メガドライブミニ2の発表、良かったですね。今日はそのメガドラミニ2に関して、妄想で予約を募っている自称輸入業者の近況を注意喚起的にお話しします。
あまりこういうのをやりすぎるとかえって問題業者の宣伝にもなりそうなので、悩みどころではあるのですが……。
あらすじ
当blogでは昔、全額前金で承った注文をバックレたり、数年後に別機種を送り付けたりする異常な輸入販売サイトを複数運営する「松川政裕」、通称でVAIO松川(バイオ松川)と呼ばれる危険な輸入商というか転売屋のような人を特集しました(カテゴリ: レッドスター(ヴェルテ)にも何本か記事があります)。
松川氏が作った会社や通販サイトを簡単にまとめた図がこれで(太字は通販サイトとして現存)、株式会社レッドスターと株式会社ゲッコー・アンド・カンパニーをベースに、ヴェルテ(追記:この後間もなくウェルテに改名しました)、ゲームガジェット、ガイガーJP、キックスターターラブ、インディーゴーゴージェーピー、デロリアン・モーター・カンパニーなど商標の盗用を含む多くのウェブサイトがあります。
特に「ヴェルテ」「ゲームガジェット」の2つは最近ではTwitterのタイムライン広告に熱を上げており、Steam Deckの並行輸入を行う旨の広告をきっかけに国内ブログメディア・すまほん!!では注意喚起が行われました(当blogの紹介ありがとうございます)。
これまでは多くのライターの皆さんに周知されていたため、ほとんどのサイトで肯定的に取り上げられることはありませんでしたが、Twitter広告という手法によって多くの露出機会を得ており、危険な状況だと言えます。
言うまでもないと思いますが、これでこの業者を知ったライター、ブロガー、YouTuberといった情報発信者のみなさんは、くれぐれも被害者を増やさないよう、こうした業者を批判こそすれ利用推奨はしないよう心がけて下さい。
ということで今日の主旨の半分は終わってしまったのですが、久々なので書き損ねていたトピックや直近のやばさ情報を書き出させてください。
最近のトピックなど
「振り込め詐欺救済法」に基づき口座が凍結されている
いきなり結構過去の話です。今まで書いていなかったので……。
Yahoo! 知恵袋や5chなどで示されている松川氏の会社、株式会社シティ(旧ドゥモア)名義の口座について被害者による当局への報告があったらしく、なんと凍結しています。
うーん。凍結時の残高が5万円足らずなのが「逃げられた」感ありますが、ハッキリと「インターネット・オークション詐欺」と書かれているのは迫力ありますね。なんでまだ商売できてるんだ?(口座を乗り換えたのは確かとして、乗り換えたからって商売を続けられるのか?)謎が深まります。
Twitterアカウントが発生
先にすまほん!! の記事を紹介したことで説明がだいたい終わっていますが、去年11月頃から今年4月頃にかけて、幾つかのサイトのTwitterアカウントが作られたのを確認しています。
以下、これらを引っ張りつつ問題行動を見ていきましょう。
現時点で存在しないメガドライブミニ2の海外版を勝手に受注
前置きが長くてすみません。
ゲームガジェット・ヴェルテ両者が北米版・EU版・アジア版の予約を受け付けて金を取っていますが、これらは非公式の並行輸入どころか想像上の商品です。
――でも、メガドライブミニは日本よりもさらに海外でヒットしていましたよね?
奥成 そうですね。メガドライブミニは、北米や欧州では正直、日本の何倍も売れています。
けれど、今回はあえてお客さんの顔が見えている日本の配分を多めにしたのです。もちろん海外展開も準備していますが販売台数は日本を軸にしています。それでも前回ほど数はお出しできないんですが……。
メガドライブミニ2は収録タイトル50本超のうち20本がメガCD。半導体不足で開発中止も危ぶまれたなか生まれる“新ハード”誕生秘話を奥成洋輔氏に直撃 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com
今のセガは「海外展開も準備しています」以上の情報を発表していません。リージョンで収録内容が変わるのか、変わるとしてリージョンが幾つになるのかは不明です。仮に今後の発表を言い当てていたとしても、それは予測でしかありません。
2013年 Google公式スマートフォン「Nexus4」「Nexus5」を国内販売し、個人から大量受注
メーカーに先駆けて独自に発売時期、価格を予想して並行輸入販売する無茶な手法を確立
覚えておきたいのは、この松川政裕という人が、勘で商売することを成功体験として語るような人物であるということです。
彼が3画面スマートフォン「HubblePhone」やゲーミングUMPC「PGS」、麻薬王の親族による「ESCOBAR FOLD 2」といったVaporware(出す出す詐欺)の商品ページをいち早く用意して金を取っていたのも、事実のひとつです(商品がリリースされなくても特段返金はしない、問い合わせがあれば6割のみ返金)。
無関係の人間が勝手にバリエーションを決めて、勝手に金を取っているわけです。「北米版とEU版とアジア版は出るのだな」と早合点する人を出しかねない広告手法はもはや業務妨害めいています。
シーランド公国の爵位取得を非公式に代行
ガジェットばかりか爵位まで売り出しました。イギリスの沖にある自称国家・シーランド公国は確かに爵位をまるで記念グッズかのように販売していますが、公式サイトは日本語にも対応しているのでGoogle PayやPaypal・クレジットカードなどが使えれば普通に安く買えます。
特段の事情が無ければ、高い金を払って、納期の遅い所で、手続きミスのリスク要因となる仲介者をわざわざ使わないほうがいいのは言うまでもありません。
まあ、自称国家の自称爵位の発行を自称輸入代理店が代行するのは虚業のありかたとしてちょっとだけ面白いかも知れません。むしろ架空のガジェットでキャンセル料を狙うコスい商売なんか辞めて、これ一本にしてたらみんな迷惑しないんじゃないか。
自動車ディーラー「デロリアン・モーター・カンパニー」としての不審な活動
前にも2回くらい書いてた気がしますが、米DMCの復活に合わせていよいよ不穏になってきたので。
デロリアン・モーター・カンパニーとイタルデザインのパートナーシップは1974年11月以来、40年以上続いています。
VISION BEYOND TIMEプロジェクトでは、デロリアンの次世代EV「Alpha 5」を共同開発し、2022年8月18日にペブルビーチ・コンクール・デレガンスで発表、8月21日に展示予定です。
(中略)
仕様、価格、納車開始時期については、2022年8月18日にペブルビーチ・コンクール・デレガンスで正式発表予定です。現在、仮予約受付中です。
これらは米国DeLorean Motor Companyとの関係の不確かな松川氏が株式会社デロリアン・モーター・カンパニーという日本の会社の登記を行い、あたかも米DMCの日本語サイトであるかのように振る舞っている様子です。
「デロリアン(デロリアン・モーター・カンパニー)の日本法人」とは言っていますが、それが公認されているかどうか、あるいは「DeLorean Motor Companyの日本法人であるかどうか」を疑問に思うのは穿ちすぎですかね。
なにせ松川氏はその後、Unihertz Jelly Proの正規代理店契約が完了しないうちから発表をかました挙句、当のメーカーからハシゴを外されています。
皆さん、弊社とヴェルテというサイトと全然取引がありませんよ!!あんなわけの分からない転売屋や代理店を装った業者から購入せずに、公式サイトかAmazonの「unihertz」から購入しましょう。🙂🙂🙂https://t.co/WgI3s2CPfT https://t.co/BjJMk5IP0r
— UnihertzJapan (@UnihertzJapan) 2018年3月14日
また株式会社デロリアン・モーター・カンパニー(日本の松川氏のほう)の挙動には奇妙な点が多く、FIAT500、ナイト2000、DMC-12のEV版など多くの車種の受注をしている(特にDMC-12については15台が瞬時に完売したとされる)割には納車されたという噂を聞いたことがありません。あったら教えてください、自動車には詳しくないので……。
その後もFiskerのコンセプトモデルの予約を勝手に始める、GMOペパボのカラーミーショップに他人のDMC-12をどう見ても勝手に突っ込むなどわけのわからない行動が目立ちます。
DMCと提携している愛知県豊橋市のDMC-Japanが(サイトの更新は止まっているものの)自前の写真を使い、「DMC-12のEV版は個人輸入扱いとなる予定だが、まだ受注はしていない」「他の業者とは一切関係ない」と落ち着かせる方向に、重々に念を押していたのを見れば、信用の度合いは比べるまでもありません。
改めて、発信者が留保なく取り扱ってはいけない危険サイトです
ここしばらくの松川氏の動向をランダムに取り上げてきました。後半はプレスリリース単体を取り上げ、ライターやブロガーがこれらサイトを避けるべき理由を改めて詳しく見ていきましょう。
Steam Deckの発表のおそらく原文が無料プレスリリースサイトに拾われていたので、これを見本として。
けっこうお堅い商用メディアでも何故か取り上げてしまう例があるのですが、しかしプレスリリースだけでも一読して分かるほどの違和感があり、ウェブサイトの商品ページと特定商取引法表示を読めば明らかな異常性を振りまいている業者です。「検索すれば分かる」ではなく「読めば分かる」、固有の知識ではなく商法と明記事項の問題なのだからしっかりしてほしい……という話をします。
並行輸入品(転売品)を扱うことの論点
ゲームガジェット /携帯ゲーミングPC「Steam Deck」、欧米から輸入販売の予約受付 - 無料プレスリリース「PR-FREE」
現在の松川氏は明確なウソをついているわけではないので、並行輸入だと明記はしているのです。
並行輸入とは正規ルートを通さぬ輸入であり、乱暴に言ってしまえば転売屋と同様です。一般的には以下のような問題があるかと思います。
- 通常、売値が定価より高くなる
- 正規の販売店や代理店からの購入でないため、公式のサポートを受けられないか、サポートに追加のコストが掛かる場合がある
- 電波やACアダプタ・バッテリーを使う機器などの場合、国内向けの法的認証を取得せず違法となるおそれがある(日本に売らなくても日本向けの法的認証を通す機器もあります)
転売屋がファミ通だのインプレスだのといった商業メディアに「日本向けの輸入を開始します!」とプレスリリースを発射する厚顔無恥さは問題ですが、はったりに押されて普段のお上品なメディアなら見向きもしないような並行輸入品を紹介してしまうガバナンスにも疑問が出てきますね。
松川氏特有の商法への論点
プレスリリースをもう少し見ていきましょう。
価格:
64GB赤字価格:39,800円(税送料込)10台限定
64GBお得価格:49,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格59,800円(税送料込)
64GB特急便:59,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格71,800円(税送料込)
256GB赤字価格:52,800円(税送料込)10台限定
256GBお得価格:64,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格74,800円(税送料込)
256GB特急便:74,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格89,800円(税送料込)
512GB赤字価格:64,800円(税送料込)10台限定
512GBお得価格:78,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格89,800円(税送料込)
512GB特急便:89,800円(税送料込)8月10日までのお得価格。通常価格104,800円(税送料込)
赤字価格は限定台数のみ赤字出血大サービス。
お得価格は安値優先。数をまとめて手配します。
特急便は納期優先。赤字価格の赤字を補填する為、割高ですが可能な限り早く最優先してお届けします。
出荷の順番は特急便→お得価格→赤字価格です。ゲームガジェット /携帯ゲーミングPC「Steam Deck」、欧米から輸入販売の予約受付 - 無料プレスリリース「PR-FREE」
すみませんが、これをうっかり載せてしまうメディア各位はどうして記事に起こそうと思うのでしょうか? 調達順でTierと価格帯を分けるショップなんてどの分野にも滅多に居ませんし、仮に居たら「おかしなことやってる」という判断が働くはずです。
特にアスキーやBCNなど(黙って消したアスキーと違ってBCNは訂正記事が出せてえらいですね)フォーマルなメディアの場合、アンオフィシャルな転売屋ふぜいが「ちゃんとした」メディアに堂々とプレスリリースを送り付けるという行動に意識の虚を突かれてしまうのでしょうか。ここまであからさまな異常性がライター本人ばかりかデスクや校閲など多くの人にスルーされてしまうのは流石に理解に苦しみます(無料プレスリリースサイトとそれ以外で異なる文面でも発射しているのか?)。
販売方法:完全事前予約制
予約注文サイトURL:https://www.gamegadget.jp/
支払い方法:予約注文時の銀行振込ゲームガジェット /携帯ゲーミングPC「Steam Deck」、欧米から輸入販売の予約受付 - 無料プレスリリース「PR-FREE」
しかも先払いのみ、銀行振込のみです。
消費者庁だって「前払いの銀行振込しか用意しないサイトはクソ」くらいのことは言いますよ。
プレスリリース単体でも大概であると分かってきましたね。このうえ一度でもウェブサイトと商品ページを確認すれば、商業メディアであれば100回中100回、確実にハネてほしい事案になります。
ゲームガジェットのSteam Deckのページを見てみましょう。
世界的大人気商品に関する重要事項説明:本商品は世界的大人気商品につき、入手困難になり、想定より大幅に納期が遅れる可能性があります。原則的にキャンセルできません。もしキャンセルされる場合は違約金として商品代金の40%を申し受けます。大幅に納期が遅れたことを理由にしたキャンセルであっても、違約金として商品代金の40%を申し受けます。
海外輸入品に関する重要事項説明:日本企業と比べ、海外企業は納期や品質を守る意識に乏しく、遅延したり、仕様が異なったり、品質が不十分だったりする可能性・危険・リスクがあり、何らかのトラブルが発生しても、保証・補償されません。原則的にキャンセルできません。もしキャンセルされる場合は違約金として商品代金の40%を申し受けます。万一、メーカーが倒産した場合は補償・返金できません。
ベンチャー商品に関する重要事項説明:ベンチャー商品とは、企業体力の乏しいベンチャー企業による商品です。遅延したり、品質が不十分だったり、倒産したりする可能性・危険・リスクがあり、保証・補償されません。原則的にキャンセルできません。もしキャンセルされる場合は違約金として商品代金の40%を申し受けます。万一、メーカーが倒産した場合は補償・返金できません。
あらゆることを「人気のせい」「海外メーカー特有の事情のせい」「ベンチャー企業特有の事情のせい」にして、納期の遅延やキャンセル料そして逃亡を正当化する文言が並びます。消費者契約法違反ではないでしょうか。
ついでに現時点の特定商取引法表示も確認します。
まず所在地、電話番号、メールアドレス、販売責任者が検索避けのためか画像になっている時点でパンチが利いていますね(しかも以前は「大河内伝次郎」という昭和の俳優の名前になっており「偽名でやってるサイトなんか扱うな」とシンプルに言えました)。
所在地は本人が主張している通りバーチャルオフィス、つまり住所貸し屋のレゾナンス浜松町です。専ら自宅作業するという意味では殆ど個人事業主であり、実態としての事務所が無いのも場合によっては信用を割り引いてよいポイントでしょう。
そしてこの頭の痛くなるセクション。特に危ないところを抜き書きします。
- 発生しうる危険/リスクは全てお客様が負い、当店は一切危険/リスクを負担しません。
- 追加料金を請求する場合や、代替品をお届けする場合があります。
- 危険/リスクの発生はイレギュラーではなく、レギュラーなことです。危険/リスクは注文者であるお客様が負い、当店はリスクを一切負いません。
- 当店は初期不良が多い可能性のある初回ロットへの注文を避けたり、独自の判断で注文、代行、購入、バックなどの各種行為を留保する場合があります。お客様は当店にそれらの判断を一任いたします。
利用規約というのは得てして業者に都合のいいことがこっそり書いてあって、運用せずとも万一のために備えてあるものですが、さすがにこれは消費者庁か警察待ったなしの案件に見えます。
規約が行使されうるかとか、それ以前の問題です。正気のコンプライアンスを備えたメディアならこんな規約を備えている通販サイトを紹介すること自体がNGでしょう(そして代替品をお届けした可能性までなら実在します)。
最低限の仕分けはしてほしい
私は今の松川氏運営の業者を「脱法業者が捕まらないために、ウソだけはつかずにいる状態」と理解しています。性能の低さも客の守らなさもちゃんと書いてある……年単位で遅れても、金が戻ってこなくても、引っ掛かった客の自己責任……そういう言い訳をしている。
書籍やウェブメディア・ブログ・動画などといった媒体が、注意喚起や批判としてならまだしも、特に留保なく「海外のガジェットが予約開始されましたよ~」とプレスリリースの転記をしてしまえば、無用なトラブルを拡散し、詐欺の片棒を担ぐ行為になりかねません。
性能が低くて客を守らない業者だと自称してくれているのですから、そこは酌み取ってやろうじゃないですか。倫理にもとる内容は常識で排除できてほしいと思います。