替えボタンを兼用していたのは分離する。
      • コストの都合があるためWindows用ROMは128GBから64GBに削減する。
      • その他の変更も追ってお知らせします。
    • 今後のこと
      • 予約注文の額は160万ドルを超えた。当初は大々的なプロモーションを打って生産数を増やし利益を上げるつもりだったが、予約金を生産の運転資金に使い、PGSを緩やかに市場に浸透させることにした。これはリスク軽減の策であり、利益を上げることよりも安定性を重視する選択だ。
      • 2度目の延期をしたことについて大変申し訳ございませんでした(※謝るときに貼る画像か?)。
      • E3には出展予定だった。物を出せないと分かってからも謝罪のためにブースに居ようと思っていたが、デベロッパーが変わったゴタゴタで満足な説明資料を揃えきれず、結局断念した。
      • 利用規約を変更し、いつの注文でも全額の返金リクエストを受け付けられるようにした。
      • もうデタラメはしません(No more bullshit)。開発製造に関する確かな情報をお届けします。

PGSが何をしていたかと言えば、なんと新しい開発会社を探していました。彼らの言うすべてが本当ならば成り行きには同情しないでもないですが、競合他社をスパマー呼ばわりした後は仕事相手を詐欺師(スカマー)呼ばわりするのか。こいついつも噛みついてんな。

最悪から数えて何番目かの妄想として、たとえば2016年の晩秋までまだ夢みたいな仕様をこね回して遊んでいたPGS Labが、丸投げにしていた深圳デベロッパーから問い合わせを受けて渋々詳細仕様を詰めたときに、後出しで「デュアルブートではなく同時起動にしよう!」と言い出してデベロッパーを激怒させ、喧嘩別れした……というストーリーを思いついても仕方ないくらいには、この時点ですでに信用はなかったと思います。

この頃の開発会社との物別れのゴタゴタと、怪気炎を上げるPGS Labの様子はImpress PC Watchにも取り上げられました(後述するLOG#1の内容を含んでいます)。

pc.watch.impress.co.jp

PC Watchらしいポジティブな味付けの記事ですが、しかし先に挙げたように、運転資金への態度に陰りが見え始め、前年「予約金に手を付けることはない」としていたのが「予約金は初回生産に充当する」とアナウンスされているのはやや不安要素ではないかと思います。予約金を使うのはおかしくないが、「安定のため」として前言を翻す姿勢は、それ自体が足腰の定まらなさではないか。


本題となる技術仕様の変更は、軽微と言っていますが結局なかなかの大改造ですね。Androidを動かすMediaTekのSoCをHelio X20からMT8785へグレードダウン、LTE仕様をリージョン毎に分割するという。

WindowsとAndroidのために1つずつ独立したスピーカーを用意する。ボリュームボタンとUSB I/Fも別々に生やし、Android用USBはゴムキャップに隠す。電源とOS切り替えボタンを兼用していたのは分離する。

このあたりのスピーカーやUSBの分化などといった点は、2種OSの同時起動という狂った前提にさえ目をつぶれば、実現性を見据えての理にかなった変更ではないでしょうか。前提がそもそもおかしいんだけど。

ただ、2016年末には「あらゆる要素に妥協はしない」としていたのが徐々にダサい方向に向かっているのは明らかですし、128GBのストレージを64GBに削るような判断が働く中で未だにカラーE-InkだのIrDAだのNFCだのワイヤレス充電だのの要素が生きているらしいのは、心配になってきます。

2017年「LOG#1」: 心機一転の年

PGSは新たな開発会社を迎え、2017年の後半戦を開始します。

これ以降の活動報告は数ヶ月に一度、日記のような形式にまとめてアップロードされていました。

  • LOG#1(8月16日付)日本語版): これからは短報をまとめ、近況をお伝えします。
  • 6月2日:
    • 中国側との契約の準備を進める。
  • 6月3日:
    • 中国側と開発スケジュールで合意。
  • 6月5日:
    • 評価検討の結果、中国側はN4200でなくZ8750の採用を主張している。
  • 6月6日:
    • PGS Labは中国の大手ODMマニュファクチュアおよびデベロッパーのHengxiang Century Technologyと契約を締結した。
  • 6月7日:
    • セカンダリディスプレイに必要なIPSパネルの生産が停止している。中国側はHVGA解像度に下げることを主張したが、却下。
  • 6月9日:
    • 文書に些細な変更。中国側もそれに署名した。
  • 6月22日:
    • 中国側からOTGコンポーネントや輸出用規制に関する議題(issues)が上がってくる。端末に差せるSIMは1枚に決める。
    • LTEチップや内部アンテナレイアウトの議題。
    • OS間のPOWER SWITCHの動作原理について中国側へ共有。
  • 6月23日:
    • 定義書(Definition Sheet of the document)について交渉。
  • 6月24日:
    • 複雑なコンポーネントを実装するための初期の議論に基づき、中国からデバイス管理コンポーネントの初期版が提示される。
  • 6月26日:
    • 中国側へ3Dレイアウトと基本的な内部パーツレイアウトを共有。
  • 6月29日:
    • 中国側から初期デザインスキームを受領。技術的・視覚的な欠点を中国側へ返答。
  • 6月30日:
    • 中国側が「Windowsは同時に2つのタッチスクリーンをサポートしていない」と言ってきたが、ドライバレベルで解決できるとの結論に至る。
    • SIMカードとメモリーカードスロットを同位置に収めるのが難しいとエンジニアに言われたので分離することになった。
  • 7月3日:
    • レイアウトの修正で開発者とやり取り。寸法は165.5 x 86.5 x 18.5mmとなりわずかに大型化する。
    • パートナーが現行のセカンダリディスプレイに最適な液晶を見つけてくれた。
    • 開発者から2回目の初期設計が提示される。問題点を指摘。
  • 7月4日:
    • 開発者から3回目の初期設計が来る。我々が冷却システムについて話している最中に4回目の初期設計案が送られてきた。
  • 7月5日:
    • 5回目の初期設計を見せてもらう。審議中。
  • 7月6日:
    • 6回目の初期設計が届く。議論の過程で視覚的な変更が幾つか生まれる。
    • 中国人は更にデバイスを大きくしろと言う。170 x 89.5 x 18.5mm。
    • 大型化に伴って良いスピーカーが使える。中国のAACという企業を選択している。
  • 7月7日:
    • 7回目の初期設計が届く。まもなく多くの修正が加えられた第8版が到着。
  • 7月13日:
    • 中国のパートナーから、PCB請負業者に関するいくつかの問題を報告される。彼らはIntelのロシア事務所の介入を求めている。我々は苦い経験からパートナーとなる中国企業の監査を行っており、今のところ問題は特定されていない。
  • 7月14日:
    • 中国側は、請負業者との契約解除に備えて別の業者も検討しているという。
  • 7月15日:
    • 別の業者との検討時に、セカンダリディスプレイのタッチパネルをリプレースする(注: 外すか部材を変える?)提案が行われたそうだ。却下する。
  • 7月18日:
    • 新しい業者として検討されていたPCB企業は、PGSの製造を「複雑すぎる」として拒否した。彼らは "開発" ではなく既存製品の安価なクローンを作りたいのだ。
  • 7月20日:
    • もともとの請負業者が中国側との共通言語を見つけ、仕事に戻った。
  • 7月21日:
    • 中国側がAndroidのSoCを弱いMTKからHelio X20に戻そうと提案してきた。良いニュースだ。
    • 下面のカバーは金属素材にすることが決まっている。
  • 7月24日:
    • 中国側は「請負業者の仕事は現在レイアウトの段階にある」と伝えてきた。
    • 我々は遅延に不満がある。時間の遅れは明確に特定したい。中国側は4週間の遅れを報告し、今後のステージで巻き返すと約束してきた。
  • 8月1日:
    • 中国側からMediaTekの構造と機能を研究していると伝えられる。ARMレイアウトの作成はすぐではなく、今月中旬までに開始するとのことだ。
    • これはHelio X20の経験者が中国側に居ないことを示しているが、Z8750とX20を両方経験したチームなど居ないし、ハードウェア仕様は単一のチームで決めなければならない。経過を待つ。
  • 8月4日:
    • PCBレイアウトの開発チームから、更新されたスケジュールが届く。

主な登場人物はこんなところでしょうか。

  • 「我々」PGS Lab
  • 「中国側パートナー」「開発者」として、ODM企業Hengxiang Century Technology
  • 「製造業者」「請負業者」として、匿名のPCB(基板)あるいはPBCA(部品実装済基板)の製造業者

製造業者との契約をすったもんだの中で進めつつも、デバイスを大型化させたがるデベロッパーの初期設計案にリテイクを出し続けるのが印象的なLOG#1となりました。少なくとも「やってる感」はかつてないほど出始めているのではないでしょうか。本当に今まで何をしていたのか。

2017年「LOG#2」: デュアルOSを断念する夏

このまま2017年ぶんのPGS LOGを載せていきます。これは8月から9月にかけての約1ヶ月分。

  • LOG#2(文書の日付は9月4日だが、9月12日まで更新がある)日本語版):
  • 8月7日:
    • 中国側から部品構造を記述したファイルの新バージョンが送られてくる。
  • 8月8日:
    • 補助ディスプレイに合ったマトリクスの製造業者が見つかる。十分な寸法と解像度(800x480)を満たしている。
  • 8月10日:
    • 中国側の請負業者から、AndroidのLTEのサポートする規格を選ぶよう依頼される。Xiaomi Redmi Proに合わせるのはどうか。グローバル版ではLTEの1 2 3 4 5 7 8 20 26 28 34 39 40 41に対応している。
  • 8月13日:
    • 中国側からアナログスティックの要求仕様を求められる。我々のデバイスに最も重要な部分のひとつなので、Nintendo Switchのスティックのサプライヤーに連絡を取るよう提案する。また高品質な振動を任天堂に提供している製造業者(ALPS)の情報を共有した。
  • 8月23日:
    • 中国でPCBA(基板)を開発している請負業者は、OSを切り替えるスイッチの実現に難航している。
  • 8月28日:
    • PCBA業者が、異なるPCBA間でOSを切り替える方法を東芝に尋ねている。対応する東芝の部品はWindows同士の切り替えしかできないという。我々からは「AndroidをMIPIで接続し、WindowsをHDMIで接続してみるのはどうか」と提案。
  • 9月2日:
    • 中国側はOSのアクティブな切り替えの問題を解決できない。これは契約条項への違反である。
    • 我々はどうプロジェクトを進めるべきかという難しい問題に直面している。我々の後続の製品は、モバイル機器に高度に精通したエンジニアのチームによってのみ行われるべきだ。であればこそ(例えばまだ見ぬPGS PROのような)製品の仕様を充足できる。
    • 異なるPCB間のディスプレイ表示を切り替えるコントローラの作成は難しい仕事ではないが、しかし残念ながら中国のすべてのスマートフォンODMというのは、チップ・コレクターであり、シンプルなスマートフォンのテンプレート・データベースでしかない。どんなにシンプルなものでも、彼らには、独自の何かを作るというのは不可能な仕事なのだ(そう、我々は中国で、Intelチップの経験をもつ全ての業者にコンタクトしてきた)。
    • 採用したODMでは実現できないことが分かったので、モバイル部分は使わず「世界最高の携帯ゲーム機」という原点に立ち返る。デバイスのスペースが空いた分、Z8750をより生産性の高いチップに置き換えることに注力する。
  • 9月4日:
    • 中国側にZ8750に替えてCore m3-7Y30や7Y32を提案する。中国側でIntelの中国担当と話してもらったところ、エネルギーと熱拡散が高すぎるのでAtomを推奨されているらしい。
    • 中国のIntel担当者は自分で売っている物を知らないんだろうか? 5WのZ8750に対して7Y30のTDPは4.5Wだし、電圧もサイズも似ている(※後述)。付け加えれば我々のアクティブクーラーは15Wまで放熱できる。やはりCore Mを使っていきたい。
  • 9月5日:
    • コンポーネントを第7世代Core Mを前提に再設計してもらうよう中国のパートナーに依頼。
  • 9月9日:
    • 中国の請負業者に、このシリーズのプロセッサ(同系列のm3-7Y54)を扱った経験があるのが確認された。
  • 9月12日:
    • 第7世代Core M SoCを詳細に分析した結果、このインテグレーションがかなり些細(トリビアル)な理由で不可能であることが判明した。我々が使おうとしているディスプレイはMIPI接続だが、Core m3は比較的大型のディスプレイで使われるeDPインターフェースしかサポートしていない。
    • かわりに使うべきはPentium N4200(Apollo Lake)との結論に達した。N4200のゲーミングパフォーマンスはN8750を70~80%上回っている。

……というわけで、PGS Labは中華ODMを思うさま罵倒しつつもWindowsマシンに戻る選択をしました。同時起動を諦めてデュアルブートに戻るのではなく、更に舵を切って単一のWindowsマシンになるという。

Windows/Android同時起動という狂気のアイデアをODMに打診してから3ヶ月程度で捨てたのは、LOG上では凄まじく悔しそうで「画面の切り替え機構ひとつ作れんのか」と怒り狂っているわけですが、しかし、どう考えてもやめて正解でした。はじめからこんな無茶を言い出してなければもっと良かったんだが。プロダクトが仮に詐欺でなく彼らのblogが事実であるならば、これを企業立ち上げ一発目のデバイスとして、半年以内で作れとデベロッパーに要求するのは素人目にも無茶が過ぎます。

こう仕様で縮小に縮小を重ねていると、もはやセカンダリディスプレイがカラーE-Inkだったことなども忘れられていそうな勢いですが(普通にIPS液晶探してるよね)、多分忘れなければ完成しません。当初の下画面はカラーE-InkとIPSを購入者に選ばせる方式でしたが、はっきりいって余計な工数でしょう。

とりあえずはユーザーに明るい要素としてはKaby lake Core MまたはApollo Lake Pentiumプロセッサの採用でしょうか。完成は間違いなく遠ざかったはずですが、2018年リリース見込みのゲーム機で今更Atom Z8750なんか出されても誰も欲しがらないのは確かです。

中国のIntel担当者は自分で売っている物を知らないんだろうか? 5WのZ8750に対して7Y30のTDPは4.5Wだし、電圧もサイズも似ている

一点、Intelの営業をバカにしている点は補足しておきます(PGS Labは仕事相手をバカにしないと気が済まないのか?)。

Intel ArkのAtom Z8750のページによればScenario Design Power(SDP)は2W、ただしこれは70℃程度をターゲットにした「実使用時を目安とした設計電力」とされ、普通のプロセッサのように90℃前後で動作した際の消費電力としては、たとえばPassMarkでは4Wを採用しています。

同様にIntel ArkのCore m3-7Y30のページを確認すると、Thermal Design Power(TDP)としては4.5Wとしていますが、これはあくまで「ベース周波数時を目安とした設計電力」です。昨今のCPUはAtomもCore mも含めて、ヒマな時にダウンクロック、忙しい時にオーバークロックを繰り返すような動作をしており(AtomのSDPはこの中間をあらわすものと言える)、7Y30のTDPも実際にはConfigurable TDP……「排熱が追いつく限り入力してよい電力」の表示のほうが今回見たい実態に近いものです。よって、ここで見るべきTDPはconfigurable-TDP upの7Wになります。

PassMarkがAtom Z8750のTypical TDPを4Wと言っていようが、これを5Wと見積もるのは直感的にはそこそこ妥当なのですが、とはいえCore m3-7Y30のTDP(cTDP)はそこから更に4割ほど上乗せした「排熱が追いつく限り7W」です(SDPといいcTDPといい、このふらふらした「定格」概念自体はどうかと思いますが……)。Intelの担当者が実在するならば自分で売っている物を知っていますし、ロクにテストもしていないであろう排熱機構を自慢しているPGS Labは、滑稽でさえあるでしょう。

普通のハンドヘルドPCを動かす分にはベース周波数で回してエコに済ませる選択もあるかもしれませんが、彼らが作っていると自負しているのはゲームマシンです。実際にこのあとレイアウトの終盤になるにつれてCPU・GPUの最大負荷時の熱と向き合って苦慮を続けており、「Atomが5WでCore mが4.5Wなんだから余裕でしょ!」という姿勢には、後からの評価であることを差し引いても「この期に及んでまだ舐めている」「見積もりが甘すぎる」と言わざるを得ません。

2017年「LOG#3」: チップの探求を続け、GPDの影に惑う秋

続けていきましょう。9月から11月にかけてのLOGです。

  • LOG#3(2017年11月22日付)日本語版):
  • 9月15日:
    • パートナーは新しいPCBA業者(※結局変わった! 後述)と連絡を続け、最終的な寸法とバッテリーについて議論を重ねている。新しい製造サイクルを見積もる。
  • 9月20日:
    • メーカーから「画面解像度800x480ではWindows 10の最低動作要件を満たしていないのでは」と指摘を受ける。メインディスプレイは1920x1080、セカンダリディスプレイが800x480なので問題はない。
    • Apollo platform(原文ママ)のカメラサポートは5MPだ。13MPのカメラを予定していたがスマートフォン部分は削除されたので、Skypeなどビデオ通話に用いる5MPのインカメラで十分だろう。
    • パートナーから「4時間ゲームをするのに6000mAhバッテリーでは足りないのでは」と提案を受ける。スマートフォン部分が削除されたことで消費電力は下がるはずだし、空いたスペースでバッテリーを7000mAhに大型化できないか、と確認する。
  • 9月22日:
    • 中国のパートナーから価格決定のために、メモリとストレージについて最終確認を受ける。8GB DDR4 RAMと128GB内蔵ストレージと回答*9
  • 9月27日:
    • PCBAの請負業者から3Dスキームのファイルを受け取る。幾つか修正が必要だ。アクティブ冷却システムは見えないが、SIMカードスロットが2つ見える! 業者は謝罪し修正を約束した。
  • 9月30日:
    • 中国人はおそらく世界のどこの国よりも公休を多く取る人々だ。国民の休日により開発プロセスは1週間中断する。おめでとう!(※Google Driveリンク切れ。中国の皆さんをお祝いする画像)
  • 10月10日:
    • 中国のパートナーから良くない知らせ。新しいPCBA業者はPCBAの予定日を2018年3月と言ってきている。これではデバイスの完成は2018年の半ばになる。
    • 中国の友人たちには「このような時間的失敗は許されない」と話し、契約条項に基づき法的措置を取る旨、脅しをかけた*10。プロジェクトには危機管理が導入され、すべての進捗は我々PGS Labの直接のコントロール下にある。製造パートナーとすべての請負業者の代表者と毎日連絡を取り合い、開発の各ステップは我々の決めたスケジュールを遵守している。
    • 我々は新たな出発点を設定し、開発の高速化を図っている。これは以下のような経緯による。
      • 中国のパートナーの言い分としては……PCBAの請負業者は、AndroidとWindowsという異なるプロセッサアーキテクチャからなる独立した2つのシステムと、他のコンポーネントとの相互作用に完全に行き詰まっていた。その行き詰まりを悟り、PCBAの開発のためには契約を破棄して他の請負業者を探さねばならなかったというものだ。
      • 残念ながら中国にはこの複雑なPCBAを作れる企業は存在しない*11。我々はプロジェクトを円滑に進めるため、デバイスからスマートフォン機能を削除することにしたのは先にお伝えした通りだ。
      • 現在は新しいPCBA請負業者と共に、スマートフォン機能の無い(かわりにCPUをPentium N4200に更新した)デバイスの開発を進めている。
    • というわけで、来年4月に最初のテストサンプルを入手できる見込み。
  • 10月15日:
    • 新しいPCBA請負業者には日単位のスケジュールを最初に提出させる。請負業者はスケジュールと疑問点の明確化のために1週間を要した。
  • 10月22日:
    • コミュニティのXemone氏から「Toshiba TC358860XBG Analogix や ANX7580 * Solomon Systech Ltd. SSD2861 のようなeDP-MIPIブリッジを使えばeDP経由で小型のディスプレイが使えるのでは」と助言をいただく。これならCore m3-7Y30プロセッサを利用できる。
    • 中国側エンジニアの研究によればそれは可能のようだが、Windowsがドライバをロードするまでの30秒ほどは黒画面のままになってしまう欠点も見つかった。保留としておく。
  • 10月23日:
    • 中国の仲間がPSP-2000のスティックを見つけたことで、デバイスのアナログスティックについて質問してきた。彼らは中国のサプライヤーとは品質管理の問題を抱えている。我々は日本のメーカーに注目している。
    • 7Y30はN4200より$45高額で、またより高度なアクティブ冷却システムを必要とするらしい。まだ使うチップを決め切ってはいないが……。
    • 内蔵メモリ(internal memory)を128GBにした場合のコスト上昇やサプライヤーとのトラブルの可能性について警告を受ける。もし問題になるようなら64GBにしてもいいが、それはそれとしてRAMについては2chの最大周波数で駆動せねばならない。
    • チップの温度範囲やGPS・GLONASSを必要とするかの質問を受ける。デバイスは安くしたいので却下する。
    • 開発者に「USB CにはThunderboltの技術を使ってほしい」と依頼。外部ビデオカードを接続できる必要がある。
  • 10月24日:
    • GPD WIN 2が開発されているという情報を入手する。彼らも7Y30を使うらしい。中国に情報を送りパートナーに確実性を調べてもらう。パートナーにはしっかりとVPNアクセスを教える必要がある―― YouTubeとかね :)
    • 最新の仕様書を受領(※Google Driveリンク切れ)。
    • Androidの失敗によって出来たスペースを削り、デバイスのサイズは小さく、バッテリー容量は大きくなるよう修正を続けている。CPUには7Y75(※i7-7Y75)または7Y30を考えているが、難しい場合はN4200にする。
  • 10月25日:
    • エンジニアから新たな回答。
      • MIPIインターフェースを備えていない7Y75や7Y30では上下2枚の画面ともにHDMIで繋ぐ必要があり、最初のローディング時に1分ほど両画面は真っ黒になる。これはMIPIを持っているN4200では問題はない。東芝製のMIPI-DSIブリッジアダプタを使う場合、調査に時間がかかり開発が遅れる可能性がある。
      • 外部ビデオカードのためにThunderboltを追加する場合、PCBA上にThunderboltチップのための領域ができ、通常利用ではHDMIの2チャンネルをディスプレイに使う。7Y75や7Y30チップでは追加のオプションとして、独立したUSB-CポートやThunderboltカスタムポートの増設を試行できる。
    • 誤った判断が、技術的リスクに繋がることは理解している。
    • デバイスに照度センサー、加速度センサー、ジャイロセンサーを追加する。
  • 10月26日:
    • 中国のパートナーにアナログスティックのサプライヤーを推薦する。日本の製造業者は開発に関わるデータを秘匿することが多い。Nintendo Switchのスティックの製造業者を我々は突き止められなかったが、コミュニティには知ってる人がいるかも……?
    • 開発者にHORIへのコンタクトを勧めた。ゲーム機アクセサリーやゲームパッドを作っている中では日本で最大の製造業者だ。彼らの品質は世界市場で証明されており、我々のデバイスに向けてカスタムされたスティックを作れるだろう。
    • 使うチップの最終決定をする。
      • 我々はZ8750・N4200・7Y30でテストを行い、設定の柔軟性が高くゲームにより向いているのは7Y30と結論付けた。デバイスの一部の機能の実装には大きな困難が立ちはだかっているが、最高のゲーム機のためには最高のモバイルx86 CPUが必要だ。
      • 中国には7Y30で指令を下した(7Y30・7Y32・7Y75のコストを確認したが7Y75は$200もするので使えない)。これが我々の最終決定だ。スマートフォン機能はキャンセルされ、リリースを延期もした、だがパワフルなチップを皆様にお届けする!
  • 10月27日:
    • 最終仕様の変更(Final specification change ※Google Driveリンク切れ)。
    • 東芝のMIPI-DSIブリッジについて、相談できる東芝のエンジニアは香港に一人しかいないという。我々はこの素晴らしいチームで夢の製品を作り続けてゆく(※どうした急に)。
  • 10月28日:
    • パートナーに詳細スケジュールを要求する。全製造行程を書き込んだガントチャートの例をこちらから送る(※Google Driveリンク切れ)。
    • 確認依頼を受領。
      • 外部GPUのためには独立した接続ポートが必要
      • USB Cは外部ディスプレイ接続をサポートしていない
      • Windowsシステムのロード完了まで、しばらくメインディスプレイは黒画面になる
  • 10月30日:
    • 大きな懸念は、外部ディスプレイや外部GPUを接続できる本格的なUSB Cポートを実装できないかもしれないことだ。
      • 我々からパートナーへ質問――仮にセカンダリディスプレイ(下画面)を撤去するなどしてCPUのディスプレイ接続インターフェースを解放してやれば、画面出力を含む完全なUSB Cポートを作れるか?
      • 回答――セカンダリディスプレイを撤去しても、外部GPUへの接続には独立したポートが必要。したがってディスプレイは撤去しない(セカンダリディスプレイは我々のデバイスの特殊なフィーチャーだ)。
    • より具体的な例を付けて質問し直す――Core M 7Y30を搭載するWindowsタブレットには、1つのUSB Cポートで外部ディスプレイ・外部GPU・データ転送のオールインワンの機能を持つものがある。なぜ私たちにはそれができない?
  • 11月2日:
    • エンジニアの回答――7Y30は画像出力インターフェースとしてEDP・DP・HDMIの3つを持つ。デバイス側にはMIPIディスプレイが2枚あるので変換でDPとHDMIが塞がり、EDPだけがフリーになる。ThunderboltはDPとHDMIを使うが、画面出力や外部GPU接続のためのプロセッサ・インタフェースが不足している。外部GPUのための唯一の解決は、USB Cポートを増設することである。
    • 充電とデータ転送に1ポート、外部GPU接続用の1ポートの計2ポートのUSB Cの実装を決める。
  • 11月3日:
    • 中国のパートナーに、新しいPCBA請負業者との契約書のコピーと、スマートフォン機能の削除に伴うBOM価格の再計算を求める。
  • 11月6日:
    • 新しい仕様書と、PCBA請負業者の契約書のコピー(※Google Driveリンク切れ)を入手。
    • 中国のパートナーからアナログスティックのおすすめを聞かれる。我々としてはNintendo SwitchのJoy-Conと同じものを使いたい。Joy-Conを分解してみたが内部も任天堂のラベルだけで、製造業者の手がかりは無かった。GPD Winのスティックを作った業者に訊いたところ、このスティックは高品質だがL3, R3押し込みの機能が無いとのことだった。業者にはより良いモデルか、カスタマイズオプションがあるかもしれない。

だいたい以下のような流れでしょうか。

  • PCBAの請負業者は、Androidのキャンセルと同時にクビになった(この絡みでスケジュールにさらなる遅延が生じたが、脅すことで最小限に抑えた)
  • Atom Z8750でスタートしたCPUは、Pentium N4200を経てCore m3-7Y30に最終決定。内外のディスプレイ接続ですったもんだする
  • メモリがDDR3 8GBからDDR4 8GBになり、いっとき64GBとしていたストレージは(おそらくAndroidのキャンセルを充当する形で)128GBに戻る

引き続き「やってる感」のあるレポートです。このころリーク情報の出ていたGPD WIN 2は結果的に奇しくも同じm3-7Y30を採用することになるのですが、「よし、中国業者にはVPNを使わせよう」と漏洩対策を始めるのはジョークのつもりにしても色々な意味であまり笑えないですね。

2017年「LOG#4」: 基板とモジュールのレイアウトの年末

製造業者を罵倒したり替えたり脅したりの2017年も終わりが近づいてきました。この頃はボタンや冷却システム、そしてそれらを収める基板レイアウトに注力しています。

  • LOG#4(2018年2月2日付)日本語版):
    • Dear friends, 引き続きデバイスの製造に関するレポートをお届けします。
  • 11月10日:
    • 中国の友人に、アナログスティック製造業者(ALPS)と生産協力の条件について交渉するよう促す。
  • 11月14日:
    • 中国の友人は必要な部材をケースに収められないといい、177 x 96 x 21.5mmに拡大することを提案してくる。彼らは既製品の100 x 45 x 5mmのバッテリーを2つ配置するつもりだ。
    • デバイスの現行の3Dレイアウトを要求した。小型化が必要なことと、我々がクーラーを必要としていることを彼らも思い出したと思う。中国側は30 x 30 x 40mmのクーラーを予定していると答え、3Dレイアウトの送付を約束した。我々のバージョンの冷却システムも送る。
  • 11月15日:
    • 中国側から2つのパーツで構成された3Dモデルが送られてきた(圧縮ファイル1, 圧縮ファイル2 ※DLは自己責任で)。
    • 中国のパートナーがアルプス電気の代表と話し合ったが、アルプスにはL3R3のようなプッシュボタンと複合したスティックは無い。カスタムスティックの発注には1ヶ月以上の期間と数十万台のオーダー、高額の開発費を要するため我々には難しい。
    • アルプスは既存のオプションを案内してくれたので「他の解決が見つからなかったら検討する」と答えた。
    • 中国側の3Dモデルには内部空間が30%もの隙間がある。このように整理できるはずと指摘した。
  • 11月17日:
    • 中国側からALPSアナログスティックの技術資料が幾つか届いたので、我々に合うものを選べるようになった。
    • 中国のパートナーにiPegaにも問い合わせるよう促した。iPegaは自社でスティックを生産しておらず仲介業者から仕入れているとしたが、その業者のことは教えてもらえなかった。
  • 11月18日:
    • デバイスを小さくするための戦いが続く。中国側はGPD Winを引き合いに出して23.5mmまで厚くしたいという。
    • 我々の回答――GPD Winのデザインとレイアウトは成功例からは程遠い。我々はもっと良くあるべきだ。23.5mmならモダンなラップトップPCのほうが薄い。厚さは21.5mmが限度だ。それに縦横の幅を大きくすればディスプレイも大きくせねばならなくなる。
  • 11月21日:
    • 小型化の検討。小さい2枚のPCBをブリッジで接続するのはどうか。
    • 中国側は小さくするどころか「7インチ 720pディスプレイ」を提案してきた。冗談じゃない、今は2017年だ。
    • 我々の要求する筐体サイズは160mm x 80 x 21mmです、と回答する。契約書にサインしたのはあんたたちだ。ソリューションを探してくれ……例えばカスタムバッテリーとか。
  • 11月22日:
    • 我々のPCBを2枚使ってサイズを縮小する案を中国のパートナーに送信。中国側の言い分では、7Y30プラットフォームがPCB上に60 x 40mmの面積を要求し、かつメモリモジュールを背面に配置できないのが大型化の原因だという。
    • 小型化の方法は考えてもらいたい。これは携帯機器であり、機能を犠牲にせず小さく保たなければならない。
  • 11月23日:
    • 端末を小さくできないのは、中国側が既製品のバッテリーにこだわるからだ。今は2本で合計6000mAhのバッテリーにしているが、異なるサイズ・容量のバッテリーをフレキシブルに配置することはできるはずだ(例えばiPhone)。我々は深圳のほとんどの業者が1万ユニットからの発注でカスタマイズバッテリーを作ってくれることを知っている。
    • PCBを1ピースあたり4700平方mmで2分割したい。タブレットのPCBの写真を添付するが(※Google Driveリンク切れ)、部品配置に必要な面積は6600平方mm、2ピースで9300平方mmを稼げば大きく余裕がある。このようなモデルを考えている。
    • 中国側には上記の情報を共有したほか、Nintendo Switchのスティックの特許を保有しているのが日本の企業ホシデンであることがわかった。我々のスティックに使える手掛かりになるかもしれない。
  • 11月24日:
    • 中国の技術者からPCBについての回答が来る。7Y30とDDR*2メモリを配置するためには42 x 38mmの面積が必要だという(画像1, 画像2)。
    • また、我々はスライド機構のためのスペースを確保しなければならない。今までPCBの部材のレイアウトに機能的なニーズは考慮されていなかった。中国側には注意を払ってレイアウトしてもらうよう依頼した。PCBひいてはデバイスはできるだけ小さくしたい。
    • 中国パートナーからRAMの数の確認。2GB x 4と4GB x 2ならば面積の小さい後者だ。
  • 11月27日:
    • 宣材更新のために中国側に最終的な筐体サイズを確認する。172 x 91.5 x 21.5mmで作成された予備的な外観レンダリングを受け取る。この端末サイズで枠が大きいのはダサいので対角6.8インチのディスプレイを提案する。新しい3Dモデルを開発者から受領(LOG#4はリンクがしばしばGoogle Driveフォルダになっていてファイルの特定ができない)。
    • ホシデンの中国の担当者と会談。まず必要な台数を聞かれた。次にSwitchのスティックは任天堂のODMなのでそのまま売れるか分からない、日本の本社に確認するとのこと。そして3つ目、アナログスティックのODM生産には半年以上の期間と100万ドルのコストが掛かるという。
  • 11月29日:
    • 3Dレイアウトの見直し。
    • スマートフォン部分を取り除いたので、ボイススピーカーと背面カメラは必要ない。
    • 内部空間の誤った使い方により不必要にデバイスが大きくなっている。
    • ディスプレイサイズの間違い。6.8インチにしないと不要な額縁ができる。
    • 余剰の内部空間は金属製ラジエーターのために使われるべきだ。現在のクーラーとラジエーターは小さすぎて5Wを排熱できるか不安がある。我々は最大で9Wの冷却を必要と考えている。中国の技術者は大型のリブ付きラジエーターを真剣に検討すべきだ。他のポータブルPCゲーム機はその過熱したボディで多くの人を笑わせた。彼らの二の轍は踏めない。
  • 12月4日:
    • 製造業者から追加質問。
      • 5MPのフロントカメラを入れると筐体が1mm厚くなるが許容範囲か?
      • フロントカメラにフラッシュは必要か?
      • 6.8インチディスプレイは大きすぎる。6.5インチなら調達可能。
    • 我々の回答。
      • ノー。720pで充分なので小さいモジュールを探して。
      • ノー。照度センサは要るがフラッシュは要らない。
      • このデバイスには6.5インチでは小さすぎる。6.7インチは無いか?
  • 12月7日:
    • Nintendo Switchのアナログスティックを作っているホシデンの日本の事務所から連絡を受ける。まず2万5千ユニット買いたいと伝えた。満足すれば初回生産向けに20万ユニット発注したい。彼らの製品の品質は世界市場が証明している。
    • 中国のパートナーから新しい3Dレイアウトが送られてくる。
      • USBポートとR1が近すぎる。ボタンを小さくしてはいけない。
      • 提案された冷却システムで9Wに耐えるか疑問。再度分析してほしい。最大負荷時にスロットリングしてはいけない。
      • 魅力的な外観というのは非常に重要だ。
  • 12月10日:
    • 中国側からディスプレイの問題が上がる。6.44インチディスプレイは珍しく、数が少ないという。こちらから6.5インチか6.6インチを依頼(6.6インチ画面としてはHonor Note 8、6.8だとAsus Zenfone 3 Ultra、Lenovo Phab Plusあたりがある)。
    • 規格外サイズのディスプレイは特定メーカー向けのODMであって、大量に調達するのは難しいのだろう。我々に合った、広く普及していて調達しやすいソリューションを探しているようだ。
  • 12月12日:
    • 開発者がデバイスの内部構造に準拠した3Dモデルの製作・調整に着手した。
  • 12月16日:
    • 競合他社がGPD Win 2の最終仕様をアップロードした。我らが同僚にも可能な限り急ぐよう頼んでいる。主な技術的問題は解決し、これからは素早く処理できると開発者は請け負っている。
  • 12月17日:
    • 製造業者からの新しい質問――「フロントカメラモジュールの大きさが合わない(画像1, 画像2, 画像3)」。そして以前と同じ展開、「デバイスを少しだけ厚くできないでしょうか?」答えはNOだ!
    • 別の解決として中国側は筐体上部裏側のカメラ周辺を少しだけ厚くすることを提案してきた。これなら外観に影響はない。
    • 次の質問は我々を混乱させた――「側面のこれらのボタンは何のためにあるか?」L1, L2, R1, R2ボタンは多くのゲーム機に当たり前に存在する。技術資料を読んでほしい。
    • 我々から逆質問――「L3, R3ボタンの機能を満たすアナログスティックは見つかったか?」中国側はL3, R3ボタンはどこにあるべきか、そもそもL3, R3ボタンは何かを知らないという(奇妙な答えだ)。スティックを押下する機能のことだと説明を送り(画像1, 画像2)、このようなスティックを見つけてくるか、L2, L3の付近にボタンをレイアウトするしかないと主張しておく。
    • なお全てのボタンはWindowsモードとゲームモードで振る舞いを変える。WindowsモードではL1, R1ボタンがマウスボタンとして動作し、アナログスティックでマウスカーソルを操作する。ゲームモードでは標準的なXInputコントローラとして動く。
  • 12月19日:
    • デバイス本体の3Dモデルの初版が開発者から来たので、調整を要望していく。
      • ゲームに適したボタン配置とは、デバイスを持ったときに指の下に自然にボタンが来るものだ。今は不適なように見える()。
      • サイドボタンの配置誤り()。
      • 電源ボタンが中央にレイアウトされている。誤ったバリアントだ(
      • ディスプレイの枠が広すぎて時代遅れに見える(現在モダンデバイスの例)。
      • 空気穴の配置がおかしい(
      • USBポートの高さがおかしい。最下部の中央にあるべき。
      • 底面に冷却に必要な通風孔がない()。
  • 12月25日:
    • 中国のパートナーが冷却システムの承認を求めて3Dモデルを送ってきた(画像1, 画像2, Google Driveフォルダ※どれが冷却3Dモデルにあたるか判然としない)。パートナーには「あなたたちのエンジニアはこれで9Wの熱を奪えるか、ちゃんと計算したか?」と質問。
  • 12月28日:
    • 今日は皆さんに左モードと右モードについて説明します(ボタンレイアウトの画像 ※SELECT, STARTの下にMODEボタンが配置されている)。
    • レフトモードボタンはセカンダリディスプレイのオン・オフを行います。ライトモードボタンはボタンコントロールをWindowsとゲームで切り替える機能を持ちます。
    • 各ボタンはそれぞれのモードでさまざまな機能を持ちます(※Google Driveフォルダへのリンクが貼られているが、上記画像以外に「モード」を説明するものがない)
  • 12月29日:
    • 開発者から「スロットリングを回避する」として送られてきたバージョンは、単に動作周波数を下げる機能だった。ゲーム機としてそれは受け入れられない。パフォーマンスを維持するには高負荷時の温度は70℃を超えてはならない。
    • 中国のエンジニアは「現行の30 x 30mmクーラーは5W程度の熱を放出できる見込みで、9~10Wに対応するには60 x 60mmのクーラーが必要だがスペースが足りない」という。そして「ゲームとはデバイスのパフォーマンスを最大に利用するのか?」と聞いてきた。
    • 最近のゲームは7Y30チップのCPUを70~100%、GPUを100%ロードする。冷却の為に筐体を大きくするのは許容できないが、空きスペース全体をラジエーターに活用できるはずだ。デバイスの過熱を防ぐ冷却システムの構想を説明する。
    • つまり、クーラーとラジエーターと空気孔で構成された冷却システムだ(画像1, 画像2 補記*12)。クーラーの孔から外気を取り込み、もうひとつの孔から暖気を排出する。例えばNVIDIA Shield Portableのように(画像1, 画像2, 画像3)。更に筐体下面を金属パーツにするのも放熱の助けになるかもしれない。
    • 中国のエンジニアは単に30 x 30mmのクーラーを2連に並べることを提案している。これで9Wの排熱は処理できるという。
  • (2018年2月2日、文末の挨拶)遅ればせながら、あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願い致します。私たちから、最もユニークで最もハイテクなポータブルPCゲーム機という「ギフト」を用意しています。

この頃からアップロード者がPGS所属(当時)のAlexander Arzhのアカウントに変わったと思われ、Google Driveのリンク切れが大幅に緩和されます。以前の担当者はどこかのタイミングでファイルかアカウントを消したようです。

根底としての仕様は既に確定しているので、終始入力装置や外装、冷却機構などレイアウトに苦心する年末となりました。

いや、根底としての仕様が確定してから基板を1枚から2枚にしろとか言い出すのは大丈夫なのか? と思っちゃうけど……。

「もうデタラメは言わない」と宣言しただけのことはあり、2017年後半についてはいかにもそれらしい資料や写真が立て続けにアップロードされ、ストーリーとしては結構な真実味が出てきたように見えます。しかしいくら開発会社を替えたとはいえ、当初の生産開始予定の2017年1月を1年ほどぶっちぎった頃に今更ALPSやホシデンとコンタクトしてスティックを探しているのは2016年内に設計完了する気があったのかと言いたくなりますし、最初からこのレベルのレポートを出せていたらOpenPandoraの人に疑われたりKickstarterを出ていったりすることもひょっとしたら無かったんじゃないでしょうか。

先にも軽く書きましたが、もしかしたら2016年は下請の「XpPhone開発者」とやらに見積もりから設計から全部を丸投げしていたのが、彼らと物別れになった2017年後半から何かプロジェクトを正常化させるような出来事があり、リキを入れて設計を監視したり口出ししたりするようになった……ということなのかもしれません(これだと売価が意味不明なほど安すぎたことにもある程度は説明がつく)。

なお文中で言及された通り、GPD社はちょうどこの頃、GPD WINの発売から1年の間をおいて第2世代機GPD WIN 2を正式に発表しています。

2018年「LOG#5」: モックアップを手にする3月

前回(2018年2月)のLOGから2ヶ月後の4月15日、更なる設計作業の進捗として追加のLOGがアップロードされます。

  • LOG#5(4月15日付)日本語版):
    • Dear friends, 引き続きデバイスの製造に関するレポートをお届けします(※LOG#4のコピペ)。
  • 2月1日(1月1日の誤字とみられる):
    • 中国のパートナーにはアナログスティックの対応を急いでもらう。iPegaの香港の連絡先を教えた。彼らが押し込み機能つきスティックを見つけられなければ、デバイス本体にL3R3を実装する必要がある。
  • 2月5日(1月5日の誤字とみられる):
    • 製造業者に最初のプロトタイプはどのくらい出来ているかを尋ねる。冷却システムを二つ並べることには成功した模様(※またリンク先を誤ってGoogle Driveフォルダへのリンクになっている。画像1画像2?)新しい冷却システムを備えた最初のプロトタイプの3Dモデルを明日には出すとのこと。
  • 1月7日:
    • 新しいファイルの編集を始める。このデザイナーのこさえる分厚く角張った形は本当に好きになれない。暫定版であることを願う。
    • 契約上は今頃は99%完成していなければならないはずだ。製作プロセス(production process)加速のためにはあらゆる努力をすべきなのだと思い出してもらう。
    • エンジニアはL3, R3ボタンをフロントに配置するよう提案してきた……どうやら彼らはゲームパッドというものを手に持ったことがないらしい。
  • 1月8日:
    • 引き続きL3R3問題。中国側からの提案に対しL1, L2, R1, R2の横を指示するが、その辺りには新しく空気の排出口がレイアウトされる*13からボタンは増やせないという。空気孔を他にずらしてでも、どうしてもここにL3, R3を作ってもらうよう指示。我々が作っているのは電卓ではなくゲーム機だ。
    • 当初よりサイズが大きくなっているのだからヘッドホンジャックも再度実装してくれと伝える。
    • 最後のステップが近い。L3R3のレイアウトと、外観デザインを待つ。
  • 1月12日:
    • L3, R3のボタン面積はできるだけ大きく、内部モジュールはできるだけ小さく取るよう伝える。中国エンジニアから希望通り1列にボタンを並べられたと3Dモデルが届き(例によってGoogle Driveフォルダへのリンク。PGS-0127-STP.rarか?)、承認する。
  • 1月16日:
    • 生産の遅れとスケジュールの数限りない遅延についての不満を中国パートナーに伝える。普通の専門家なら数時間で済ますような3Dモデルの調整に数日かかるのは疑問だ。既存の人員ではスピードを確保できないようなので、もっと多くの専門家を回してもらえないかと提案する。
    • すべてのステップで我々の合意を求めるのは確かに素晴らしいことだが、製作プロセスは常に遅れている。細かい技術的判断は彼ら自身で行いスピードアップを図ってほしい。
    • 最後に提出された内部設計のファイルに合意する。だが契約外の変更が無断で行われた場合にはこの限りではない。
    • 中国の従業員に対して我々の求めるものを正確に理解してもらえるよう、彼らの言語で詳しい説明を書いた*14
  • 1月23日:
    • 中国側からデバイスの外観オプションを含むファイルが送られてくる(画像1画像2画像3画像4*15)。すぐにスピーカーが手で覆われてしまうことに気付く。側面中央に移動させるよう指示。
    • 外観にも幾つかコメントはあるが内部構造に関係ないので追って送付する。我々が承認次第、すぐに作業を再開できることを期待する。
  • 1月25日:
    • 6.4インチディスプレイのサプライヤーが1社しかなく、将来的な供給リスクがあると中国側が言ってきた。代わりがなければ同じものを使う、と回答しておくが、サプライヤーとの取引は製造業者としての責任だ。大量供給に際するリスクがあるならこの線は捨てたほうがいいが、あくまで最終的には彼らで判断することだ。
    • 中国のエンジニアは6.0インチを提案してきた。市場に数が多く、大量生産も問題ない。また6.4インチ用の保護ガラスは見つけられない可能性があるという。
    • 6.0インチでは小さすぎると主張しておく。入れたいディスプレイの対角インチは6.7・6.6・6.5・6.4・6.3のいずれかだ(例えばUhans Max 2、Xiaomi Mi Max 2、Doogee Y6 Max、Lenovo Phab 2 Plus、Ramos Mos1 Max、Ampe A605、iOcean G7、ZTE Nubia X6、Sony Xperia Z Ultraなど)。どうしても6.0インチを入れるのであればディスプレイを大きく見せるため、一回り大きいガラスで覆うことを提案する。
    • 中国側はディスプレイ用ガラスの大手サプライヤーTIANMA社とコンタクトし、提供できるのが6.4インチのみと聞き出していた。他のサイズは大量生産を発注する顧客のためのオプションだという。
    • 6.4インチディスプレイをいくつ用意できるのかをセラーに質問したところ、初回は2万台、ただし今すぐ予約して3ヶ月後の納品とのことだった。生産時期と必要数量が確定次第6.4インチを注文すると回答。それまではテストサンプルを頂いてサンプルを作ることができる。
  • 1月29日:
    • 中国のパートナーにスピーカーを中央に移動できたかどうかと、テスト用サンプルの進捗を尋ねる。デバイスの再構成によりスピーカーを移動できたという(画像1, 画像2 *16)。
    • 最終確認に承認すると、中国側はモックアップの作成を始めた。
  • 2月5日:
    • 中国側からモックアップの送付先を訊かれるが、時間が惜しいので3Dプリンター用のファイルで送ってくれと答える。
    • 2月8日から2月26日は旧正月なので発送処理には遅延があるという。Fedexで送ってもらうよう依頼。
  • 2月7日:
    • Fedexではロシアに送れず、EMSに切り替えたとの報告。
  • 2月15日:
    • 中国のパートナーに祝いのメッセージを送る。返礼と共に追跡番号が来る。彼らの作業再開の前に我々はモックアップをテストしフィードバックを送る必要がある。その後は構造設計(structure design)だ。
  • 2月19日:
    • 中国側から「荷物は届きましたか?」と訊かれたがまだ受け取っていない。追跡番号をチェックすると荷物はモスクワではなくカナダのバンクーバーに送られたという。中国側は原因を調べている。
  • 2月21日:
  • 2月24日:
    • 中国側からしぶしぶモックアップの写真が送られてきた(画像1画像2画像3画像4画像5画像6画像7)。なぜ3Dプリンタ用ファイルを送りたがらないか分かった。プリントできないからだ!(※満足にプリントできるデータを作成できなかったということか、あるいはモックの品質がひどかったのか)
    • 中国側に配送先住所を再確認してもらう。住所は正しいが追跡番号が正しくない。番号を探してもらう。
    • そして中国側からデバイスのデザインのファイルが送られてくる(Google Driveフォルダに3回リンクされているが、どれが正しい設計図(?)なのか判然としない)。
  • 2月27日:
    • ファイルを解析してモックアップを確認した。作業を続けてもらうよう指示を出す。中国のチームからは「このモックアップを承認すると外観の変更以外はきかなくなる」と警告を受ける。OKと返答し、詳細な構造設計に取り掛かってもらう。
  • 3月5日:
    • 最新の製作スケジュールとその進捗を尋ねる。彼らはディスプレイのテスト中で、数日のうちにPCBA IDHとデバイスの今後の製造について大きな会議を行うという。
    • 荷物は届いた。モックアップは写真よりずっと良く見える。
  • 3月8日:
    • 外観・感触についての提案を行う。
      • 裏側の指の下の溝はもっと丸くしてほしい(彼らの案我々の案 ※後者がリンク誤り? だったので修正)。
      • 吸気を塞がないために指の下の溝には1mmほどのエッジが必要*18
      • 天板のボタンはもっと大きい必要がある*19
      • スライダー機構は磁気でプル・スナップの保持を行う。
      • スティックにはゴムパッドを被せて指が滑らないようにする。
      • 可動域のためにスティックは少し高く配置する。
      • 電源と音量のボタンは30%大きく、左右対称に見えるよう左に1cmほど動かす*20
      • SDカードスロットにゴム製のストッパーが必要。
      • 小さな手の人でも使いやすくするため、アナログスティックを少し動かし、L1, L2, L3とR1, R2, R3を組み合わせて使えるようにする。
    • 以上のことをやり取りした。製造スケジュールの更新を待つ。

ディスプレイの入手性の検討、各パーツの位置取りなどの議論を経て、ついにPGS Labは彼らのモックアップの造形とその承認を行いました。この時点でプロジェクトのKickstarterでの集金開始(と撤退)からはおよそ1年と9ヶ月が経過しています。

2018年「LOG#6」: PCBの生産に向けて

前回(4月)から大きく間を開けた同年8月、PGSに3度目の夏がやってきました。公式サイト上では最後の経過報告となったLOG#6です。

  • LOG#6(8月5日付)日本語版):
    • 引き続き我々の作業についてのレポート、それと素晴らしいニュースをお届けします。
  • 4月29日:
    • PCBAについて中国の同僚への提言と調整を行うのが日々のルーチンワークになっている。彼らの調整のタイミングについて我々は不満を持っている。定期的かつ強力に開発プロセスの高速化を求めているが、中国側はヒューマン・ファクターの存在と、PCBA開発にあたっての全てのリスクを排除する必要があると言う。
    • 提言はほぼ採用されたがまだ問題が残っている。PCBAを5mm拡大する*21とヘッドホンジャックとバッテリーを少し動かす必要が出てきた。
  • 5月8日:
    • PCBAのプロトタイプの最終調整。ThunderboltモジュールのためにUSBの位置を変更*22
  • 5月14日:
    • 次の段階の議論を始める。MD(※manufacturing design?)開発者はPCBAプレートのレイアウトを解析次第、作業できるという。パートナーによれば、この作業が終わればPBCAボードの動作サンプルを得られる。
    • 振動モーターの問題についてパートナーに解明を求める。この要素はデバイスに搭載され、TTXに対応する。
  • 5月21日:
    • パートナーから次段階のための開発費用を求められた。我々からはPCBAの受け取り期限を設ける。パートナーは近い将来のPCBAサンプルの提供を約束し、次段階の支払い後すぐにMDを開始するつもりだという。議論によって実動プロトタイプまでの予算枠を確定する。
    • パートナーと支払いタイミングの修正を明確にすることを約束した。
  • 5月22日:
    • 2分割の支払い(cash tranche through two units)で時間が掛かる可能性があるが、これを理由に開発をストップさせないでほしいと伝える。パートナーの回答――開発はフルスピードで続けており、止めようとは考えもしなかった。彼らはこれを証明するようにチャットのスクリーンショットも送ってくれた*23
  • 5月29日:
    • PCBAの準備完了は7月9日になる、とのこと。
  • 6月7日:
    • PCBAの素材サンプル製造の準備ができたと工場から連絡が来た。最新版のMDファイルもいただく。
  • 6月9日:
    • 国際的制裁の影響でロシアから中国への送金が難しくなっていると伝える。中国のほかの外部パートナーと追加の契約を締結し、我々の中国支部(Chinese unit)の代わりに請求書の支払いをできるよう提案。
  • 6月18日:
    • とりまとめられた追加契約に署名し、請求書を受け取る。
  • 6月20日:
    • 1週間以上かけてパートナーとの法的問題は解消された。追加契約の準備と署名、原書と請求書の受け取り、支払いまでを無事完了させた*24
  • 6月21日:
    • 開発者とデバイスの開発について活発に対話している。担当者がPCBAとMDの状況を日々受け取っている。
  • 6月25日:
    • 中国のパートナーはPCBA受け取りのオリエンテーションを7月10日に設定した。PCBAの進捗と合わせてMDの製作が約束されている。
  • 6月29日:
    • "競争は最高の製品と、最低の人間を生み出す"――2年前、我々が製品を発表した直後、GPDは急遽GPD WINを発表しリリースした。その製品には我々のコンセプトが採用された(あまりに急いだために欠陥のある製品だった)。我々はアイデアを公開し続け、彼らはそのアイデアを日常的に文字通り "借り" 続けた。チップのCore Mへの変更をアナウンスした後、GPDは即座に同じチップの採用を発表した。御同業の第2世代機のリリースを謹んでお祝い申し上げる。
    • 詳細な製品テストを実施。製品の枠組みの中で回避すべき欠点を見つける。
  • 6月25日(※日付が戻っている。7月25日または8月25日のミスだろうか?):
    • プライマリバージョンのPCBAの開発が完了した。我々は順調に歩んでいる*25
  • (8月25日、文末の挨拶)皆様へ誠実に――PGSチームより

中国への開発資金送金を巡るトラブルはあったようですが、日報の上では円満に解決したということになっています。再びアップロード者のアカウントが変わったのか、リンク切れが頻発していますね……。

見逃せないのはGPD社への敵意を改めてむき出しにしている6月29日です。上では常体にしましたが、たまたま保存していた日本語版原文では下のようになっています(脚注に原文も入れときましょう)。

「競争は製品の質を高め、人間の質を下げる」*26

2年前、我々の製品発表直後、GPDは即座にGPD WINを発表し、リリースしました。我々の製品コンセプトが採用されています(彼らは遅れを取らないように急ピッチで開発を進めたため、製品に欠陥がありました)。我々がアイデアを公開している一方、彼らは日常的に我々のアイデアを「借り」続けました。*27

Core Mへのアップグレードを発表した後、GPDは即座に後継機に同じチップを採用することを発表しました。彼らの第2世代機のリリースを祝いたいと思います。*28

PGS blog

……事実を時系列順に並べておきますが、

  • GPD WINとPGS
    • 2015年10月: GPD社がコミュニティ内でWindowsマシンの需要をリサーチする(出典Wikipedia
    • 2015年12月: GPD WINの物理設計とハードウェア仕様が確定する(出典Wikipedia)。
    • 2016年2月25日: GPD WINがIndiegogoの出資受付を開始。
    • 2016年4月18日: PGSのWebサイト公開がPGS Blog最初の記事と同時であれば、PGSの初公開はこの日。

というわけで、PGSの発表はGPD WINの出資受付より2ヶ月ほど遅れていました。

手元のメモではGPD WINはPGS発表と同月の2016年4月中にはPCBと外形構造のプロトタイプを公表しており、とてもPGSを見てからできる仕事ではないように思います。

またGPD WIN 2についても以下の通りです。

  • GPD WIN 2とPGS(Core M版)
    • 2017年9月4日: PGS Labがm3-7Y30を検討し始める(9月12日アップロードのLOG#2)。
    • 2017年9月12日: PGS LabがPentium N4200を再検討(MIPIディスプレイのサポートが無いため。出典は同じく9月アップロードのLOG#2)。
    • 2017年10月18日: GPD WIN 2の開発情報がyoutuberのPhawx経由でリークされる。動画ではほぼ最終形に近い外装とおおよそのPCBレイアウトが確認され、m3-7Y30搭載と言われる(Second Win: GPD Win 2 prototype leaks - NotebookCheck.net News
    • 2017年11月22日: PGS LOG#3がアップロードされる。以下は10月の経過から抜粋。
      • 2017年10月22日: コミュニティの報告をもとに、変換ブリッジを通せばCore MでMIPIディスプレイを使えそうなことを確認。
      • 2017年10月24日: GPD WIN 2の開発を知り、「パートナーに情報漏洩を気をつけてもらわねば」とジョークを飛ばす。
      • 2017年10月26日: PGSのCPUをm-7Y30に最終決定。

Introducing the GPD Win 2 - YouTube

WIN 2のリーク時点でPGSから公開されていた情報は「7Y30はZ8750より発熱が小さいから使っていきたい」「画面インターフェースが合わないからやめよう」とややズレた検討をしていたのみです(一度書きましたがAtom Zが4W~5W程度、対してm3-7Y30の公称cTDP上限は7W。付け加えるならGPD WIN2の出荷時Power Limit1は7.5Wです)。

GPD WIN 2は上の写真の10月時点で内外のレイアウトをほぼ完成させているように見え、仮にPGS Blogの極めて断片的なアイデアからたったの1ヶ月でこんなものを仕上げてくる技術力があるならば、最早PGSから何かを剽窃してくる必要性がありません。

逆に、PGSがスティック押し込みの代わりにL3・R3ボタンをL2・R2の隣に配置すると言い出すのは同様の機構を持つGPD WIN 2のリークから2ヶ月ほど後(LOG#5)です。合理的な配置だと思いますし、これだけで悪質な剽窃だとかは言いませんが、かつて罵倒したGPDと同じ形状にしてしまった、その胸中がもしかしたら現実を歪めてしまい2年ぶりの悪罵に向かわせたのかもしれないと思ってしまいますね。

我々のキャンペーンを必死に中傷しようとする人たち(=競合他社)に言いたいのは、お前達の労力や手段は妨害工作ではなくまともな製品、我々に対抗できるような製品のために使え! ということです。お前らのプロジェクトが哀れなのは確定的に明らか。真実を見なさい。

Update#18 - Dear backer, be careful, we are under attack!

2018年11月: 最後のプロトタイプの公開、そして

PGS Blogの更新が上述のLOG#6(2018年8月)を最後にストップし、そして3ヶ月後。

サイトを更新しました。端末のビジュアルも近日更新致します。最終ビジュアルは既に確定しています。*29

PGS LAB - Posts | November 17, 2018 | Facebook

サプライズだ、野郎ども! 新しいプロトタイプをテストしている。GPUのブーストされたm3-8100Yを検討しています。*30

PGS LAB - Posts | November 24, 2018 | Facebook

突然twitter(投稿削除済み)とFacebookに、プロトタイプと称する画像がアップロードされます。

これに伴い更新されたと思われるPGS Labのページでは、CPUが第7世代Core M(m3-7Y30)から突如第8世代 Core Mのm3-8100Yに変更されています。

プロトタイプがどこまでの機能を備えているのか? 2枚のディスプレイは本当に点灯しているのか? 裏蓋は閉められるのか? PGS Liteはどうなったのか? ……何より結局、発売はいつになるのか? 多くの謎を残してPGSの主立った活動はここで打ち切られます。

年末。twitterアカウントの全ての投稿が消え、それを訝しんだ一般のかたへと返答する唯一の投稿で「取り組んではいるが、リリース日は未定」とされました。

これ以降、プロジェクトのすべての進捗は闇の中となります。

2019年~2020年: Facebookの亡霊

その後はなぜか活動をFacebookのコメント返信に絞り、続けていると言い張ることを仕事にしていきます。

適当に抜粋していくと……。

中国のパートナーは納期を強く遅延させています。デバイスのテストにあたって難しい問題が幾つか見つかっており、彼らがそれらを解決させデバイスを完成させることを我々は望んでいます*31

2018年11月25日

パートナーの進捗を待っているところです。*32

2019年1月11日

テスト工程についての新しいblogを用意しています*33

2019年2月21日

プロジェクトは活動しており、終わりが見えてきました*34

2019年4月3日

テスト段階で明らかになった事象を解決するため、パートナーに時間を作れるかどうかを懸念しています。我々は、問題なく利用できるベストな製品を作りたい。低品質で理想から外れた仕事はしたくない。そしてパートナーと共に最高の結果を届けられるように努力しています。*35

2019年5月4日

公式のリリースはまだ承認されていません。我々はデバイスの作業を続けています。*36

2019年6月8日

blogはあとでかきます*37

2019年8月4日

発売日はあとで知らせます。*38

2019年10月12日

端末(※表現がデバイスでなくコンソールになった)の作業をしてます*39

2020年1月11日

コンソールの作業を再開し、テストと全てのバグの修正を行っています。blogの更新にご期待ください。*40

2020年3月16日

blogを準備中です。おもしろいニュースをたくさんお知らせできると思います。*41

2020年4月28日

結局発売日は告知されないしサイトもblogも一向に更新されないので、これらのコメントには一切の実質がありません。PGSアカウントから発信されている以外に情報価値のない、幽霊のような存在です。

どうもこの手の動きを見ると、詐欺ではないと言い訳するためのものでは、とも思ってしまいます。


そんなある日のこと、公式サイトのドメインが期限切れとなり、数日間すべてのページに通じなくなります。

障害はドメイン更新によって取りあえず回復しましたが、この復旧作業はなんだか雑に行われ、すべての日本語ページと*42、ニュースレター登録や投票や予約購入といった投稿受信系の機能など多くのコンテンツがリンク切れとなりました。

つまり遅くても2019年末でPGSの一般からの資金源は絶たれた格好になり、翌年以降は更に活動は希薄になっていきます(上に引用したようなFacebookの返信が非常にわずかな数あるのみ)。事実上のエンドマークはこのあたり、活動から3年後の2019年あたりに付けてよいでしょう。

おまけ: PGS Lab(Portable Solutions)中核メンバーのその後

更にその後の、メンバーの進退についても軽く載せておきましょう。

PGS Labはなんと度胸のあることにLinkedInにページがあり、幾人かの経歴をチェックすることができます。

どうやらCEOを含む幾人かは、PGSのプロジェクトが停滞した2018年からSINTEZなるロシアのブロックチェーン企業の重役に就いていたようです(というより、もともと所属していたSINTEZに戻ってきた?)。

vimeo.com

これは2018年5月公開、評価経済社会とマイニングを組み合わせた全く新しいWebマネタイズシステム……いや、当時でも新しくはないんですが、そのCrypt by SINTEZのプロモーションビデオで……。

ウ、ウワーッ!

詐欺!

これまでのPGSの「やってる感」をすべて吹き飛ばす豪快な語り口。開始1秒で勝ちまくりモテまくり、ノンストップで極めて胡散臭いことをまくし立てているおヒゲのおじさんが、現在PGSとSINTEZのCEOを兼任しているとされるNadir Mursalov氏ということらしい。


そのほか名前の出ていた人……たとえばPGS LOG#4の画像アップロード者で、Twitterの自アカウントにもモックアップを貼るなどしていたAlexander Arzh氏(5月頃退社したらしい)の現在の動向をチェックすると……NFTアートを売っていました。やっぱりブロックチェーンかよ。

Buy NTF digital copies, non-fungible token.

仕事のラベルで人を判断するもんじゃないですが、しかし、仮に詐欺師ではなくても山師ではあったんじゃないか……。

主要メンバーがPGS Lab以外の業務に従事しているようにしか見えないのは、やはりPGSがプロジェクトとして凍結状態にあることを確信させます。

Dragonfly FuturefonPIQOプロジェクタのような当blogのいつもの奇クラウドファンディング記事なら「クラウドファンディングは購入ではなく出資です。金の返ってくる保証が無い以上、皆さんも実現性の薄いことを言う人たちには気を付けましょう」と毎度書くところですが、今回は早々に公式サイトでの直販に切り替えられてしまっているので、要するに本当に詐欺に接近しているのですよね。

最大限好意的に見た場合のストーリー……たとえば「大口の投資者が失せ、集めた金も全部開発費に使ってしまった」ということであれば、金を返さないまでもMorphyOneのモルフィー企画の破産のように、あるいはSMACH Zのギブアップ宣言のように、それなりの落とし前を付けるべきではないかと思います。160万ドル以上とされる売上額(被害総額)も彼らの公称値なので今一つ全貌の見えないところはあるのですが……。

モバイルPCとしてのPGSを検討する

ここまでは、プロジェクトとしてのPGSとその主宰らの一部始終をお伝えしました。付録として「ウルトラモバイル・ゲーミングPC」として見た時のPGSの総括をしてこの長い記事は終わっていきます。

仕様の変化――何が足され、何が無くなったのか?

当初のKickstarter版仕様を、やはりGPD WINと共に再掲します。

PGS Hardcore GPD WIN
価格 $320(Kickstarter版通常価格) $330(Indiegogo版通常価格)
ディスプレイ IPS液晶 5.7インチ 2560x1440 IPS液晶 5.5インチ 1280x720
CPU Intel Atom x7-Z8750(Cherry Trail) Intel Atom Z8750(Cherry Trail)
GPU Intel HD Graphics 600MHz 16cores Intel HD Graphics 600MHz 16cores
メモリ 8GB LPDDR3-1600 4GB LPDDR3-1600
OS Windows 10 / Android 6.0 Marshmallow Windows 10
ストレージ - 128GB SSD(接続形式不明)
- TFスロットの有無は不明
- 64GB SSD(eMMC)
- TF card slot(up to 128GB)
無線接続 802.11ac / Bluetooth 4.0 / LTE 802.11ac / Bluetooth 4.1
バッテリー Li-Po 6120mAh Li-Po 6900mAh
外形寸法 164.1 x 84 x 18mm 155 x 96 23.5mm
本体重量 320g 350g
その他要素 - USB 3.0(Type-C)
- microHDMI
- 5.0chスピーカー
- インカメラ・背面カメラ
- 4.5インチセカンダリディスプレイ
- ゲームパッド・アナログスティック
- 3.5mmヘッドセットジャック
- 交換可能なバッテリー
- USB 3.0(Type-A, Type-C)
- mini HDMI
- ゲームパッド・アナログスティック
- QWERTYキーボード
- 3.5mmヘッドセットジャック
ストレッチゴール - キーバックライト搭載
- 本体カラーバリエーション追加
- GPUオーバークロック
- ゲーム最適化ツールの開発
- セカンダリディスプレイのカラーE-Ink化
- 電話機能をWindows 10側に統合
- 防水機構の搭載
- ワイヤレス充電機能

Kickstarter退場以後の時折ある仕様変更から、主要なものをキャッチアップしていきます。

時期 追加 削除・減少 変更
2016年7月 ストレッチゴール達成時の以下仕様を維持
- 振動
- NFC
- IrDA
- FMラジオ
- 防水仕様を削除
2016年9月 - L3・R3をHardcore版では背面ボタンに、Liteではスティック押し込みに割り当てる
2016年12月 - Win/Androidをデュアルブートでなく同時起動にアップデート
- CPUにAndroid用としてHelio X20を追加
- バッテリーを6800mAhに増量
- オーディオジャック廃止
- チルト機構廃止(スライド角を固定に)
- メイン解像度をWQHDからFHDに縮小
- 筐体サイズ縮小(寸法不明)
- 上画面を5.9インチに拡大、下画面を3.2インチに縮小
- SIMスロットをmicroSIM兼microsdに確定
- $20の値上げ(プレオーダー$319、リリース$379)
2017年4月 - Hardcoreにチタニウムエディション追加
2017年6月(LOG#1) - 筐体サイズ拡大(165.5 x 86.5 x 18.5mm)
2017年7月 - Android用のスピーカーと音量ボタンとUSBポート追加 - ストレージ削減(128GB→64GB)
- ARM側SoCがHelio X20からMT8785にスペックダウン
- LTE仕様を各国向けに細分化
- メイン画面を6.0インチ、下画面を3.3インチに拡大
- 下画面の解像度を800x480に精細化(元は不明では?)
- 筐体サイズ更に拡大(170 x 89.5 x 18.5mm)
2017年8月~9月(LOG#2) - Core Mでの設計を指示した翌週にApllo Lake Pentium N4200での設計を指示 - Android開発の断念。LTE、ARM CPU、スピーカー、音量ボタン、Android用USBポートなどが消滅
2017年9月~11月(LOG#3) - LPDDR3 RAM→DDR4 RAM(両8GB)
- ストレージ元に戻る(64GB→128GB)
- 照度センサー
- 加速度センサー
- ジャイロセンサー
- CPUをm3-7Y30に確定する
- Thunderboltポート
- インカメラ解像度を13MP(未公表だったが)→5MPに
- いつのまにかバッテリーが6000mAhに減る
- L3, R3ボタンを背面に置くはずだったが、押し込み機能付きスティックの検討を始める(Harcore版に注力しているので、Lite向け検討とも思いにくい)
2017年11月~翌1月(LOG#4) - 筐体サイズが綱引きの末172 x 91.5 x 21.5mmまで大型化
- メイン画面が更に拡大(6.8インチ)
2018年1月~3月(LOG#5) - ヘッドホンジャック復活 - microHDMIに言及がないまま遂に実装されず(USB Cに統合だろう) - アナログスティックの押し込みをL3, R3に実装するのを断念し、側面に独立L3, R3ボタンを実装
- 筐体サイズ微妙に変更、幅が0.7ミリ縮む(172 x 90.8 x 21.5)
時期不明 以下は最終仕様までに撤回されたと思われる機能:
- 交換可能なバッテリー
- GPUオーバークロック
- ゲーム最適化ツール
- 電話機能
- ワイヤレス充電
- NFC
- IrDA
- FMラジオ
Web最終仕様 - CPUを7Y30→m3-8100Yに強化
- バッテリーが6000mAhから6500mAhに増量
- Titanium版向けにメモリとストレージを倍に強化(8GB→16GB、128GB→256GB)
- DDR4 RAM→LPDDR3 RAMに戻る(容量は同じ) - 筐体サイズの小数点以下を切り捨て(172 x 91 x 21mm)

大きな変更としては筐体サイズの大型化とCPUの強化、画面解像度の減少、そして何より、ありとあらゆる「夢機能」の削減でしょうか。2017年7月blogの「もうデタラメは言いません」の宣言から人が変わったように、それまでよりは現実的な判断を重ねた結果、妥協に妥協を重ねて辿り着いたのはカラーE-Inkもスマートフォン機能もない変形タブレットでした(でも本体重量が320gのままなのは無理があると思う。最後に出たプロトタイプも量ってないでしょ)。

余談ですが、これら仕様変更の結果としてPGS Liteのほうは下画面の代わりにQWERTYキーボードを備え、145 x 71 x 11 mm(!) のコンパクトサイズ、出てさえいればGPD WINやその後継のGPD microPCと競れるモストミニマム・ウルトラモバイルPCとして好事家にウケていた可能性があります。作るどころか設計すら後回しにしていたので輪をかけて一生出る見込みが無かったのですが……。

「PGS Hardcore」最終仕様レビューと総括

最終的なPGSのスペックから、この端末がどのように使えるか想像でレビューしていきましょう。

横には2018年時点の仮想ライバル機GPD WIN 2とその後期型モデルを並べておきます。

PGS Hardcore
and PGS Titanium
GPD WIN 2
and GPD WIN 2(2019)
価格 $319(直販プレオーダー)
$379(直販通常価格)
$599(Indiegogo版アーリーバード)
$649(Indiegogo追加枠)
$899(Indiegogo通常枠)
ディスプレイ IPS液晶 6.4インチ 1920x1080 IPS液晶 6インチ 1280x720
CPU Intel Core m3-8100Y(Amber Lake) Intel Core m3-7Y30(Kaby Lake)
2019版ではm3-8100Y(Amber Lake)
GPU Intel HD Graphics 615 Intel HD Graphics 615
メモリ 8GB LPDDR3
(Titanium版では16GB
8GB LPDDR3
OS Windows 10 Windows 10
ストレージ - 128GB eMMC SSD(Titanium版では256GB)
- microsd
- 128GB m.2(SATA3) SSD(2019版では256GB)
- microsd
無線接続 802.11ac / Bluetooth 4.0 802.11ac / Bluetooth 4.2
バッテリー Li-Po 6500mAh Li-Po 2x4900mAh
外形寸法 172 x 91 x 21mm 162 x 99 25mm
本体重量 320g 460g
その他要素 - USB(3.0 Type-C x1, Thunderbolt 3 x1)
- 5メガピクセル インカメラ
- 3.3インチセカンダリディスプレイ(800x480)
- ゲームパッド・アナログスティック
- 3.5mmヘッドセットジャック
- 振動機能
- USB(3.0 Type-A x1, 3.0 Type-C x1)
- microHDMI
- ゲームパッド・アナログスティック
- QWERTYキーボード
- 3.5mmヘッドセットジャック
- 振動機能(2019版で削除)
ゲーミング性能: GPD WIN 2よりはPocket 2に近い

性能傾向は同じCPUを積んだGPD WIN 2に近いはずですが、より近いと言えるのはFullHD以上の高解像度ディスプレイとeMMCストレージを備えたGPD Pocket 2かもしれません。

モバイル機の性能でCPUとストレージのどちらを重視するかは人によるものの、eMMCのPGSがm.2 SATAのGPD WIN 2に後れをとっているのは確かで、ゲームのインストールやローディング、Windows Updateなどで違いが見えてくる可能性があります。

とはいえ載っているCPUとメモリだけ見ればゲーミングパフォーマンスはGPD WIN 2とほぼ同等といったところでしょうか。当blogの過去レビューで挙げた目安で言えば、Portal 2はまあまあ快適(50~60fps)、地球防衛軍4.1の重い面でやや厳しい(20fps)、Alan Wakeより重いゲームは無理(常時20fpsくらい)、のような感触です。もちろんネイティブ解像度がWIN 2より高いことや熱処理の違いが不利に傾く可能性はあります。

これはそのGPD WIN 2からの経験ですが、128GBのストレージ容量はゲーム機としては(たとえ軽いゲームばかり遊んでいても)やや手狭に感じますね。Tianium版の256GBのほうを手に入れるか、でなければ画像や文書などユーザーデータをmicrosdカードに逃がすような小技は必要になっていたでしょう。

画面: 大型化に見合う解像度が欲しかった(かも)

「ただのゲーミングUMPCに堕すような妥協はしたくない」と言っていた志は、デュアルスクリーンに残りました。プロトタイプを見る限りはそこそこ手に馴染みそうな大きさですし、小型タブレットまたは2画面のWindowsゲーム機として活用できなくもなさそうです。

むろん彼らの当初思い描いていたデュアルスクリーン体験を実現するためには、このうえソフトキーボードなど独自のソフトウェアの開発をせねばならなかったのですが、とはいえ上画面でゲームをしながら下画面にチャットや攻略資料を表示する……という遊び方が、ポータブルPCで出来るのであれば面白かったかもしれません。

ただし、下画面の解像度800 x 480、それこそGPD WIN未満の解像度でメモ帳の表示以外、たとえばWebページの表示すら満足に出来たかは難しいところです。ASUS ZenbookのScreenPadのようにツールウィンドウやランチャーを表示する方が実用的なのかも。

BACK/SELECTの下に配置されたMODE LEFTボタンでディスプレイのオンオフを操作できる予定でしたが(この画像SELECTとSTART逆じゃない?)、もし画面が接続ごと切れるならデスクトップアイコンやウィンドウ配置がワヤになり、接続ごと切れないならばアイコンやウィンドウが行方不明になる事態が想像できます。この辺りはWindowsのマルチディスプレイ挙動とも絡んでくるので何とも言えませんが、もしうまくない場合は専用ユーティリティなどでの補助を期待したいところです。

「メイン画面でのゲームプレイ中、下画面にフォーカスしたときゲームが止まるかどうか?」といった動作もマルチディスプレイ特有ですね。フルスクリーンや全画面ウィンドウによらず、ゲームタイトルごとに大きく挙動が変わるのでこれをユーティリティでどうにかするのは難しいような気もします。もし発売されていたら「ゲームがPGS Hardcoreで快適に遊べるかどうか」の指標要素にスペックだけでなくこの手のマルチ画面対応も入ったかもしれません。

上画面がGPD WIN 2をしのぐ6.4インチまで大きくなったならば、解像度はフルHDでなくWQHD(2560 x 1440)のままでも良かったようにも思います。UI要素が小さすぎる問題はWindows 10以降はスケーリングで概ね解決しているし、ゲームのGPUボトルネックは等倍スケーリングで1/4にしてしまえばよいです(これはPGS Lab自身もそう言っていた)。バッテリーや価格などの面を解決できるならばという注釈付きですが、GPDがやらない高解像度化をここは更に一層攻めてほしかったですね。

電源: 極端に短くはならんだろう……

バッテリーは約3250mAhの2本とされます。GPD WIN 2やPocket 2より小容量とはいえCore MとeMMCの組み合わせならば通常利用で6時間は行けると思われますが、変則的な枚数のディスプレイを変則的な方法で接続しているので何とも言えないですね。通常利用で4時間、フルにゲームをして2時間もてば上出来でしょうか。

もともと新興メーカーの奇PCなので電源回路等の安定性そのものにも少し不安があります。まあ時折電源が落ちるくらいなら個人的にはGPD WIN無印程度に許されるワンパク要素だと思うし、燃えるとかしなければいいです。

入力: マウスモードに期待

そろそろ想像で書けるところも少なくなってきた。

先のボタンレイアウトの再掲(やっぱりこの画像SELECTとSTART逆じゃない?)。STARTボタンの下にはMODE RIGHTボタンがあります。これは「ゲームモード」と「Windowsモード」を切り替えるボタンとされ、GPD WINシリーズのようにアナログスティックでマウスカーソルを動かし、L1, R1でマウスクリックができるとされています。

私はGPD WINシリーズのマウスモードのプリセットを気に入っていないので、PGSではカスタマイズ可能になるか、もしくはもう少し正気のアサインになっていることを期待します。

スティックにはGPD同様アルプスあたりのものを使うと思われるのでおかしなことにはならないだろう、と思いつつ、「ポータブルゲーミングPC」の第一世代の入力機器は期待よりも不安のほうが大きいですね。スティックは良くてもボタンがぺこぺことか。

取り回し: たぶんポケットには入らない

PCとしてはかなりの小型ですが、スマートフォンとしてはかなりの大型、ぎりぎりポケットに入らないほうのやつかな……。

ファブレットの名機と言われるXperia Z Ultraは179 x 92 x 6.5mm、PGSは172 x 91 x 21mm。面積をここまで寄せたのは立派ですが、折り畳み機の宿命というかPCの限界として厚さが2センチもあり、コートのポケットやボディバッグのようなところに入れる、ゲーム機のような運用になるのではないでしょうか。まあゲーム機なんだが。

当時のGPD社端末と比べると良くも悪くも折り畳み時に画面が露出するのが違うポイントで、

GPDだと、どちらかと言うと後に出るGPD WIN 3のほうに近いですね。

折り畳むとゲームパッドが格納されるので、GPD以外を探すとPSP goやXperia Playのほうがより近い。巨大化したgoか。

ウルトラモバイルWindows PCとして見たとき、高解像度はうまく生きてきそうです(下画面も気休めにはなるかも)。こういった使い方ではマウスやキーボード、ACアダプタといったものを同時に持ち運ぶのが有効でしょう。AndroidがLTEごと撤去されたのは痛手だったか。

チルト角は固定なので、PC的な用途にはスタンドがあるとよさそうです。

サウンド、ネットワーク等

さすがに出てない端末のこんなところは書けないので省略しますが……。強いて言うならスピーカーがステレオなのは良いことです。最低限使えるくらいの音質になっているといいですね。

結論: 全部がうまくいってちゃんと発売されて値段通りなら買い(だった)

結局のところ「スライド式ゲームパッドを内蔵したCore Mタブレット」であり、ゲームをしない人には無用の長物です。6~7インチクラスのWindowsタブレットは当時も今も非常に希少ですが、ゲームパッドとデュアルスクリーンを活用できなければ無駄な厚みとしか言いようがありません。

ただ$400を切る価格設定は同時期・同程度の性能のGPD WIN 2やGPD Pocket 2はおろか世界中のほとんどのマシンに無いものだったので、「全ての要素が良好に実装されていればGPD WIN 2と競れたかもね」とは言えそうです。私はキーボードの付いているほうが好みですが、古来よりキーボードを排したUMPCが無かったわけではない。

そして、この節のすべての記述は「ちゃんとリリースされていたらね」というむなしい前提に立つものです。一生出ない端末なんだから何を言っても意味はありません。

結び

ついに我われの誰もが手にすることのなかったゲーム向けウルトラモバイルPC「PGS」について、私の知る限りのことと思う限りのことを執拗に書き連ねてきました。どれくらい執拗だったかといえば装飾・引用部含め7万字を超えています。

ウェブ記事としての読みやすさを重視するならばもっと概略・抜粋をやっていくべきだったのですが、皆さんにPGS Labの変な熱意について知ってもらうためには、なるべく余さず彼らのアクティビティを載せるほかないと考えました。

詐欺だと騒がれまくっていた向きについて、私もその可能性は十分にあると未だ思っています(特に社長の爾後の動画は本当にすごい)し、実際に本記事では多くの局面で「作る気があるなら」「本当に作っているなら」と予防線を張り続けました。しかし皆さん、ただの詐欺師がこんな日記を書くでしょうか。デベロッパーに文句と嫌味を言い続け、競合他社への2年越しの悪意を発露し、失効したドメインまでしっかり戻して過去記事を今でも維持してくれている。本当に2億円の何分の一でも着服できたんならアリバイ作りとして日記くらい書くかもしれないが、私だったら果たしてここまでのディティールを作り込めるかどうか……。

詐欺だったのかハードウェアスタートアップだったのか、詐欺でなかったとして深圳GPDとの違い(通底した見通しの甘さにみられる規模や経験のほかには、地理的なスピード感もあるのだろう)や付けるべき落とし前などの、書くべきことは文中にほとんど書いてしまったので付け加えることはあまりありません。

結局この件が何らかの犯罪だったのかは捜査の手が入らないことには断言は難しいのですが、どちらにせよ少なくとも、ある種の事件性を帯びていると私は思っているので、なんだかそういう微妙な気持ちをお届けできれば幸いです。

*1:私もクラウドファンディングで手に入れましたが、ゲームパッド・キーボードの品質の低さ、瞬時にサーマルスロットリングに到達する排熱機構、電源の不安定さなど「誰も作らない極小マシンを10ヶ月以内に出荷できた」こと以外に褒めるところのないオモチャだったと言わざるを得ないものでした。

*2:リンクされていた動画は削除されているが、時期から推測するとバットマン・アーカムコレクション。

*3:ITG社のWindows Embedded搭載スマートフォンXpPhoneは2009年に展示会で発表されているが、実際にECモールで確認されたのは2010年の11月。中華圏では流通したようだが、報道関係のテスト利用以外で商品として入手したユーザーはtwitterやyoutubeでは見当たらない。本当に出たのか?

*4:PGS Valutは現在パスワードの入手不可。筆者もパスワードは持っていません。

*5:Webとblogの日本語版は2022年1月時点ではアクセス不能でした。のちに復旧。

*6:Gameセクションは現在アクセス不能。

*7:Googleドライブのリンク切れにつきIntel HK Fairの詳細は不明。

*8:"We are the only proprietors of a number of patents for the entire form factor of gaming devices with two operating systems, and we are going to prove the world that the future of the industry is in our products."

*9:旧スペックではLPDDR3 8GB デュアルチャネルRAM。ストレージは128GB→64GBから再度128GBに戻されている。

*10:"We told our Chinese friends that such a failure in time terms is unacceptable and threatens them with legal proceedings in accordance with the terms of the contract."

*11:"Unfortunately there wasn’t a company in China that could make this PCBA such complexity."

*12:Google Driveリンクが3つあるが文脈に合う画像は2つしかなかった。

*13:Google Driveリンク誤りから推測。

*14:リンク先はGoogle Driveフォルダから推測。

*15:Google Driveフォルダから推測

*16:Google Driveフォルダから推測。

*17:"They ask to check the post office, the parcel had to come on February 17 and send the tracking number."

*18:Google Driveリンク先の修正候補不明

*19:Google Driveリンク先の修正候補不明

*20:特にリンクは無かったが、Google Driveフォルダに該当の指示画像があるのでリンクしておく。

*21:Google Driveリンク切れ。

*22:Google Driveリンク切れ。

*23:Google Driveリンク切れ。

*24:2点のGoogle Driveリンクがあるが例によってリンク切れ。

*25:Google Drive上の2枚の画像はリンク切れ。

*26:"Competition is the thing that provides the best quality products and develops the worst person’s qualities”

*27:"Two years ago, immediately after the announcement of our product, GPD hurriedly announced and soon released its product, adopting OUR concept of the device (they did it so hurriedly that the first release of GPD WIN was defective). They continued to "borrow" our ideas literally every day, while we were presenting the ideas to the public"

*28:"After the announcement of the central chip update on Intel Core M, GPD hurried to announce the update of its product on the same chip. Congratulations to colleagues on the release of the second product line."

*29:"Information on the site is updated. Console visualization will also be updated soon. We are determined with the final visual."

*30:"Surprise Ma****ka! Testing another prototype. We are considering the possibility of using Core m3-8100Y with a boost on the GPU. #pgslab #pgs"

*31:"Our Chinese partners have strongly delayed the deadlines, the device is now being tested and some difficulties have appeared, they are being resolved and we hope that the device will be completed soon"

*32:"Our partners are working with the device. We are waiting for the news."

*33:"We are preparing the new log about the devise testing process"

*34:"The project is active, we are close to the end"

*35:"We also worry about the fact that our partners do not have time to complete the testing and elimination of the revealed shortcomings in time. We want to make the best product, so that the user has no further problems with the use. We do not want to release a low-quality product without being convinced of the ideal job, without bugs and so on. In the meantime, we demand the best result from our partners and will try to provide the device as soon as possible to everyone who stays with us and waits for it."

*36:"The official release has not been approved yet, we are still working on the device."

*37:"We will write about the progress on a new log"

*38:"We will inform you about the release date."

*39:"The work under the console is active"

*40:"We have resumed the work on the console, we are testing and fixing all the bugs that have appeared. Expect the blog updates."

*41:"Blog updates are being prepared, you will find a lot of interesting news."

*42:日本語ページが残っていれば既存のblogを訳しまくるなんてことは多分せずに済んだんだが……。