Indiegogoと無関係の不審サイト「Indiegogo .jp」による防音マスクの転売が横行。開発元の中止要請も無視

blogを空けていた間にGレコが完結したり、エルデンリングが出たり、スプラトゥーン3が出たりと色々なことがありました。どうも今年はうさん臭い話ばかりをblogにしてしまっているので、下書きで溜めている買ったものとか作ったものとかの話は追々上げていきたいのですが、ひとまず今日はまたうさん臭い話です。

君はIndiegogo.jpを知っているか

皆様はIndiegogo.jp(インディーゴーゴージェーピー、インディゴーゴージェーピー)というウェブサイトをご存知でしょうか。あまり新味のない話なので知ってる人は読まなくていいです。

これはクラウドファンディングサイトIndiegogoとはまったく関係なく、そこからの「購入代行」を名乗る転売サイトです。

当blogではこのIndiegogo.jpの代表者について、全額前金で承った注文をバックレたり、数年後に別機種を送り付けたりする異常な輸入業を20年ほど営む「松川政裕」、通称でVAIO松川(バイオ松川)の偽名もしくは関連人物であると指摘してきました。

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カテゴリー: レッドスター(ヴェルテ)にも何本か記事があります)

偽名を指摘し続けていたら、今年あたりから登記上の本名・社名(松川政裕/株式会社シティ or 株式会社レッドスター)を表記するように変わったりしました。

海外ガジェットの通販に詳しい人は、上の系統図にある「レッドスター」「ゲッコー・アンド・カンパニー」「ヴェルテ(現在はェルテに改名)」「舶来ガジェット」「ゲームガジェット」といった名前を聞いたことがあるかもしれません。Indiegogo.jpはその係累にあたります。

それはつまり、振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結の記録を持つ、警察と銀行の認めるところの詐欺であった(もしくは現在進行形で詐欺である)商法の行われている可能性がある現場でもあります*1

このIndiegogo.jpは2018年から開設されていたわけですが、当blogで今年になって記事を起こす理由は何か? それはもちろん、今年大きめの被害が発生しそうだからに他なりません。

「ゲーミング防音マスク」のニュースが日本で拡散

今年8月、スペインのスタートアップ企業Metadoxの開発した防音マスク「PHASMA」の一般販売が報じられました。ちなみに購入ルートは公式ショップでの直販と、日本語では正規代理店のRakunewが比較的手軽です。

感染対策への注目の未だ集まる中、クラウドファンディングの達成から1年余で一般販売に移行した「PHASMA Mask 量産型」のニュースは日本国内でも幾つかのメディアに報じられました。

たとえばライブドアニュースtwitterアカウント(電ファミニコゲーマーの転載)では1.6万RTを数えるほどの人気を博しています。

しかし、この構図には気になる点もありました。

「ニュースで報じられた販売サイトは、正規の購入ルートだろうか?」そして「このニュースの大元のソースはどこか?」というのがその懸念です。

プレスリリースの出どころは開発元ではなく「Indiegogo.jp」

多くのメディアでは、世間から広く商品などの発表を受け付ける「プレスリリース」の窓口を用意しています。

しかし海外のまだ小規模なスタートアップであるMetadox社は、確かに一般受注こそ始めていたものの特に日本向けのプレスリリースといったものは行っていなかったようです。

では開発元以外で、誰がメディアに発表を送ったのか? 話の流れの通りそれがIndiegogo.jpだったわけですが、原文も送信元自身によってプレスリリース(リンク先注意。本記事は当該業者からの購入をお奨めしません)が保存されています。

ゲーム関連のクラウドファンディング商品の購入代行のIndiegogo.jpは、Metadox社(スペイン・バレンシア州カステリョンカステリョン・デ・ラ・プラナ)製ゲーミング防音マスク「PHASMA Mask量産型」の一般販売を開始いたします。
(中略)
ゲーミング防音マスク「PHASMA Mask」はクラウドファンディングで商品化され、大きな話題となりました。家内制手工業で生産と出荷を行ってまいりましたが、大量生産の目途が立ちました。

もっともらしく状況を説明していますが、そう、あくまで購入代行なのです。

何が問題だったか?

Impress GAME Watch、電ファミニコゲーマー、AUTOMATON、電撃オンラインなど著名サイトの数々によって、まるで真っ当な購入ルートかのように紹介されてしまったIndiegogo.jpですが(メディアの課題は後で検討します)、具体的にこの購入代行サイトがどういったリスクを抱えているのかを見ていきます。

Indiegogoと無関係な者による商標侵害ではないか

Indiegogoの商標は国際登録1572726(国内向けには現在出願中)として存在しており、オンラインショッピングあるいは融資サイトとしてのIndiegogo本家の区分をゆうゆう侵害しているように見えます。

Indiegogo日本公式Twitter(きわめてフォロワーの少ないアカウントですが、PR TIMESユーザーページによれば間違いなく日本公式です)でも質問に応じる形で注意を呼び掛けています。

開発元とも無関係

当然、開発元のMetadox社とも無関係です。プレスリリースや当時の商品ページ(リンク先注意。本記事は当該業者からの購入をお奨めしません)をもう少し見てみると……。

Indiegogo.jpでは、ゲーム関連クラウドファンディング商品の購入代行を行っています。

商品の性格:海外輸入品、並行輸入クラウドファンディング商品

「購入代行」「並行輸入とあるように、無関係な第三者が、一次販売者のあずかり知らぬところで「売る」と宣言しているのが分かってきます。しかも「PHASMA」から「PHASMA Mask量産型」へ、無断で商品名まで変わっている。

卸売業者を通して全国の量販店に流通させるような商品であれば開発元と小売業者が無関係なのは当たり前ですが、PHASMAは開発・生産の進捗報告において繰り返し生産バッチとその数(数十~数百程度)を報告するほど小規模なものです。この「狭さ」にしてオフィシャルと無関係な小売が堂々プレスリリースを発するのは、なかなか異様ではないでしょうか。

無保証、無責任、危険な商法

問題は商標侵害や開発元との無関係さに留まりません。

価格:
お得価格:早割特価25,800円(税送料込)、8月31日まで。9月1日から通常価格30,800円(税送料込)
特急便:早割特価35,800円(税送料込)、8月31日まで。9月1日から通常価格40,800円(税送料込)
お得価格は赤字の安値優先。数をまとめて手配します。
特急便は納期優先。お得価格の赤字を補填するため割高ですが可能な限り早く優先してお届けします。
出荷の順番は特急便→お得価格です。
販売方法:完全事前予約制
支払い方法:予約注文時の銀行振込

プレスリリースや商品ページ(リンク先注意。本記事は当該業者からの購入をお奨めしません)をよく見れば、いつものように不吉な言葉が踊っています。

「お得価格」「特急便」など調達順でTierを分割するというのは、控えめに言って「あまり見ない」売りかたです。そして支払いは前払いの銀行振込に限定されています。

はっきり言えば、無在庫転売・自転車操業と変わらぬ商法です。シナリオとして「特急便による黒字が溜まらないうちは、お得価格の注文は発注しない」、または「送料等をペイできる程度の注文が溜まらなければ、どの価格帯でも発注はしない」、もっといえば「他の商品の売買を含め、手持ちの原資に余裕ができた時だけ発注する」といった動きは、簡単に予想がつきます。

危険・リスクに関する重要事項説明:クラウドファンディング商品とは、商品化前にアイデアへの賛同者を得て資金を募り、集まった資金をもとに商品化と製造を行います。遅延したり、品質が不十分だったり、倒産したりする可能性・危険・リスクがあり、保証・補償されません。もしキャンセルされる場合は違約金として商品代金の50%を申し受けます。キャンペーンゴール後はキャンセルできません。万一、メーカーが倒産した場合は補償・返金できません。

クラウドファンディングの不安定さを盾にとって無期限の遅延や代金の総取りを「有り」にしてしまう注意書きも、自転車操業やそれ以上の身勝手を強く示唆するものです(量産の目処が立っての「一般販売」と吹聴していたのではないのか……?)。

この注意書きはただ書かれるだけでなく実際に運用されている可能性が高く、

出荷開始予定:2022年9月→10月→11月(現在メーカー公式で納期8~10週間(2カ月から2カ月半)と告知されておりますが、実際には世界的な大人気の影響でさらに遅延が生じております。)

なんなら既にズルズルと出荷予定は遅延し続けています。

確かにオフィシャルにも遅延の気配はあるのですが、こと松川氏の商売においては、受注された通りの数が速やかに発注されるとは限らないという点を抑えておく必要があります。

当blogの過去記事で幾つか扱っている通り、例えばOculus Rift DK1の発注数を明らかに絞った挙句、数年後に別の品を送ってくるとか、小型スマホJelly Proを発送する代わりに異常な日記を書き続けるといったような挙動は、彼にとってはレギュラーなことです。

もしPHASMAに限らず、ここや関連サイトからの購入者で、非常識なほど納期が遅れていたり、長期にわたって連絡のつかない状況が続いたりしている場合には、消費生活センターや法律家や警察、あるいはマスコミへの相談を検討してみてください。

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当blogの過去記事では個人レベルでの催告や契約解除の方法を、簡易的にですが案内しています(適切な機関への相談の上で行うことを強く推奨します)。

被害はエンドユーザーだけではない。未監修の誤訳を流される開発会社

PHASMAの肝心の性能について、Indiegogo.jpのプレスリリースでは以下の表現をしています。

多機能フィルターを5層合わせた構造で、防音機能を実現します。形状記憶樹脂を合皮レザーで覆った二重構造フレームが顔にフィットします。それらが大声で叫んでも、20dB程度にまで抑える防音効果を生み出します。

記述を当てにしたウェブメディア各位も「大きな叫び声を20dbにまで抑える」あるいは「20db以下に抑える」といった紹介を、疑いなく行っていました(後述)。

しかし、10上がれば3倍、20上がれば10倍になる対数のデシベルで騒音を20db「に」までするのは、難しいものです。80dbの叫び声を20dbのささやき声まで下げるためにはエネルギーを1000万分の1まで落とす必要があります。

開発元のMetadox社に詳細を尋ねたところ、以下のような回答を得られました。

Metadox社:
ウェブサイトに記載してある通り、20dbの減衰効果があります(it dampens the sound "by 20dB")。もし60dbの声が出されたら、マスクによって40dbかそれ以下に聞こえるでしょう。
PHASMAは人間にとって耳障りな高周波数帯を特に抑制します――人の迷惑にならないこと、隣室の人を起こさないこと、それができれば十分です。

確かにMetadox社サイトのFAQにも、「周波数帯によっては最大20dbの減衰効果を確認した(Tests show up to 20 dB muffling depending on the frequencies.)」とあります。

PHASMAは60dbを20db程度に下げる装置ではなく、60dbを40db程度に下げる装置ということです。

結論、無関係の購入代行サイトが誤ったプレスリリースを送り散らしたために、誇大広告の性能が開発会社の知らない間に拡散されてしまったことになります(大手メディアの記事はIndiegogo.jpへのリンクこそ削除されましたが、筆者が直接コンタクトしたAUTOMATONを除けば、この性能に関する誤訳は放置されたままです)。

開発元のMetadox社のスタンスとしては9月6日付のUpdateで「日本でのメディアの紹介に感謝します」としつつも、当blogからの何通かの問い合わせに対して、

  • (詐欺まがいの業者を扱ったニュースが日本で目立っていますが、彼との正式な取引はありますか? という質問に対し)「詐欺に利用されるのは我々の本意ではありません」
  • 「日本向けの正規の卸先はRakunewです」
  • 「Indiegogo.jpらには『弊社商品の取り扱いをやめてほしい』と要請しましたが、転売そのものは法律で禁止されておらず、止めようがない」

といった主旨のコメントをいただいており、その後もIndiegogo.jpや同一人物による複数サイトで転売ページは表示され続けています。今月サーバー移転を挟んだ最新の商品ページ(本記事は当該業者からの購入をお奨めしません)では、この誤訳だけは黙って修正されているようですね……。

メディアはどう取り上げ、いかなる手当てをしたか

転売自体を止めさせることはできない、それはその通りです。しかしあまりに性能や倫理に問題があり被害者も居るようなサイトを商業メディアが取り上げるものでもないでしょう。

Indiegogo.jpのプレスリリースに対してはImpress GAME Watchが真っ先に飛びつき、遅くても1日以内に記事の修正が行われたようです。その後は電ファミニコゲーマー、Gadget Gate、AUTOMATON、電撃オンライン、ドスパラ、@DIMEなど複数サイトへの掲載と修正・削除が確認されています。

サイト 修正前 修正後 備考
Impress GAME Watch 修正前 修正後 おそらく最初の記事
サイレント修正
商品名「PHASMA Mask量産型」はそのまま
防音性能の誇大広告はそのまま
電ファミニコゲーマー 修正前 修正後 以後順不同
サイレント修正
商品名「PHASMA Mask量産型」はそのまま
防音性能の誇大広告はそのまま
AUTOMATON 修正前 修正後 アナウンス付き修正
商品名を「PHASMA」に修正
防音性能の誇大広告を修正
ドスパラ エクスプレス 修正前 修正後 アナウンス付き修正
商品名「PHASMA Mask量産型」はそのまま
防音性能の誇大広告はそのまま
Gadget Gate 修正前 (削除) Indiegogo.jpを日本語版Indiegogoと勘違いして掲載
電撃オンライン 修正前 (削除)
@DIME 修正前 (削除)

修正の一例として、twitter上で最もリツイートの多かったとみられる電ファミニコゲーマーの記事の修正前と、特にアナウンスなく修正された後の記事を比べてみます。

修正前:

ゲーム関連のクラウドファンディング商品の購入代行をしているインディゴーゴージェーピーは、Metadox社のゲーミング防音マスク「PHASMA Mask量産型」の一般販売を開始したと発表した。

修正後:

スペイン・バレンシア州に拠点を置くMetadox社は、多層のフィルターで防音の効果を生み出すゲーミング防音マスク「PHASMA Mask量産型」の予約販売をKickstarterで開始すると発表した。

商品名は「PHASMA」であって、「PHASMA Mask量産型」という商品をMetadoxは扱っていません。

また、予約販売が改めてKickstarterで開始あるいは発表された事実はありません。Kickstarterキャンペーンは去年に終わりましたし、その後まもなくIndiegogoで開始されたクラウドファンディングについては、当の電ファミニコゲーマーが当時記事を起こしています(ゲーミング防音マスク「PHASMA」がクラウドファンディングサイトで予約受付中。高い防音効果を持つ5層のフィルター構造にヘッドセットのマイクを挿す隙間も付いた、ゲーマーに寄り添う親切設計)。

修正前:

価格は「早割」と「通常価格」、さらに納期優先の「特急便」が用意されており、以下のとおり。

■早割特価(8月31日まで)
・2万5800円
・3万5800円(特急便)

■通常価格(9月1日から)
・3万0800円
・4万0800円(特急便)

※それぞれ消費税と送料が含まれた価格
※支払い方法は、予約注文時の銀行振込となる

修正後:

すでに早期購入の割引プランは販売を終了しており、通常プランでの販売価格は99ドル(約1万3400円)から。234ドル(約3万1600円)の3個パックも用意されている。

ユーロです。(今年のドル円とユーロ円は1割も変わらないが、ならば尚更ドルに直す理由が不明)

またKickstarter上の受け付けは前述の通り、2021年中に通常プランも含め終了しています。

公式ショップの価格は1個169ユーロ(8月時点では129ユーロ)。2022年に99ドルでPHASMAを売っている場所はどこにもありません。修正にあたったスタッフは商品の売られ方を理解しておらず、Webページに書いてあることを満足に読み取れていません。

修正前:

 「PHASMA Mask量産型」は、多機能フィルターを5層合わせた構造で防音機能を実現するゲーミング防音マスク。もともとクラウドファンディングを実施して商品化していたが、今回は大量生産の目途が立ち、一般販売を開始する。

 形状記憶樹脂を合皮レザーで覆った二重構造フレームが顔にフィットして、大声で叫んでも20dB程度にまで抑える防音効果を生み出す。またヘッドセットマイクはマスク内部に組み込むことができる。

(修正なし)

Indiegogo.jpの作文をもとにした記述がそのまま残っています。「20db『にまで』抑える」の誤訳も素通し。

修正前:

なおマイク穴は向かって左側が標準となり、右側にしたい場合は備考欄に記入して注文する必要がある。

(修正なし)

マイク穴についても、備考欄に記入する必要はありません。

公式ショップをもう一度見てみると分かるのですが、マイク穴の位置は注文時に必ず指定するものです。

穴の位置をわざわざ備考欄で教えなければならないのは、もう記事中で紹介していないはずのIndiegogo.jpのほうですね。


正直なところ、一番リツイートされたメディアが一番いい加減な手当てをしているな、という印象です。代行業者のプレスリリースをもとに記事を組み立てたあと、代行業者の存在だけを消して直販URLに書き換える(ことすら満足にできない)という小手先の修正をするからこういった誤りが発生するわけで*2、これはこれでMetadox社に迷惑をかけないかと思ってしまいます(「直接言えよ」と言われれば、それは……そうなんですが……)。

電ファミニコゲーマーに限らず「PHASMA Mask量産型」という代行業者仕様のネーミングや「20db『にまで』軽減」といった誤訳が複数のサイトで放置されているのは、先の表に示した通りです。


個人的には「誤って取り上げる分には校閲をすり抜けて掲載されるが、注意喚起や批判のために改めて名指しで記事を起こすことには慎重にならざるを得ない」という非対称な構造も面白くありません。松川氏やその商法を名指しで問題視するメディアはここ数年ほぼ居ません。チェック不足でならず者を取り扱ってしまうこと自体は仕方ないにしても、そのリカバリーには疑問があります。

問題業者を採り上げること自体にリスクがあることは承知しますが、しかし記事の何を再確認し、いかなる判断材料によって削除や修正に至ったのか具体的な公表をしないものだから、メディアの界隈にもエンドユーザーにも問題が伝わりにくく、被害が再発しがちなのではないでしょうか。記事を消して良し、リンクを消して良しとする前にやることがあるように思います。

少し大げさな言い方をすれば、事はもはやIndiegogoの日本版サイトと勘違いした記事を書かれるGadget Gate修正前記事を参照)という、かなり具体的な被害に及んでいます。こういった業者を使わない・取り上げないという社会的合意を商業メディアは表立って確認し、それをもって注意喚起としてゆくべきではないかと思うのですが、残念ながらそうはなっていません(注意喚起があるのはもっぱら、幾つかの個人blogやblog系ニュースサイトのすまほん!! くらいです)。

倫理のないプレスリリースの送り得、言ったもの勝ちというのは、いかにも嫌な話ではないですか。"きちんとした商業メディア" としては不良業者などは無視する以外ないのかもしれませんが、その無視ができていない以上、無視ではなく問題視をすべきのように思います。例としては偽ゲームショップ偽ブランド品への注意喚起のように。

……という提案は、たまに商業メディアに直接送ったりもしているのですが、無視だったり「裏を取らねば難しい」といった回答だったりするので、たとえば実際の被害者のタレこみでもない限りは動きづらいのかもしれません。

結論: 思わぬ方向からの悪意は、知っていないと回避が難しい

改めて、ゲーミングマスクPHASMAの販売は、英語では公式ショップでの直販、日本語ではRakunew正規ルートです。

開発販売のMetadox社が小規模スタートアップであること、常に納期が安定するとは限らないこと、万一破綻する可能性もゼロではないこと、その他もろもろのリスクは、Indiegogo.jpを名乗る不審サイトの言う通りに実在します(代理店のRakunewを挟めばトラブルをある程度は予防できますが、製造段階での遅延ばかりはどうにもなりません)。どのルートも比較的特殊な通販ではありますから、ユーザーにはその旨の理解が求められるでしょう。だからこそ転売屋、ましてリスクを倍増させるだけの無在庫転売屋は、論外です。

今回起こったのは、そんな論外な転売屋がIndiegogoとメーカーの名前を悪用して、さも輸入代理店のような触れ込みで、しかも誤ったプレスリリースを送付するという珍事でした。

本当の珍事はそんな怪文書がリライトされて日本の大手メディアに堂々と載ってしまったほうですが……しかしそこは脆弱性のようなもので、メディアと転売屋のどちらが悪いかといえば転売屋のほうが悪いに決まっています。

エンドユーザーが「まさかニュースサイトで紹介されている業者が危険な輩だとは思わなかった」と考えうるように、ニュースサイトの運営者にしても常識の外からやってきた存在を粛々と取り除き続けるのはおそらく困難です。私から見れば「こんなにあからさまな転売屋をどうして取り上げてしまうのか」「倫理にもとる内容は常識で排除してほしい」と思ってしまいますが、それは偏った趣味・興味の範囲による面もあり、私自身も別の話題ではうっかり誤りや危険な情報の拡散に手を貸してしまったりもしているに違いありません。

消防署のほうから来た消火器売りのように、「プレスリリースのほうから来た業者」に対して、メディアのガードは無意識に下がってしまいがちです。ならば遺憾ながらも、「プレスリリースのほうから来た業者」はこれからも「ニュースサイトのほうから来た業者」として読者の皆様の前に現れるかもしれません。

そんな時に、この記事を読んでいることが、世の中には無関係な会社の商品をプレスリリースまで打って売ろうとする、とんでもない個人転売屋が居るという本当にひどい概念の備わりが何かの役に立てばいいですね。だから知らないお店の特定商取引法表記や評判は確認しましょう……といったところで、今年のクソ業者の話は終わりです。お疲れさまでした。

*1:引っ張られたのが我われに知られていない別の商売である可能性もあるが。

*2:これは職業倫理的にも少し疑問があります。不良業者であることは置いておくと、URLだけ消されてプレスリリース文章が盗用されるような恰好にならないか?